亀戸梅屋敷寄席35(上・三遊亭げんき「初天神」)

好楽師が出るので平日の亀戸へ。
亀戸梅屋敷、しばらくだと思ったら、半年ぶりでありそこまでご無沙汰でもない。
ただその前は昨年11月であるから、やはり頻度は落ちている。
好楽師の演目は、過去二度聴いてる「一眼国」。
亀戸梅屋敷寄席、悪くはないんだけども刺激が徐々に薄れてきたのは残念ながら事実だ。
今後はちょっと開きそう。目ぼしい披露目もしばらくはないし。
三遊亭けろよん二ツ目昇進披露なんてのがあれば来ます。

亀戸、ご無沙汰してるうちにアトレの増床が完成していた。
ロータリーを囲う立派な駅ビルに変貌。

初天神げんき
熊の皮兼矢
替り目好太郎
(仲入り)
猿後家愛楽
一眼国好楽

受付には新しい前座さんが。よかった。
と思ったら、なんてことはない、マッシュルームカットをやめてメガネ掛けたげんきさんでした。
兄弟子に、げんきじゃないなんて言われてたげんきさん、実際の高座はハツラツとしていて気持ちいい。
この人も半年ぶりだが、なんと鼻濁音が上手くなっていて驚いた。
大阪出身なのに立派だ。私は東京だが鼻濁音ネイティブではない。
お子さんは親や環境のおかげていくらでも染まるんだそうですが、の「が」が明確な鼻濁音。
だからといって、これみよがしに鼻濁音を披露しているわけじゃない。
別に、鼻濁音をことさらに披露している若手がいると言ってるわけじゃないのですが。

げんきさんは鼻濁音だけじゃなく、噺も自然でいい。
やたらとありそうで、どこにもない初天神。明らかに自分で工夫している。
そして、既存のクスグリを、ごく普通の語り口で流し、ウケを狙わない。
自分で考えたギャグ、展開で勝負する。
だから面白いのに、最後まで軽やかなまま。

冒頭いきなり、おっ母さんとおとっつぁんとが、金坊を連れてくか置いてくかで争っている。
金坊はうちでも外でもちょろちして邪魔になる。
夫婦喧嘩を見た金坊が、喧嘩するほど仲がいいらしいと聞き込んでいるので「ようようご両人」。
ありもののクスグリであっても、出番少なめのものは実に新鮮に使う。

川におっぽり込んだらカッパに食われちまうぞのくだりも、2段階に笑いを入れてくる。
まずは「カッパは空想上の動物。いないもんで子供を脅すとはタチが悪い」。
親父が、いやカッパはいると返すと、
「本気で信じてるんなら幼稚だね」。

よーいよーいはなくて、人力車のくだりが手厚い。
金坊はりんごあめやチョコバナナに興味津々。時代はいつなんだ。
アメをお腹ん中落としちゃってサゲ。12分ぐらいの手短な一席。
前座なのに欲しがらず、引き算で考えられているのは大したもんだ。
前座さんがどんどん上手くなるのを見るのは楽しい。

二ツ目は、げんきさんの兄弟子、兼矢さん。
前座(しゅりけん)の頃は、円楽党に前座が少なかったのでよく聴いた。

学校寄席のマクラは面白かった。
大妻女子大学(付属高校ということなのだろう)へ円楽党で行った。
円楽党は女性のいない、男子校みたいな組織。だから女子校に行くと浮かれてしまう。
メンバーは道楽・朝橘・らっ好・萬丸そして兼矢。
最初が大喜利。視界は道楽師。
最初に挨拶するのが一番下の兼矢さん。いつも「大谷翔平と同い年。年収はずっと下。三遊亭兼矢です」と挨拶するのに、緊張して「同い年」でやめてしまう。
全然ウケない。
先輩たちにも伝播して、挨拶全員スベる。萬丸アニさんは、「まんまるです」としか言わない。

本編はなんの関係もない(いいけど)熊の皮。
明らかに遊雀型で、直接稽古を付けてもらってると思われるのに、なぜか落語協会で聴く感じの熊の皮。落語協会の誰か、ということではなく、自分でもよくわからない感想。
遊雀師だとウケる部分について、そのままじゃなんだなと思うのか、ツッコんで変えていく。
「あっしは先生のことそんなに好きじゃねえっすよ」のあと、「知らなかったよ」と来る。

ちょっとどうかな、と思ったのが、甚兵衛さんが結構かみさんに反論すること。
甚兵衛さんが反論してもまるで気にならない演者もいるけど、兼矢さんだと噺の腰を折る感じがあって気になっちゃった。
おかみさんがかなり強いから、反論させなければいいのに。

続きます。

作成者: でっち定吉

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