スタジオフォー巣ごもり寄席10(上・三遊亭萬都「お見立て」)

12時に終わった梶原いろは亭から都電で転戦。
スタジオフォー巣ごもり寄席は1時開演。
春風亭一花さんが出る。今回が最後の出演らしい。
最後だと知ってやって来たわけではない。掛け持ちするにはいいメンバーだなと思っただけ。
ちなみにこちらは予約していない。
万一札止めとなっても無問題。その際は野方グリーンホールで午後4時開演の「春風亭昇咲・春風亭かけ橋二人会」に回るつもりだった。

時間的には、3つ行くことも可能。
ただ、2つ行ったらもう満腹でした。

確かに満員に近いが、開場後の入場でもまだまだ大丈夫だった。50人ぐらい入ってたかな。
ショックだったのは、PayPayが使えなくなっていたこと。
キャッシュレス不毛の落語界における、希望の星だったのに。
たかが1,000円でガタガタ言うな? そういうもんじゃないんだ。

お見立て 萬都
寿限無 かしめ
船徳 一花

トップバッターは三遊亭萬都さん。この人も目当てだ。
つい最近聴いたばかり、と思ったら現場でなく今月聴いた配信(三三・一之輔二人会)だった。現場で遭遇は1月以来。
配信での開口一番、軽い「のめる」も素晴らしいと思ったが、今回はもう圧倒的だった。
演目はお見立てで、どうやら雲助師から来てるっぽい。

来春真打になる芸術協会の桂鷹治さんの高座を最近聴いて、ボサノバの名曲「ワン・ノート・サンバ」を連想した。
言葉のアクセントを極力刈り込み(棒読みと言ってもいい)、それでいながらその制限の中で、噺を歌い上げる手法。
素晴らしいなと思ったが、その語りが早速もうひとりいた!
しかも、まだキャリアの浅い二ツ目に!
萬都さんの高座で、今までにこんなことは感じなかった。演目によるのかもしれないが。
ただ、これから覚える噺はみな、ワン・ノート・サンバ方式になっていくのでは。

ずいぶん大人数さまで。
今日は一花ねえさんが巣ごもり寄席最後で。ねえさん「すもごり寄席」って言ってましたけど。
今日は一花ねえさんだけでなく、次のかしめアニさんもNHK新人落語大賞のファイナリストです。かく言う私は、1回戦のビデオ審査で落ちました。

この後のマクラはテンプレートなのだが、「また同じ話かよ」という不満はまるでない。
ご本人が、「どう語ったら面白いか」常に考えている。だから、また語り口が変わっていた。

四万十から取ってまんと。萬十だとまんじゅうになっちゃうので「都」を探してきた。
隣の家まで2.5kmのところに住んでいた。最近隣人が亡くなり、隣家が5km先になった。
家の裏では天然ウナギが捕れる。
そんな男が江戸落語をやりますので。
高知から東京に出ることは、脱藩という。
高知の警察署の仕事(詐欺啓発など)をもらい、師匠に報告する。「師匠、警察にお世話になりました」。
魚の骨を喉につかえさせてしまった。医者に行って抜いてもらった。
楽屋で圓太郎師に、その話を疑われる。
師匠萬窓が助け舟を出してくれる。本当なんですよ、ぼくも医者行って抜いてもらいました。
圓太郎師、萬窓はなんの骨? サンマです。
萬都は? ウナギです。
それ以来師匠の機嫌が悪い。

マクラからグルーヴ感に溢れていて、いつもの話が面白いのだ。
二ツ目がやりがちな、「間を取る」ことをしないからだと思う。
声を張って間を取るとウケそうだけど、間を取った後のネタが凡庸だと、高座はたちまちマイナスに転げ落ちる。
いっぽう、萬都さんみたいに意図的に間を取らないと期待値が低いので、ネタの巧拙にかかわらずずっと楽しい。魚の骨みたいに、ちゃんとできたネタは期待以上に爆発する。

もっとも、簡単なことではない。今、ムダに期待値を上げちゃってウケない二ツ目さんに、「明日から間を取らないで話せ!」なんて言っても、これが正解というわけではない。
まあただ、つまんないかもしれないネタは、そっと出したほうがいいのではとは思うけど。
次のかしめさんみたいに、気にしないで出せる人もいるんだけど、みんながみんなそうではない。

お見立てにどうつながるかというと、「あとでいろいろ思うんですけど、その場では上手いこと言えないんですよね」。
これが、若い衆の喜助にスライドする。
そうなのだ。喜助は上手いことが言えないもんだから、早朝に墓を探してお参りする羽目になるんである。
ああ、なんで山谷だなんて言っちゃったんだ! 花魁の(後出しだが)言うとおり、カムチャツカとでも言っておけば!

廓噺大好きで、しかしお見立ては決してそれほどでない私が、最近聴いていちばん面白かったのが雲助師のもの。
「扇子ゴリゴリ」が入っていた。喜助はゲラで、杢兵衛お大尽のセリフに爆笑してしまう。
だから扇子を膝の下に敷いて、ゴリゴリやりなさいと。
お茶を白目に付ける方法と一緒に花魁に教わるのだ。
花魁がひとりでいるらしいことを除くと、ほぼ雲助師と同じ。
お大尽の泣き方も。喜助が、何の音だろうと鳴き声を不思議がって、「ハトがいますか?」。

ただ語り口は教わった人のものとは違い、ワン・ノート・サンバなのであった。

続きます。明日も萬都さんから。

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