木曜に亀戸に出向いた時点で金曜の神田連雀亭はいったん切ったのだが、結局来てしまう。
この日から文京区と足立区でQRコード決済の還元が始まることだし。
お目当てはトリの吉原馬雀さんだが、他の2人も昇咲、ぐんまと精鋭。昇咲さんは初めてだが。
つ離れしないけど。
しかし、いろいろ出かけるけども、結局ここの高座から、いちばんネタが出てくるのは不思議。
みなリラックスしてるのだろう。
噺家撲滅法案 | 昇咲 |
土底の英雄 | ぐんま |
一万人目 | 馬雀 |
オール新作。
私はわりと新作派が集まった日に来るのだが、全員新作ということはほぼない。
新作派が揃っていても、ぐんまさんなど古典も得意だし、客に配慮して変えてもいいところ。
でも、恐らく最も得意なネタを出してきた。
以下まるっきりの想像。
ぐんまさんにとって協会の違う昇咲さんは、しかしながらSWAメンバーの弟子どうしという関係性もあり、先輩として負けられない気持ちに火がついたのでは。
つまりリアルあかね噺。
あかね噺みたいな対決はマンガならではだが、現実であり得ないわけでもなかろう。
ちなみに楽屋での、このふたりの話声がずっと漏れ聞こえていた。
ぐんまさんは前説から笑いを獲る。
食事禁止と携帯電話。あ、いまみなさん携帯電話を確認されましたね、さすがです。
今日は傘のお忘れ物が予想されますのでお帰りの際はお気をつけください。
最近お忘れ物が増えてます。
連雀亭あるあるなんですけど、高価な忘れ物ほど出てきません。我々の生活の足しになってます。
トップバッター、春風亭昇咲さんは常にニコニコ。
正直大した話していないのだが、なんだか楽しませてくれる。
そして、正面が切れる。客の目を堂々と見据えて話す人。
いろいろツラい仕事もあります。先日ついに幼稚園に呼ばれて4歳児40人の前で落語をしました。
断ろうとしたんですけど、園長先生に頼み込まれまして。私見た目の通り女性に弱いもんですから。
40人のうち、席に座ってられたのは5人だけでした。
ネタ自体は噺家さんからまんべんなく聴くもの。
だが、話術だけで乗り切るので感心。
面白いこと思いついても語るスキルがない人よりはずっと将来性を感じる。
それからセレモニーホールの落語会の話。これも非常によく聴くネタ。
新作落語の舞台は、噺家が社会の敵とされ、噺家撲滅法のもとで厳しく監視を受けている世界。
彼女と同棲したい春風亭昇咲だが、彼女に落語家だと見抜かれピンチに陥っている。
彼女に、春風亭昇太の写真を踏むよう迫られる昇咲。
話術があるから楽しいが、なんだかヨネスケ師の「落語禁止法」と、喬太郎師の「すみれ荘201号」に、さらに喜太郎さんの「個室落語」を振りかけたような噺だ。
ギョーカイものは難しいね。
春風亭百栄師に掛けてもらえば魂がこもる気がする。そんな機会なかろうが。
落語家ならまだしも、芸術協会だなんてと彼女。このくだりは大いにウケていた。
(※ 「純情日記池袋編」と書いてしまいましたが、「すみれ荘201号」です)
最近配信で続けて聴いた上の弟子の昇りんさんともども、楽しみな人ではある。
続いてぐんまさん。
昇咲さんのマクラを引いて、学校寄席。この季節は多いです。私も行ってきたばかりです。
よく学校寄席はツラいなんてみんな言うんですけど、私は嫌いじゃないです。やっぱり子供さんに普及していきませんと。
子供たちはよく笑ってくれたんですが、面倒な先生がいまして。
私落語大好きで、ホームルームで落語の前座噺を語ってますなんて言うんですね。めんどくさいですね。
じゃあ、子供たちは日頃落語に親しんでるんですねということで、新作を掛けました。
そしたら先生、高座の最中、ずっと険しい顔なんですよ。先生は古典派みたいで。
それから高座のあと、落語の所作の実践の話。
これは文字に起こしても面白さが伝わらない。見事な語りのぐんまさんに敬意を払って省略。
今日はそのとき掛けた噺をやります。
冒頭から土を掘る男の描写。男は田舎言葉。
ああ、昨年のプークで聴いた「土底の英雄」。どていのヒーロー、とルビが打たれる。
内容についてはリンク張っておきます。
アズマモグラと、箱根の山を抜けて進出してくるコウベモグラとの戦いを描く快作。
弟子と親方の娘との恋も描かれる。
前回のように高座の後ろに隠れたりはしなかったが、中身はさらにパワーアップしていた。学校寄席の子供たち、さぞ喜んだであろう。
と言って子供騙しの噺ではなく、中身は分厚い。
親方モグラが自分の身を犠牲にして芦ノ湖の水を抜くシーン、思わず涙ぐんだもんな。
師匠・白鳥の要素が弟子の創作にもこれでもかと詰め込まれている。