池袋演芸場38 その4(柳家小はん「加賀の千代」)

痴楽襲名の記事を挟みました。池袋の続きです。

今年の新真打小はん師がクイツキの代演。
本来の顔付けは、同じく新真打、主任の弟弟子華形家八百八師である。
代演のためか、「このたび真打になりまして」のような挨拶はなし。
小はん師、元小はぜであるが、実に上手いのにマクラがずっとイマイチな人だった。
神田連雀亭で、マクラなしで本編だけ語ると本当に素晴らしい。でも時間の長い席で、必要に迫られてマクラ喋るとなんじゃこりゃという。
その人が、マクラが面白くなっていたので嬉しくなってしまった。先日、両国亭で聴いた明烏のマクラも面白かったし。
ところが、面白かったマクラ忘れてしまった。じゃ、大したことなかったのでは?
そんなことないと思うんだけど。ただ忘れやすい、軽いマクラだったのだ。
まあ、またどこかで聴いて思い出す予感。

いずれにしても本編、加賀の千代はすばらしいものだった。
昨年聴いたばかりの演目なのにもかかわらず。
落語協会で一般的に掛かる加賀の千代とは冒頭部分が違う。
借金で首が回らない様子から、昨年死んだふりして大家から香典もらったエピソード。
掛け取りや、あとたまに穴どろにも入ってるやつだ。
暮れになったら、この加賀の千代も年末バージョンでやるのかな。でも初夏のこの時期でも違和感なし。

掛け取りの亭主は目端の利いた人だが、加賀の千代の主人公は甚兵衛さん。
とにかくふわふわしている。
ふわふわした人だから、後先考えず死んでみせるのだろう。

振り返ってみたら、隠居のところの女中、お清さんのひどいご面相を、かみさんが描写するくだりが抜けていた。
コンプライアンスに配慮? でもかみさん、本当にひどいこと言ってるわけじゃなくて、人間を識別するために顔を描写してるだけなので問題ないと思うけど。
器用な(不器用そうに映るが)小はん師だから、時間に合わせて抜いたのかな。

甚兵衛さんは腕があるのに仕事サボり気味。
これが隠居の口から語られる。こんなの入れてるのは、小はん師しか知らない。

つい前の週、米福師の見事な熊の皮を聴いたので、印象が混ざっちゃう。

「あさがおやつるべ取られてもらい水」

名句が、庶民の暮らしに実にスムーズに沁み込んでくるのがすばらしいと思う。
朝顔や動物かわいがる人だっているんだよ。お前さんもご隠居さんにかわいがられてるの。
ともかくかみさんにケツひっぱたかれて出かける甚兵衛さん。

「加賀の千代」や「熊の皮」における甚兵衛さんは、予定調和で行動する人。
だから事前に決めたとおりに進めないと気持ち悪い。
かみさんから、隠居が不在なら町内1周しろと言われてるので、いると戸惑ってしまう。
借金の申込みも、掛け値して20円という大金をねだるので、断られる前提になってしまっている。でも隠居が気軽に持ってけというのでフリーズしてしまう。
平和な噺だよなあ。
現代社会、対立が避けられない鮑のしより、加賀の千代、熊の皮のほうが客に心地いいのではないかな。
昇進後の真打、5年ぐらいはくすぶる人が多いものだが、小はん師はもう将来約束されてると思う。

ヒザ前は柳家小さん師。
そそっかしいのにも、ズボラでそそっかしいのとマメでそそっかしいのとがいるようで。
ヒザ前で粗忽長屋なんて派手な噺やるものか?
でも、小さん師の粗忽長屋はあんまり派手じゃないので、ちょうどいい感じではある。
小さん師、襲名したばかりの頃はなんだか口調が妙にとんがっていたという印象がある。

「あたしは中央線の高尾ってとこなんですよ!」

って別に、そんなにとんがらなくていいのではと。
今はこんなことはない。
だが口調がなんだか志ん輔師に似てるなあと。志ん輔師もちょっと、架空の壁に向かってスマッシュするような声の出し方をする気がしている。

熊が納得して、「俺だ!」というピークのシーンは面白い。

ヒザの漫才は笑組。
漫才は早めに切り上げて、新真打緑太師匠のために南京玉すだれ。
ときどき失敗して、戻らなくなるのがご愛敬。その場合、床に置くと戻る。

さてトリの一席なのだけども。
私は緑太師、全然聴いてないわけじゃない。花緑一門の会などでたまに聴いてきた。昨年も。
緑太師から聴いた文楽師のマクラなど面白かった。
でも。
今回はもう、マクラから脱落してしまった。
ほかのお客さんの横顔見てたら楽しんでいる様子だったのだが、私は終始無表情だったと思う。
客席がやたら明るい池袋、演者も仏頂面の客が見えて困ったかもしれないが、一番困惑したのは私である。
学校寄席のマクラでもって、痛い子供が出てくるわけだ。まあ、ここまでは普通であたりまえ。
だが痛い子供の描写に、愛情がまるでないなと。これで早々脱落。
愛情なかったら、子供の噺にスムーズに入れないじゃないか。
痛い子供がウケを狙ってスベるというマクラだが、演者の愛がないので、スベッた感がそのまま客席に溢れてしまう。
痛い子供への公開復讐みたいな形。そして、表面的にはスベリネタのため、私の脳がスベったと感じてしまう。

本編は佐々木政談。
雛鍔とツいてるんじゃないの?
このしろちゃんも、別に可愛らしくも見えず。

というわけで残念。
それでも、途中までは本当によかった席。
小満ん師も最高。
なので、いいかなと。

寄席はいつでも楽しい。

その1に戻る

「池袋演芸場38 その4(柳家小はん「加賀の千代」)」への1件のフィードバック

  1. こんばんは。

    この日、私も前座さんから聞いておりました。
    自分が体験した寄席の興行を他の方のブログレポートを読ませて頂くというのは、大変面白く、また勉強にもなります。

    緑太さんのマクラは私も長い(15分)わりには面白くないな~と思っていました。
    そして噺は「佐々木政談」となり…
    あれ、「雛鍔」とついてるんでは…と気になってしまいました。

    まあ、若手真打ちですから、今後に期待したいですよね。

    返信

コメントする

失礼のないコメントでメールアドレスが本物なら承認しています。