神田連雀亭ワンコイン寄席72(桂南楽「金明竹」)

メディアの落語をすっかり聴かなくなってしまった。
radikoもやめたままで、2月の「上方らくごをきく会」も結局スルー。

幸い、現場には飽きていない。
ちょっと日曜の神田連雀亭へ。
このあと、旅行と確定申告があるんで1週間ぐらい更新休みます。すみません。

つ離れしている。

権兵衛狸 うぃん
鈴ヶ森 伸しん
金明竹 南楽

 

うぃんさんはマクラ(横浜市中区の区長表敬訪問と賀詞交歓会)が非常に楽しく、本編は普通。
伸しんさんはテンション高いが、マクラも本編もイマイチ。
ウケてたけどね。
この二人もネタになるのだが、今日はトリの南楽さんに絞っちゃおう。
やや欲求不満気味のところに現れた、救世主みたいだった。
爆発的な面白さ。引き芸なのに。
先の二人がテンション上げて行ったところに、引き芸がぴたっとハマる。

南楽さんは1年振り。
もう、オドオドという感じではない。オドオドしてたのだってキャラだろうけど。
マクラは以前も聴いた、学校寄席。
タバコ吸う仕草は全然ウケず、終演後スマホいじりながら扇子を回していたのが大ウケという。
南楽さんの仕草を子供たちがボロクソに言う。

「つまんない」
「なよなよするな」
「古典芸能なめるな」

この、各セリフの間が5秒ぐらい。めちゃくちゃたっぷりになっていた。
小三治もびっくりのあざとさ。そもそも間をたっぷり取るようなシーンじゃないだろう!
面白いじゃないか。

やむなく一席やりますみたいなことを言って、金明竹。
トリで前座噺か。これがもう、面白すぎて。

水撒きと掃除はなく、店番からスタート。
与太郎の個性に関する具体的なエピソードがないが、そういったところでははじめから勝負しないのである。
記号ぽい与太郎。
ちなみに旦那の甥という設定もない。そもそも旦那は68で、おかみさんもばあさん。

まず傘。
のきを借りる通行人に、傘を貸してやる。というか、くれてやる(与太郎がそう言ってた)。
旦那の傘はラルフローレン。
爆笑だが、いたく感心したのはその先。
与太郎、旦那に対しては「ラルフローレンの傘貸した」って言わないのだ。
つまりラルフローレンのクスグリはお遊び。南楽さんの口調とワンセットの冗談なのであって、ここを膨らませるのは違うということ。
古典落語を破壊したいわけではないのだ。
ラルフローレンを再度出したら、「ラルフローレンの傘を貸す噺」になっちゃうのだろう。

この設計、落語というより、お笑いの才能を感じる。
そして、たとえば瀧川鯉白さんのように噺の外側から眺めるやり方ではない。
南楽さんは、演者に戻る際にも、噺の中から出てこない。不思議なスタイル。

与太郎、旦那に「貸したらダメだった? カサナイってこと?」とギャグをかましている。
擦り切れた古典落語に、新たにクスグリ入るもんだなあ。

猫の断りに、アドリブで「皮は皮」に替えたくだりはない。
最初から皮は皮。
かように、既存の古典落語の意図的なひっかかりを極力なくしてしまおうという、強い意志を感じるのだ。
クスグリ過剰になる心配はない。その分、強いギャグ入れても大丈夫。

与太郎の「猫の焚き付け」聞いたお隣は、「ヤバ!」。
こういうのも、ピンポイントで1回だけ入れていく。
ちなみに与太郎が店番してるのを見て、「偉いね。いや、店番任せる旦那がね」だって。

目利きを頼んでくるお店はなんだか立派な名前だった。
香蘭屋とか、そんなの。
あとで聞いた旦那、呆れて使いを追いかけ出ていく。

ちなみに自分が盛りのついたことにさせられた旦那。「キモ!」。

金明竹を聴く際は必ず、「旦那がどこまで怒っているか」を確認する。
先日聴いた小せん師のように、怒りゼロのものが最も好き。
南楽さんも怒りゼロ。ただ南楽さんの場合はもう、登場人物が怒りの感情を喪ってしまった世界みたい。

ちなみに使いもやっぱり、クスグリ少ない。
与太郎にとっとと用件伝えていく。
言い立ては、聞いたことのないスタイルだった。私がそらんじているものに非常に近いのだが、違う。

わて、中橋の加賀屋佐吉方から使いに参じました
先度、仲買の弥市が取り次ぎました、道具七品のことでございます
祐乗・光乗・宗乗三作の三所物
ならびに備前長船住則光
横谷宗珉四分一ごしらえ小柄付きの脇差
あの脇差な、柄前は古タガヤ言うておましたが、埋もれ木やそうで木ィが違うとりましたさかい、ちょっとお断り申し上げます
自在は黄檗山金明竹、寸胴の花活けには遠州宗甫の銘がおます
織部の香合(こんご)
のんこの茶碗
古池や蛙飛びこむ水の音申します風羅坊正筆の掛物
沢庵・木庵・隠元禅師貼り混ぜの小屏風
この屏風な
わての旦那の檀那寺が兵庫におます
兵庫の坊さんのえろう好みまする屏風じゃによって
表具にやって兵庫の坊主の屏風にいたしますと
お言づけ願います

与太郎と同様、四たび聞いただけであるからうろ覚えなのはご容赦。

備前長船の前に「ならびに」が来る場合、あとがだいたい異なる。そして「住(じゅう)」は入らないことが多い。
タガヤサンでなく古タガヤなのは珍しくはない。
「寸胴切り」でなく「ずんど」。
香合は通常「こうこ」だが読みが違う。
ちょっと気になったのは「小屏風」のアクセント。南楽さんは「びょう」にアクセントを置いていたが、バージョンにかかわらずここは冒頭高ではないかな?

最初の言い立てのあとパラパラ拍手。私は金明竹の言い立てで拍手するのは嫌いなんでしなかったが。
南楽さん、「拍手もらった。朝稽古しててよかった」だって。
もっとも、三度目の言い立てで若干噛む。噛んだのもギャグにする。

おかみさんの覚えた内容の中に、「沢庵を両側からくわえてかじるゲーム」が入っていた。
キスゲームみたいなやつかと旦那。

サゲは普通。やはり破壊したくてやってるわけじゃないのだ。

坊主がいて屏風があって、延々これやって、「だいたいこんなところです」。

いや本当、ヒットでした。
二ツ目になって4年の南楽さん、いよいよ本気出してきたみたい。
実に楽しみです。

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