亀戸梅屋敷寄席40 その3(三遊亭兼矢「猫と金魚」)

萬次郎さんのマクラひとつ思い出した。あるいは地噺の脱線だったか?
好楽・好青年二人会があったので、勉強させていただいた。
好楽師匠のほうが早く楽屋入りしていた。これはいけない。
スウェーデン人の好青年アニさんに意見する。アニさん、師匠が優しいとはいえ、これはよくないんじゃないですか。
ごめんごめん。時差ボケしてて。
好楽師が好青年アニさんを弟子に採った理由は、「目の色が違っていたから」。

仲入り休憩後のクイツキは三遊亭兼矢さん。
仲入り前に出た萬次郎さんの芸風をいじる。彼、23なんですけど。
客から訂正が入る。そりゃそうだ。つい先ほど本人が24って言ってたんだもの。
24じゃない口調だと。

これは楽八さんも言ってた見解だが、萬次郎さんが老成しているとはまるで私は思わないけど?

それから、たぶんもう帰った楽八さんもいじりまくる。
モノマネして、冒頭の入りを揶揄する。
高いトーンで入ればいいのに、なぜか楽八さんは低いトーン(男前の声ということなんだろう)で入るので、冒頭がウケないんだと。

そしてついでに、次のヒザに出るぽん太アニさんもいじる。
あの人、気取ってますけど、グラビアアイドル大好きですからね。ネット上のグラビアをせっせと保存してる人ですからね。
ぽん太さん見たら、そういう人なんだと思ってください。

面白いじゃないか。
兼矢さんは、好楽一門にしては珍しく、少々ややこしい性格みたいだ。
ややこしい人なんて、好の助師以来かも。
今度真打になるらっ好さんが兼矢さんを高座で告発(ギャグだけど)してた覚えがある。
ややこしい性格を、どう高座にぶつけるかが腕の見せどころ。
二ツ目になってから、これがなかなかアジャストしなかったのかなと想像する。噺家たるもの、ややこしかろうが単純であろうが、自分の性格は知っておいたほうがいいと思う。

すごい入りですが、今日は70人。先日、好楽・兼好と揃った日は100人超えました。
今時点で亀戸は、都内で一番入っている寄席じゃないですか。
来月、また私出番がありますが、兼好はいません。
私の目を覚まさせないために、どうぞ来月もお越しください。

いじりと自虐の楽しい漫談から、猫と金魚へ。ねこきん。
本編に入って、いきなり雰囲気がガクンと落ちた気がする。なまじ漫談が楽しいと続けづらいわけだ。

旦那が番頭さんに言う。最近金魚鉢の金魚が減ってるんだ。
私は食べてませんよ。

この番頭さん、演者をスライドしたのか、いつに増してややこしい性格。
なぜか「食う」というワードに執着を見せる。
旦那の要請を「お隣に行って猫を食う」と理解したり、湯殿の上に金魚鉢を上げてくれという旦那の要請を「揚げるんですね。粉はなにを」と曲解したり。

本編の入りがガクンとしたところに「食う」ギャグの畳み掛けが入り、結構嫌な感じがした。
しかしそこからは見事。
番頭さんをとことん解剖しまくる。
のらくろの田河水泡が作った「猫と金魚」。現在でもなお画期的な噺である。
何しろこの番頭さんの造形は、他の落語には一切出てこない。
これをさらに、自力でいじりまくる。荒業だ。
これ、師匠と自分との関係をかなり反映させてるんだろうなと思った。もちろん知らないけど。
旦那が「あんな仕事のできないやつとは思わなかった」と数度嘆息してるのだが、これは師匠のセリフかな。

銭湯の煙突の上に金魚鉢を載せましょう、のあとがすごい。
旦那が、なんで望遠鏡で金魚鉢覗かないといけないんだ。
なら、煙突の最上部を切り取って、持ってまいりましょう。そうすれば、煙突の上にありながら、お部屋で金魚が楽しめます。
煙突いらないじゃないか。

古典化した新作落語であるからして、演出は固まっているのである。
これをさらにアレンジするとは、恐れ入る。しかもアレンジの方向が、噺に内在するやり方なのである。

金魚鉢を上に上げながら、金魚は放置。
床の上でぴちぴち元気に跳ねております。
旦那に、そりゃ苦しんでるんだよと当たり前のツッコミを受けると、旦那さまは先日、お腹を壊して苦しまれてましたが、ぴちぴち跳ねましたかと余計な反論。
旦那は、金魚が死んじゃうとやきもきしてるのだが、番頭は旦那の蔵書を当たり、エラ呼吸について調べている。

ようやっと金魚鉢と金魚を一緒に湯殿の上に上げるが、「水はどうしましょう」。

これはもう、完全なる番頭さんの噺。
猫と闘う寅さんはもう不要なのではないかと思った。
だが登場。ただしだいぶ刈り込んでいるのはうまい。
番頭はもう消えるので、寅さんと猫のシーンを短くすることでサゲまでスピーディにつながるのだ。

前座の頃は高い期待をしたが、二ツ目になってからはそれほどでも、と正直感じていた兼矢さん。
今回一気に評価を上げました。
自分を知る人は強い。

続きます。

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