わかりやすいタイトルを付けてみました。
今日繰り広げたいのは、批判ではない。
論理的におかしいでしょ、と言いたいわけです。
YouTuberヒカルを立川志らく師が弟子にするという話。
この件、出発点からいろいろ書く機会を逸していまして。
まず、ヒカルが「タモリつまらない」と言った件。
私にとってタモリは神である。
でも、この発言で別に、私は一切腹を立てたりしていない。
「レジェンド芸人は批判しちゃいけない」なんて思わない。こういう発言に対し「タモリは面白いんだ!」と応戦しても、なんにもならない。
まあ、発言を思わず批判したくなる気持ちだってわかる。「そもそも面白いとかつまらないじゃないだろう!」という。
そういえば、落語もこういう種類のものです。
そうこうするうちに、志らくとバトルになり、そして弟子入り。
これもまた、書きそびれた。
え、木梨の再現? と。
木梨憲武は志らくに弟子入りしたはずなのだが、この件はその後なにも広がっていない。
ちなみに漫才にもチャレンジしたのに、笑点でも演芸図鑑でも、ついにお蔵入り。
今回、木梨の件に触れてる人を見なかった。世間は忘れるのが早い。
今回も茶番? と思ったら、本当に明治座で会をやるのだという。
目標は武道館だって。
ちなみにヒカルは志らくから、「落語家で武道館行った人はいないんだ」と聞いたそうな。
えー、小朝師はやったし、その後らくごカフェの記念公演もあったし、最近も錦笑亭満堂師が真打披露を武道館でやったけどな。
落語界にいても、横の付き合いがないからなにも知らないらしい。それにしても。
志らく師は、既存の落語界を常に挑発したい。
もっとも、一度笑点に尻尾を振ってしまったため、落語界からは「そういう人ね」と認識されるようになったようだ。
軽く見られるようになったみたい。
その結果、今さら本気で仕掛けようとしても、実のところ誰も挑発に乗ってくれないのであった。
応じてもらえないプロレス。
ま、世間にはまだそこそこ、この手は通じる。
そして志らくには、ナントカのひとつ覚えがある。
「このままじゃ落語は滅びる!」のだそうだ。
「このままじゃ日本は戦争になる!」と言ってる人たちと同じレトリックであるな。
ちなみに。
- 落語界は空前の大人数を抱えている
- 落語界は弟子入りが減っている
- 国立演芸場は閉まったままで、伝統芸能の継承が案じられる
どれも本当。
まあ、あかね噺で勘違いした若者が、少なくとも東京の落語界には入ってきそうだけど。
プロ野球も似ている。
- 子供が減って、野球をする子も当然減っている
- 地上波で野球などしていない
- BSでずいぶん野球放映が盛んになった
- プロ野球の配信も便利になった
- 各球場とも、入場者が増えるいっぽう
- 大谷翔平のおかげで、日本のプロ野球の地位が上がった
これも、すべてが本当。
どこに着目するかである。
着目次第では、「このままじゃプロ野球は滅びる」と言っても、ウソにはならない。
だが、人に危機感を与えるには、説得力が足りなすぎる。
志らくの落語滅亡論など、この程度の内容にすぎない。
少なくとも「落語は滅びる」論を嘘だと論じることはできない。まあ、これを認めないと先に進まないのだけど。
だが、そのためになんで素人落語が登場するの?
落語をしたい素人がいて、落語に誘いたいプロがいて、意思が合致した。それは別にいい。
だが、これがなんで落語界を救うことになるんだと。
「このままではプロ野球は滅びます」
憂えて、OBが活動する。
そのために、こんな活動をするのはわかる。
- 少年野球を充実させる
- 高校野球の暴力をなくすよう働きかける
- エクスパンション(チーム数拡大)を呼びかける
だが、
- 来シーズンからNPBに草野球チームを加える
はまるで違う話。
それどころか、志らくの場合、さらにひどい。
「草野球は積極的に加えるが、いっぽうで自分の選手(弟子)にはひどい扱いをしても平気。むしろそれが正しい」
こうだもの。
選手もちゃんと育てられない人が、草野球を積極的に野球界に加えようとしている。草野球を加えないと野球が滅びる。
落語界滅亡予言の前に、一門が滅びるのが先ではなかろうか。
これが、「本物の弟子にハッパを掛けるために、あえて仕掛けている」だったら、別にいいのだけど。
でも日頃の言動見てると、たぶん違う。
この人はとにかく、こういう発想である。
- 弟子は来れば採ってやる。育つかどうかは知らん
- すでに他の業界で成功してる若者のほうが、ずっと魅力的。こっちに手を掛けるほうが自分も話題になる
今回の弟子入り(とやら)を、立川流Bコースになぞらえる人もいるし、本人もそう述べている。
しかし、立川流Bコースのおかげで、落語界が活況を呈したことなんかあった?
普通は、落語が好きになったら、本物のプロを聴きにいく。
素人を聴きたがる人は、「落語が好き」にはなっていないし、なれないと思う。
必然的にこういうことになる。
Z世代に向けた「Z落語」なんて流行ってないだろう?
特定の層に向けても落語は波及しない。
落語界は閉鎖的だと、よその世界からは言われがち。
だが事実として、修業しないでいきなりプロ扱いになった人などほぼいない。
副業なのに、落語会をやって客を埋められているのは風間杜夫のみ。
東北弁落語の六華亭遊花さんは、芸協の客員になっているのでプロ。この人は、理論上ありうるルートを自力で開拓したわけで、唯一無二。
そもそも芸術祭獲ってるという点、ただものでない。
他に続くかというと、そうはいかない。
「東大卒エリート落語家」として物議をかもした参遊亭遊助という人は、ミズキーホールで公演している。
先日現場でポスター見て、貸席なんだと思ったら、ホール主催公演らしい。
ゲッ。
You Tubeでいやいやながら落語聴いてみた(もうない)ので、実力面で到底プロとは認められぬ。
本当は、「実力」でプロアマが切り分けられているわけではないのだが。
プロの修業を踏まえてプロになったのが、桂三度、月亭方正。
これらの人が、イメージの上からも、外から来た成功例としては一番近いだろう。
芸人経験者ならさらに多数落語界にいるが、修業の仕方はなんら変わらないので、特別な目では見られない。
東京より大阪のほうがプロになるルートが事実上広いという点は、今後考慮すべき事項かもしれない。
まあヒカルがどうだかわからないが、急にプロとしての力量が身に着く可能性など、ゼロ。
もちろん、中身はただのYouTuber。
話題性で武道館までやって、そこでおしまいになると思います。
あいにく、落語界に、プラスの影響も、マイナスの影響も与えず気が付いたらすべて終了している。
きっとこうなります。
そういえば、参遊亭遊助に関する東洋経済の記事を取り上げた際、私は「司馬龍鳳を擁護していた志らく師匠だけは、自称プロを擁護しないと矛盾する」と書いた。
その後スレッズにご本人、案の定矛盾したことを平気で書いていた。
あいにくもう消えてしまったが。
初めてコメントをさせていただきます、
“ヒカル氏が落語に挑戦”という内容のニュースをネット上で見て、
直感的に「落語界ではかなり奇妙な話のはずだ」という印象を受けました。
ただ、マスコミの芸能ニュースでは詳細が分からなかった。
でっち定吉さんの記事で、やっと得心がいった感覚です。
立川志らく師は、師匠譲りの炎上狙いで弟子へショック療法をかけたのかも。
弟子筋の反発くらいは織り込んでいるでしょう。
(かつての「立川流Bコース」の臨時復活とも言えますし。)
ただ、「選んだ相手がヒカルかよ…」という思考が、個人的には消えません。
木梨憲武氏の落語との関わりは、今まで全く知りませんでした。
ご教示に感謝申し上げます。
蛇足:
個人的に最も好きな落語家は柳家喬太郎師なのですが、
以前の録音で、”直前の一席が風間杜夫さんの「火焔太鼓」”と
分かる内容を、師のマクラで語っていた記憶があるのです。
プロ落語家と同じ会で落語を演じる俳優って、かなり珍しいのでは。
いらっしゃいませ。
「落語なめんな」みたいな意見もまた違う気はします。落語やるのは別に構わない。
ただ事実として、素人が天下を取れる世界でないことは、火を見るより明らかで。