2席めに入る前に、袖からペットボトルのお茶を持ってきて喉を湿らす鯉朝師。
ペットボトルをどこに置こうか考え、結局ころころ転がして楽屋(段差がある)に戻す。自由だな。
真打の披露目で、新真打雷門五郎師から非常にいい宮戸川を聴いた。
その際最近主流の演出「積極的なお花」自体は決して悪くはないのだけども、それが普通になってくるとなんだかなという内容を書いた。
しかし鯉朝師の宮戸川、もう究極のお花である。なにからなにまで企んで、この日に賭けている。
ここまでやられたらもう、ぐうの音も出ないです。
お花を強化する代わりに、おじさんは控えめなのが好き。
おじさんの飲み込みぶりもそんなに強調されていないので、噺の邪魔にならない。
おじさんに頼む半ちゃん。戸をくぐったら、1、2の3で戸を閉めてください。
おじさんやってみるが、閉まらない。なぜなら女物の下駄が挟まっている。
半ちゃんもやっぱり新作落語みたいなキャラ。大げさではないのだけども。
なので、「堅物だねえ」という、現実に即した感想は発動しない。なんだか、モンスターから逃げ惑う半七を楽しく見守る感じ。
一般の宮戸川と異なり、ラブシーンは打ち切られない。
なぜなら、結局なにも起こらないからである。ちょっと斬新。
でも、ふたりはめおとになる。
15分休憩時間くださいと。
仲入り後、またペットボトル持ってくる。
さっきのペットボトルですけど、すごいですよ! 楽屋とこの高座の間には段があるんですけど、階段の途中に止まってましたよ!
またやってみる。今度も段で上手いこと止まった。と思ったら、時間差でガタン。
音だけで想像させる究極の芸です。
冒頭でも語っていたのだが、ネタ下ろし新作はサゲがなかなかできなかったそうで。
オチできたの、昨日の2時ですとのこと。
なかなか始めないで、マクラを話す。
上野広小路亭から電話が来まして。
仕事の依頼はもう、二つ返事で受諾するものですけど、永谷だけはあんまり出たくないんですよ。
ああ、もう3コール鳴っちゃったなんて。ようやく出まして。
しのばず寄席の依頼ですね。寄席が空いてるときに詰め込む番組でして。
すごい顔付けになって「やった!」と思うときと、なにこれ?っていうときがあります。
7月31日のトリの依頼でした。OKしました。
番組については、あんまり変な人が混ざらないようにこちらも自衛します。一門のメンバーも加えておいてくれと頼みました。
昇輔と蛙朝、それから(坂本)頼光さんです。
仮の番組表が届いたので見てみたら、みんな入ってました。なんだお前ら仕事ないのかよと。
しのばず寄席ね。いいんですけどもワリが振込みだったりしまして。振込みだと、いつの分なのかよくわからなくて、いくらもらってるのかピンと来ません。
振込額200円なんてこともありましたよ。大雨の、お客さん二人の日でした。
私は近視ですから、お客さんの顔はぼんやりとしか見えません。前のほうに女性がいて、後ろのほうには体格のいい人です。
終わったら、お客さんですと声が掛かりまして。ああ、お客さんふたりでも楽屋見舞いの人がいるんだな、嬉しいなと思ったら、快楽亭ブラック師匠でした。
なんで俺の高座聴いてるんだよ。
私は、しのばず寄席(落語協会を除く各団体混合の寄席)は実質的に芸協さんが番組作ってるのではないかと想像していたが、ちゃんと永谷商事自身が作っているようだ。
そして鯉朝師の言うとおり、すごい番組もあれば、なんじゃこれもある。
すごい番組に入れてもらえればお客さん勝手に集まるわけで、嬉しいでしょう。
なお数年前に31日のしのばず寄席を聴いたら、マグナム小林先生が「芸協の人はだいたい31日空いてます」と言ってた。
この、ペコシリーズですけど。
最初に決めた設定に、首を絞められてるところがあります。
人形どうしでは会話ができるけども、人間とはできないというルールがあるわけです。それをどう乗り越えるかなと。
なので前作(3作めらしい)は、物の怪みたいなものを出しまして。
でも、世界の縛りというものはやっぱり必要なんですね。なんでもありになっちゃうと作れないんです。
新作落語には制約が必要だというのはわかる。自由でないから、噺が膨らむ。
三題噺というのは究極の足かせだけども、これによっていかに新作が生み出されたか。
人間に文句つけたら、なぜか反応があったペコちゃん。
会話が通じると思ったら人間ではなく、狸が化けた姿だった。岐阜の山中から出てきた。
先祖の道祖神を探しているのだ。
故郷はソーラーパネルで覆われてしまい、なぜか大事な道祖神もどこかに流出してしまう。
どうやら、居酒屋の前に飾られた信楽焼の狸が道祖神らしい。
とりあえずあんた、そこでバイトしたらどう?
ペコちゃんに勧められてバイトを始めたら出世するいっぽう。なんだかもう、故郷に帰るよりこっちのほうがいいんじゃないか。
店長もなんだか、父親みたいな人だし。
サゲを振るために、ごく軽い伏線が入っている。
これがもうちょっと強化できないものかと、一席終わってなおも語る饒舌な鯉朝師でした。
確かに軽い伏線なんだけども、そのために結構大げさな冒頭部分が出てくる。
ペコを拝むとご利益があると思ってる住民の描写は面白いなと思う。
治安悪い南千住をボロクソに描写し、「お客さんに住人の方がいたらどうするんだ!」。
まあ、怒るような人はもとより来てないだろうが。
楽しい会でした。
「ひろげる鯉朝」(たまにまとめる鯉朝)の翌月には「ゆるいちもん」がある。
弟子ふたりも面白いからそっちも参加してみたいですね。