亀戸梅屋敷寄席35(下・三遊亭愛楽「猿後家」そしてやっぱり好楽)

仲入りは久々の楽大師を聴きたかったのだが、代演で好太郎師。
師匠好楽はああ見えて忙しいんです。今朝も早朝から起きて新聞配達に行きました。
おなじみ、酒の小噺。
隣同士で他人と飲んでて怒らせるという、この師匠だけやる小噺が聴きたかったが出ない。
お前の親父だ、を一般的なものとは異なる持ってきよう。
そこから人力車のくだりがたっぷりある替り目。師匠譲りらしい。
隣の亭主はいただかない。おでんの「じ」と「ぺん」が入っている。
たっぷり時間があるので、元帳見られてからさらに後半へ。元帳のくだりは短め。

仲入り後は三遊亭愛楽師。
今月誕生日でした、と拍手をもらう。
55歳です、とこれには拍手がなくて、おかんむり。

ご家庭の話。
師匠はどんどん痩せていくのに、息子・愛二郎は入門してからどんどん太っていくとのこと。
体重が53kgしかないそうだ。

愛楽師の明るいキャラ、しばらく振りに見たらずいぶんパワーアップしている。
なんだか常に楽しそうで、なのでお客もどんどん楽しくなってくる。そして、反作用がない。
こういう芸風も、年齢を重ねて成長することもあるのだなと。
落語協会のしん平師、芸術協会の竹丸師のように、寄席を支える貴重な戦力である。
ただ、漫談ではない。

本編は珍しい、猿後家。猿に似た、商家の女主人の話。
この家では「さる」は禁句。「来なさる」すらNG。

愛楽師の明るいキャラが、そのままおかみさんのご機嫌を伺いにきた調子のいい男にスライドする。
おかみさんがそこにいるのに、「お留守ですか」。何言ってるんだい、いるじゃないか。
すみません、吉永小百合がいらっしゃったので。
しかし、自分の義父母を東京案内した様子を語るのだが、つい浅草で猿回しを観たことを話してしまう。
たちまち出入り禁止。

番頭さんの回想シーンが入り、やはりしくじった植木屋のエピソードが入る。
あそこの庭にサルスベリを植えましょうと言ってしまう。
ここで植木屋のさるかに合戦の啖呵が入るかと思ったら、入らない。たぶん愛楽師、啖呵切れないんだろう。
でも、番頭さんの説明としてその様子を語る。こんなやり方もあるのだな。

改めてお詫びにいき、猿回しなんて言ってない、皿回しを観たと取り繕うのが本来の猿後家だと思う。
しかし、浅草で観たことにするのは「さだまさし」であった。そんな。

ふざけつつも非常にいい味だったので、今日のタイトルにしました。

トリは好楽師。ピンクでなくて黒紋付である。
白い眉毛がやたらと、村山富市のように伸びている。きっと今週土曜に笑点収録があり、その際にカットするのでしょう。
年をとったら肉を食いなさいなんて言われますけど、違いますよと。元気だから肉が食べられるんですよ。
息子の圓楽襲名の話など、出ない。もう飽きたのかな。

マクラは短い。
東京には広小路がみっつあった。上野広小路は有名だが、あとは雷門前も浅草の広小路。そして回向院の前の両国広小路。
両国は見世物小屋のメッカ。
「大板血」「九尺二間の大灯籠」「べな」など。
大灯籠の際には、永六輔がよくラジオで尺貫法に戻そうという話をしていたエピソードが入る。

そして短いマクラを回収するように、師が子供の頃実際に大塚の天祖神社で観た見世物の話。
小遣いもらって蛇女を観に行った。
子供がひとりで来てると大人たちが面白がって、最前列に入れてくれる。蛇女のあまりの恐ろしさに目を開けられない好楽師。
気づくともう見世物は終わっていた。大人たちが、「蛇女は蛇を食いちぎったよ」と嘘ばっかり教えてくれる。

そして人から聴いた話として、鬼娘。
蝠丸師や正蔵師からも聴くエピソード。
乞食の赤ん坊を借りてきて、鬼娘が食おうとする様子をみんな観にくる。
しかしここぞというところで鬼娘が大きな独り言。今日はもう、赤ん坊を食うのはやめておこうかしら。
サクラがすかさず反応して、そうだやめとけ鬼娘。客も賛同し、それで見世物はおしまい。

好楽師から聴く、3度目の一眼国。
これが不思議なことに、最初に聴いたときにはなかった、六部に冷や飯を食わせるくだりが2度目には入っており、そして今回はなかった。
その日によって展開が変わるという、これが好楽師の魅力、というかいい加減さである。
見世物のくだりも、毎回その場で作って話すので細部は違う。今回初めて聴いた要素も多々ある。

ただ、今回は時間がやや余り気味だったので、冷や飯食わせるくだりは入れてほしかったななんてちょっと思う。
何度聴いても楽しい一席。
一晩経った昨日の記事では、ちょっと刺激が足りないと書いた。これは本音。
仕方ないことだが、さすがに好楽師から、なかなか知らない噺はもう聴けなくなってきたから。
だがもう一晩経つと、なんだかすごく楽しい日に行った気がしてきたのである。これも本当。

やっぱりたまには聴きましょう。
一眼国が出ようが、三年目が出ようが、親子酒が出ようがもう仕方ないです。

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作成者: でっち定吉

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