遊雀ひとり(上・柳亭いっち「湯屋番」)

横浜の会が続くのだけども、夜の会も並行して出しちゃおう。

夜が急に空いた。せっかくなので、昼と掛け持ちで行けるところがないか探したのだ。
三遊亭遊雀師の道楽亭の会が予約できた。
道楽亭は初めて。一度、上方の笑福亭喬介さんの会を予約したことがあるのだが、コロナ禍で流れちゃった。
打ち上げ込みの夜の会が多数だし、なかなか縁がなかった。
馬車道から1本で新宿三丁目。

ひっそりとしたたたずまいなのでいったん通り過ぎちゃった。
開演時は満員だ。30人ぐらい?
中に入ると、遊雀師が後ろで本読んでいる。

挨拶 遊雀
湯屋番 いっち
小言幸兵衛 遊雀
(仲入り)
風呂敷 遊雀

 

時間になったら、前座の上がりが流れる。

「え、ちょっと待って!」

裏で叫ぶ遊雀師。最初に出るよとか何とか。
私服の遊雀師が出てきて高座前で挨拶。

「びっくりしたよ。シッコしてたら出囃子鳴ってさ。シッコ止まっちゃったよ。いやほんと。何度もやってるのに! ここの寄席も、先代の頃から数えたらもう何年にもなるのに!」

と怒り笑い。
改めてちゃんとした挨拶から。
この遊雀ひとりっていう会はひとりでやってるの。
もともと私が3席喋ってたんだよ。
でもお客さんに、前座さん呼んだほうがいいんじゃないですかって言われてね。まあたぶん、痛々しかったんだろうね。
3席喋ると疲れちゃってね。見てられないみたいで。
なので前座呼んでます。ただの前座じゃないよ。精鋭だよ。
今日は柳亭小痴楽の一番弟子、いっちくんです。
普通は前座が前座噺をやって、客席あっためてから私が引き継ぐんだけどね。
ここはそんな寄席じゃないからね。無法地帯だからね。
好きなのやっていいって言ってます。
今日ね、小痴楽から電話があったんだよ。よろしくお願いしますって。
なかなかそんなことする人いないよ。
で、(いっちに)徹底的にダメ出ししてくれって言われたの。まあ、打ち上げ終わってから本人に言うよ。
でも打ち上げ終わると、もうなんにも覚えてないと思うんだよね。

爆笑の挨拶を終え、改めて前座の上がりでいっちさんが上がる。
この人は初めてだ。

ご来場でありがたく御礼申し上げます。
柳亭いっちと申します。
入門して2年ほどです。幸いまだ破門になっていません。
今日させていただく話なんですけど、師匠に教わったんですね。
で、師匠がどなたに教わったかというと、遊雀師匠なんですよ。
非常にやりにくいのです。

落語のほうには若旦那が出てまいりまして。
勘当になって、出入りの職人の2階で厄介になってたりしまして。
私も若旦那なんです。
実家は埼玉で植木屋をやっていて、順調にいけば四代目だったんです。

湯屋番へ。
こんな会でなければ前座が掛けることはまずない噺。
だが、寄席ではできなくても二ツ目になったときのために今から覚えておくものである。

リズムがよくて、実に有望な前座さん。
前座の場合、朴訥に喋る人でも評価したりするのだが、この人はもう少し先に進んでいる。
師匠のリズムなのかというと、そこまでではないけどでもかなりいい。
演技は強めだが、まったくいやらしくない。

先日、春雨や晴太さんから湯屋番を聴いた。別に似てないし構成も違うのだけど、番台以降のくだりが共通していた。「バンダーイ」もあり。
後半は似ていて、あるいは出どころ同じなのだろうか。

序盤はたっぷり。のし飯のたたき飯のそぎ飯のこき飯が入っている。
大工の熊さんが、わりと若旦那に対等の口をきいてるのが、なんとなく師匠のやり方っぽい気がする。
そりゃ、居候だもんな。いつまでもうやうやしく遇することはない。

奴湯に出向いて、番台でひとりキチ○イ。
この際、演者が振り切っているのは頼もしい。照れるところが一切ない。
小痴楽の弟子が照れてたら話にならないが。

芝居も相当勉強しているみたい。
煙突小僧煤之助、そして雷様のくだりの芝居は実に上手い。
「弁天小僧煤之助」になってたのは間違い?

湯船のシーンに切り替わるあたりも実に上手い。
楽しみな人だ。

裏返しになっていたメクリをいっちさんが返す。
着替えた遊雀師が上がる。

湯屋番なんだけど、結構よかったよね。
小痴楽に教えたものが、その弟子から返ってきて。不思議だよね。引き継がれていくってのは嬉しいね。
昇太師匠が清水で落語まつりやってたんだよ。そのとき呼ばれて、前方で小痴楽が上がったんだよね。
小痴楽はまだ二ツ目になって3年ぐらいだったかな。
湯屋番やっていいですかって訊かれたんで、おお、いいよって答えたの。
そしたらめちゃくちゃウケててね。え、これ俺が教えたのって思ったね。
それ見てね、もうこの噺は小痴楽にやろうと思ったの。それ以来、やらなくなったね。
私もね、二ツ目のときは湯屋番よくやってて、女性のお客さんを潤わせてたの。なのにね。
まあただ、年取ってからやる面白さってのがあるんだよ。
基本的には湯屋番は、若いうちに売り物にするのがいいんだけど、年取ってやると面白いんだね。
だから最近ちょくちょくやってるけどね。

「潤わせた」って、目のことだったけど。

打ち上げを待たずに始まった、遊雀師の湯屋番論評に続きます。
明日は横浜のほうかな。

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