渋谷らくご8(上・春風亭百栄「引越しの夢」)

2月の総選挙の際、投票済証でもらったシブラクの割引券、今月が期限。
間抜けなことに、この割引券捨ててしまった。
半券と勘違いして、捨てた記憶がしっかりある。
こうなると、行きづらい。
しかし「ふたりらくご」なら価格が違うので、そもそも損した気がしない。

思い立って渋谷へ。夕方1時間で終わる会。
春風亭百栄師と雷門小助六師という、なかなかない組み合わせ。
客数は30くらいかな。

引越しの夢 百栄
猫芝居 小助六

 

先輩の百栄師から登場。
シブラクはこの辺がフリーダム。
いつもの日本一汚いモモエから。
これはないと始められないみたい。
しかし、ディープ客が多いとみたのか、おいおいきれいになって行きたいで終える。
この後、初めて聴いたマクラは大変面白かったです。声張らず、ぼそぼそ喋るのが最高。
今回一緒の、小助六師の話はなかった。

45分前に着こうと思ってやってきた百栄師。
サンキュータツオに、「なにで時間を潰すんですか」と訊かれた。
マークシティに行って、ピアノのある所に行き、弾く。すみません、ちょっと見栄張りました。弾きません。
弾いてる人の後ろで、指揮をする。終わったら、客にピアニストを紹介する。
天才ごっこという遊び。
あと、街で信号を待つときは、必ず指で四角形を切り取ってみる。アーティストのつもりで。
これも天才ごっこ。

落語協会は、いろいろ行事が多い。7月31日の寄り合いは、ホテルを借りる。
みんなで飲み食いする集まり。
それから圓朝忌。昔は芸術協会と一緒にやっていたが、今は落語協会だけ。
ついに、会長が変わりましたよ。なんと林家からついに出ました。
三遊亭であったり柳家であったり、古今亭であったり、ついに林家です。まさかねぎし三平堂に行くとは。
こぶ平師匠ね。いえ、正蔵師匠って言わなきゃいけないんですけど、顔見るとついこぶ平って思っちゃうんですね。
同い年なんですよ。
最近はよく楽屋で、話しかけられます。「いろいろあって大変なんだ」って。
「助けてくれ」とは言われないんですけど。
楽屋でよく話しかけられるんですが、正直迷惑です(客爆笑)。
いえ、こんなこと言っちゃいけないですけど。
でも偉い人ですよ。こぶ平の頃とは、稽古の量が違うんでしょう。
今も鈴本の夜席で一緒なんです。鈴本はさん喬・権太楼ですけど、その前でしっかりやってましたね。
…私、なんでこんな上目線なんでしょう。
偉い人なんですよ。病気の弟を抱えて。
弟は、病弱なんです。すべり病という病気にかかってます。
体が弱くて、よく肉離れみたいな「客離れ」あるいは「客離し」という病気になってます。
まあ、客離しは私もそうなんですけど。
それからイップスでして。大喜利イップスなんです。
やればやるほど、反対に行ってしまうというイップスなんです。

海老名いじりは常々聴くが、その中で一番面白かった。
「俺なんかが言っちゃいけない」というのが濃厚に漂ってるから、毒はあってもさわやか。

会長と同い年なんだね。
キャリアはびっくりするぐらい違うけど。
そういえば、百栄師が、喬太郎師の番組でもって「ホームランの約束」を出し、平気で志らくいじりをしてたのを思い出した。
入院している子供に対し、談志の代わりに志らくで我慢しろと言う野球選手に、「志らくじゃ、ポテンヒットだ」。
志らくのする海老名いじりなんて、「談志の弟子の俺は言っていい」だから、まるでつまらない。

本編は新作でなく、古典の「引越しの夢」だった。こんな演目持ってるんだ。
百栄師の場合、新作より古典のほうが珍しいので、ちょっと嬉しい。

口入れ屋の小噺を振る。
口入れ屋の面接を受ける女がふたり。
最初の女は商家がいいという。次の女は、おかみさんが病弱で亡くなりそうなご主人の家がいいという。
この小噺、聴いたことない。オリジナル?
百栄師がぼそぼそ喋ると実に楽しい。

この段階では、この時季に掛かる「化け物使い」かなと思っていた。
百栄師も、海老名とは違う林家だが、その林家にはある噺だなと。
しかし、きれいな女中、お梅さんが採用されて番頭がわくわくしている。引越しの夢。
セクハラ丸出しの噺であり、最近はそんなに掛からない。私好きなんだけど。
まあ、やりようですね。百栄師の空気からは、ハラスメントは出てこない。

小僧が、番頭さんに「ご注進」と教えに来ている。
番頭さんが、わざわざ小僧を呼び止めて「ありがとう」という、さりげない会話に爆笑。
番頭さんがお梅さんを呼びに行かせて、帳面のドカチャカを宣言。
いつの間にかお梅さんは消えていて、手代が代わりに座ってるくだりが実に楽しい。番頭さん、厚底メガネ(昔なので、頭の上で止める)をカッコつけて使わないから間違えるのだ。
正直、過去聴いた中で、この日の百栄師のが一番面白かった。別に、新作風にやってるとかじゃなくて、しっかりやってる古典でもって。

陽も高いのに早じまい。
夜中に夜這いに出る店の人間たち。
しかしおかみさんが、中二階の梯子を外させている。

番頭ふたりが、吊戸棚から上に上がろうとして、戸棚を落として支える。
このビジュアルが楽しい演目だが、百栄師もここに注力している。
やっぱり面白い。新作派だからこそ、噺にあんまり寄っていかないのが功を奏しているのだろう。

そして3人目は井戸に落っこちる。
これ、内井戸だったんだな。今までしっかり認識してなかったよ。
実に説明のわかりやすい百栄師。
なんで外の井戸にぶら下がってる人が、家の中で棚を支える番頭たちと会話してるのだろうと不思議だったのだが。

見事な一席でした。
百栄師の古典で、過去いいなと思ったのは「疝気の虫」。
引越しの夢は、もっと面白いものだった。
こんなに楽しいなら、どんどん百栄古典を聴きたい。

続きます。

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