笑福亭由瓶「じゅうじゅう帝弁当」(神戸新開地喜楽館配信)

7月号の東京かわら版を見ると、行きたい寄席や会がそれほど見当たらない。
まあ、そんなことだってある。

なので、久々に配信ライフにする。
産経らくごに入った。1年以上間が空いてるためか、初月無料だったのはこれ幸い。
しかし、今のところ聴ける高座は少ない。1か月トータルでは今度そこそこ積み重なるはずで、別に文句ではないけれど。
桃月庵白酒師のアーカイブ、「佐々木政談」はさすが面白い。今日取り上げようかとも思ったぐらい。
あと、柳家やなぎ師の「さよならたっくん」。これは現場で一度聴いたので、検索にもかかる。

もうひとつの配信にも、久々に入った。
神戸新開地喜楽館の「元気寄席」。こちらもやめて1年以上空いてるのだが、しっかり1,100円取られた。いいけどさ。
この寄席の収録は平日夜で、いつも空いてるらしい。仕方ない。
だが、演者が毎週毎週、少ない客をいじるのにちょっとうんざりしたりなんかして。

客の少ない席での演者のふるまい

この際は1か月でやめちゃた。
だが今回の席、なんだか知らないが若い人が多数入ってきて、賑やかだったみたい。
露の紫師の看板のピンは、NHK新人落語大賞に出していたもの。相変わらず面白い。
おやっさんが江戸っ子なのが新機軸。

トリの笑福亭由瓶師の新作落語が面白かった。
「ゆうへい」である。
この師匠、ラジオで聴いたことあったろうか? たぶんあるとは思うが、顔を見てないものだから記憶がない。
マクラから爆笑。
中堅の上方落語家が、東京の会に出たい(でもそれほどはない)リアルな心情が、とても面白かった。
配信たまに聴いて本当に面白いなと思うのは、こういうクラスの人である。

鶴瓶一門であれば、銀瓶、鉄瓶、べ瓶などはふだん東京で落語を聴いてる人でもご存じでしょう。
由瓶師、別に売れてない。ご自身でもよくわかっている。
ただ、ご自身を客観的に把握したそのさまが、圧倒的に面白かった。

上方落語はしょっちゅう東京で聴ける。私もそこそこ聴いてる。
ただまあ、出る人はわりと決まっている。
そんなにメジャーな会には出てないが、東京で根を張って(「住んでる」とイコールではない)小さな会を開いてる人もいるけど。
逆に、東京の落語家の中堅の人、大阪で会をやったらつまらないか。そんなことは全然ないでしょう。

東京に呼んでもらえたら(あるいは協会主導で送り込んでもらえたら)実に嬉しい由瓶師、噺家生活29年もあるので、そこそこの回数は行ったことがある。
師匠の会に出してもらえることもある。
今年はまだ、東京での予定はない。今予定なければ、もうないだろう。
東京に行く際、上方落語協会に押し込んでもらった際は、新幹線がグリーンだった。とても嬉しい。
師匠の会はギャラたっぷりくれるのに、なぜか新幹線は指定。なので差額を自分で払ってアップグレード。
グリーンに乗った領収書は捨てずに取ってある。亡くなった際に、棺桶に入れて欲しい。
そうしたらグリーンで成仏できそうな気がするじゃないか。

さて、グリーンに関するマクラは面白いが、本編は別。新幹線のお弁当。
「じゅうじゅう帝弁当」という、もうない弁当。
JR東海パッセンジャーズ製造。日本一旨かったんだそうで。
劇中の主人公によると、赤ワインソースの牛肉弁当だそうで、下に敷いた蒸しキャベツにソースが掛かるとそれは旨い。
当時850円。おーいお茶150円と一緒に売店で買って、「お釣りいらんよ」という由瓶師。
全然つまらないギャグには違いない。師もわかってる。でも、東京で一席やる前にテンション上げときたいのだ。
と、スラスラ語るのが実に楽しい。

検索すると「じゅうじゅう亭弁当」でしか出ない。
配信だけ、あえてタイトル替えてるのかもしれない。

主人公は東京出張のサラリーマン。
じゅうじゅう帝弁当を新大阪駅で買って新幹線に乗ったら、なんと手違いであったかい白ご飯が空っぽ。そこから始まる騒動。
車掌が検札に来るが、サラリーマンは「じゅうじゅう帝の弁当にご飯入ってまへんで」。
困惑する車掌。
あんた、JR東海やろ。JR東海パッセンジャーズの親やないか。
こんな輩に、なんとかしてくれようとするJR東海。京都でご飯だけ積んでくれることになる。
だがこの期待も裏切られる。
裏切られる、というか客のいいようにしてくれてるのに、あくまでも白ご飯が欲しい主人公。

あらすじを紹介してしまったが、本当はストーリーより、関西人のしょーもない会話を楽しむ噺。
ちゃんと、お弁当の手違いに関係しない(と当初思われる)後輩が同乗している。会話させておけば、いくらでも落語になるのだ。
上方新作の流れをしっかり受け継いでいる。そして、師匠鶴瓶の「わたくし落語」の系譜でもある。

主人公が丹波出身(演者と同じ)で、卵焼きはだし巻きでなく砂糖の入った甘いのに限るとか、さりげなく食文化の話題も入っている。

高いテンションで突っ走る、楽しい一席でした。

今月は、デキさえよければですが、配信も取り上げると思います。

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