新作落語の大会を熱望する

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今週は神田連雀亭で、春風亭昇輔さんのぶっ飛んだ新作落語を聴いてきた。
昇輔さんの若き才能と、それと同時に新作の先達たちの積み重ねの厚さを改めて思い知った。

さてあとで思ったのだが、昇輔さんのような芸術協会の若手が、新作で売り出していくのもなかなか大変だなと思う。
新作落語家にとっては、現状、落語協会に所属しているほうが数段恵まれている。
池袋では、3月下席が新作台本まつり。池袋の下席は落語協会固定の芝居。
新作台本まつりのトリは、落語協会の新作台本募集で優勝、入賞した噺だが、それ以外に噺家の自作新作も多数掛かる。
そしてここ数年、12月下席も新作まつり。三遊亭白鳥師の「富Q」で幕を閉じる。
落語協会の二ツ目さんも、新作派ならこれらの寄席に出してもらえる。
現在お休み中だが、黒門亭でも好きな噺を掛けることができる。

池袋演芸場は新作の殿堂。これは私の持っているイメージ。だが実は、落語協会の芝居に限った話。
新作の殿堂のイメージは、落語協会の自主興行的な(正確には違うと思うのだが、イメージ)下席から来ているだけのようだ。
昨年真打になった芸協の瀧川鯉八師も、昇進後の初トリは新宿末広亭のほう。
月1回の池袋芸協のほうでも、新作落語まつりみたいなものができるといいのだが。

歴史を遡ると、「新作の芸協」だった。
先代古今亭今輔、桂米丸、春風亭柳昇といった人たちが活躍していたころ。
その後は、三遊亭円丈師が出てきた落語協会のほうが、新作を代表している。
SWAだって昇太師以外は落語協会。SWA以外のメンバーも、柳家小ゑん、春風亭百栄、林家きく麿、古今亭駒治等、落語協会が目立つ。

芸協のほうは、昔昔亭桃太郎、春風亭昇太といった人(ともに柳昇の弟子だ)のあとが続かない。
芸協の真打香盤を見ると、「新作もやるよ」という人はやたら多い。この点についていえば、今でも新作の芸協を引き継いでいる。
だが、当代古今亭今輔師みたいな、新作専門の人が少ない。今輔師は寄席のトリも取っているが、孤軍奮闘のイメージ。
池袋のトリはないし。
落語協会にいればもっと売れてるんじゃないかと思う師匠。
しかしここに来て、徐々に流れが変わってきたようだ。
芸協の二ツ目、新作派がなかなか多い。鯉八師みたいな、新作しかやらない人はまれとしても。

そんなわけで、芸協の若き才能にも活躍の機会を与えたいものだ。
ひとつ、新作落語の大会ができないものだろうか。
プロデューサーは、芸協会長の春風亭昇太師で。
芸協だけでもいいのだが、できれば協会を問わず。円楽党や立川流、上方も呼んで。

舞台は国立演芸場がいい。次善として、お江戸日本橋亭。
協力が得られればだが、夜席休止の鈴本演芸場もいい。
テレビが入るとなおよい。評判の悪いR-1グランプリよりずっと楽しいコンテンツになると思うが、まあ当座はなくてもいい。
優勝賞金は10万円でいい。あるいはトリの権利とか。
なんなら、二ツ目の大会でもいいし、客からお題をもらって即興で作る「三題噺」の大会でもいい。

三遊亭円丈師は、こういうのを細々とは仕掛けてきた。私も10年前に「Zabuton Cup」という大会に参加した。
ちなみに優勝はなんと春風亭鯉枝師。最近寄席に復活した人。
残念ながら大会は単発で終わっている。
円丈チルドレンのひとり昇太師も、後輩のために何か仕掛けて欲しいところだ。弟子も多いのだし。

課題があるとすれば、ファンの獲得。
現在の新作落語を支えているのは、ベテラン落語ファンだと思う。
落語というもの、ずっと聴いていると客も好みの領域が自然と広がってくるようだ。現在の新作落語は、落語の上級バージョンとして存在している。
この構造自体は別に悪くはない。
だが、もう少し勘違いして入ってくる若いファンもいていいんじゃないか。
勘違いとは、「古典なんかダサい」「新作のほうがとっつきやすい」である。
こうした勘違いも、多少あったほうがムーヴメントになると思っている。

個人的には、寄席に行っていつでも新作が適度に掛かっているなんて状態で、全然構わない。
でも、それが普通になるためには、大きな仕掛けも必要だと思う。

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作成者: でっち定吉

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