渋谷らくご8(中・雷門小助六 ねこ自慢)※マクラです

高座返しの前座さんは、落語の上手い隅田川わたしさんだったそうで。気づかなかった。
雷門小助六師登場。

今日は百栄師匠との会で。
協会が違いますので接点は少なくて、たまにここでお会いする程度です。
ただ共通点がありまして、猫好きなんですね。百栄師匠は瀧川鯉朝師匠と仲良しで、お互い猫好きなんです。
いずれ猫好き3人の会をしたいですねなんて楽屋で話していました。

今日は私は、猫の噺をしようと思って用意してきました。普通はお客さんの様子をうかがってから噺決めるんですけど。
今日はやりたい噺をさせてください。

落語協会はついに会長が林家になったということですけど、われわれ芸術協会はすでに春風亭です。
落語芸術協会という団体は、もともと昇太師匠の大師匠である柳橋先生と、桂小文治という師匠が始めたものです。だから、このどちらかの身内にならないと入会できなかったんですね。
ですが我々雷門は、どちらの身内にもならずにぬるっと入りました。
私が楽屋働きしてた頃によく言われましたね。アニさんや、色物の先輩に。
雷門は外様だから大変だねって同情されました。
そうなんだ、外様なんだと思ってたんですけど、その後笑福亭が来たり立川が来たりして、なんにも差別されませんでした。和をもって貴しとなす団体です。

落語協会は寄り合いが7月31日ということですけど、芸術協会は8月31日です。
毎年、前座さんが余興をやります。
今年は会長じきじきにお触れが出まして。

「最近の前座の出し物はひどくて見てられないので、ちゃんとやるように」

会長直々にこんなこと言ってるんですよ。もっとほかにやることあるんじゃないかと思いますけど。
あとお触れというと、「楽屋では靴下を履くように」とかです。
そんな昇太師匠といま、新宿でご一緒してます。昇太師匠がトリで、私はヒザ前です。
この芝居、昇太一門の弟子たちがずらっと揃いまして。師匠がトリを取るので帰らないで楽屋にいるんですね。
そんなときに上がるわけです。
私、楽屋に人がたくさんいるの嫌いなんです。落ち着かなくて。

「なんだ、昨日と同じ噺じゃないか」
「あ、トチった」

とか、陰口叩かれてそうで。
なんでそう思うのかっていいますと、私が言うからですね。
前座さんに聞いたら、そんなこと言ってるのは私だけらしいですけど。

小助六師の飼い猫の話。
長年飼ってるので、何匹も看取ってきた。
現在は18になる老猫と、最近来たばかりの子猫。
老猫が仲良くやってくれるか心配だったが、子猫がパンチしてきても平気な顔をしていて、人間ができている。人間じゃなくて猫だけど。

私はひとりものでして。
よくお客さんや仲間に、かみさんもらったらって言われます。
世間は、女性に対しては言っちゃいけない風潮になってきました。でもおじさんにはまだ言っていいらしいです。
言われた私、ひそかに傷ついてます。
おかみさんがいれば、打ち上げなんか行かずに早く帰って健康になるんじゃない?
でもね、今可愛い猫がいますので、どっちみち早く帰ってます。一緒じゃないですか。
今新宿で夜のトリ取ってる人は、おかみさんがいるのに飲み歩いて、糖尿になって入院ですよ。
小痴楽も猫飼えばいいと思うんです。

糖尿の噺家の話、まだ名前出てない段階でどっとウケるところが客もさすがだ。
末広亭の夜席も検討してた私だが、小痴楽師の検査入院(外出許可をもらってトリを務める)は、数日前に初めて知ったばかり。
小助六師のマクラは、語る自分自身にケチをつけていく手法が見事である。
といって嫌らしい自虐じゃなくて、自分をしっかり笑える人なのである。
お盆興行で会長のヒザ前を務めるというのも、大変な出世である。
ところで猫の噺ってなんだろうと、楽しいマクラ聴きながらずっと考えていた。
「猫の災難」「猫久(※猫の噺ではない)」「猫忠」「猫定」、それから鍋島騒動とか化け物猫の噺がいくつかあったななんて。

以前20歳で大往生した猫を看取った当日、九州に巡業に出かけた話もあった。
座長の師匠が、家で猫を飼ってる(かみさんが)のに、猫が嫌いだというので憤ってしまったという。
巡業先でお客さんから言われる。

「師匠、ここの居酒屋には看板猫がいますよ。膝の上に載せて可愛がってやってください」

しかし断る小助六師。うちの猫に悪いでしょ。
私におかみさんがいて、そして私がめちゃくちゃかわいがってるとします。
それを聞いたお客さんが、

「師匠、この居酒屋にも奥さんがいるんですよ」

なんて言われても、ダメでしょ。

あ、また小助六師のマクラで1日埋まっちゃった。
構成がしっかりしてて楽しいのだよなあ。

マクラの最後に小助六師、私の趣味は落語です。
でも今は、半分仕事になっちゃいましたから。半分じゃないですけど。
高卒で楽屋入りしましたけど、中学生の頃が落語は一番楽しかったですね。
チャンバラ好きの子供がチャンバラごっとするように、私も落語ごっこがしたいんです。
でも落語好きの子供には友達がいません。
なので今日のおかずを尋ねる母親に、「するってえとなにかい。ようがす」なんて答えてました。
親戚がこの頃のことを覚えてまして。私の黒歴史です。
あの頃のほうが面白かったって言われてます。

先日聴いたマクラの、別角度バージョンが聴けて嬉しい。
本編、予想のどれでもなかった「猫芝居」に続きます。

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