スタジオフォー四の日寄席5 その2(桂やまと「熊の皮」)

親方はいたずらだと思って、とっちめてやろうと戸を開けるが、狸はすでに中にいる。
狸を見つけて驚く所作が最高。
クスグリたっぷりの噺にするつもりはないらしく、ふんどしのくだりもない。
「人間にしておくのがもったいない」もない。
日常の恩返しをこまごまさせてもらうと狸。
こまごまってなんだい。
お楽しみに。
そういって今日は寝てしまう。八畳敷きでなくて四畳半と、狸寝入りは入っていた。

子供に袋叩きにされ池に投げ込まれそうになったのは、狸に原因がある。
子供の遊びに混ざりたくて、仲間に入ろうとしたが化けてなかったんだって。
このスタイル自体は、まれに聴くのだ。
だが馬石師、仕掛けはこれだけではない。マクラの御殿対宮殿のあとに、ばくちに混ざろうとして化けるの忘れた小噺を入れている。
マクラと本編に同じ構造を入れるなんて、初めて聴いた。これが実に効果的なのだ。

どこまで馬石師が作ったのだろう?
前座噺をやる機会なんてそれほどないと思うのだけど。
久々に、「ラジオ焼き」に該当する落語を聴いた気がする。ラジオ焼きは、ルーティーンでたこ焼きを作ると見せかけて、中身がスジコンで違うものを作るという、でっち定吉の造語である。
古典落語なんだけども、中身を大部分自分で作ってしまう創作力の発露。
翌朝も親方、古ハガキのマジックを聞いて、うちにある古ハガキ全部1円札に替えて、それで帰れだって。

通力が戻っちゃいますよと言われ、ならお前が化けてくれと親方。
狸が、「早速そう来たか」と呆れつぶやいている。
1円札5枚には化けるためには家族を連れてこなきゃならないので、5円札に初めて化けてみる。
見てると化けにくいので目をつぶっててください。
いいじゃねえか見てたって。
見てると、親方消さなきゃいけません。
おおっ。

「おおっ」でくねるのが馬石節。
化ける際に、「目方軽くするのが難しい」が入っていた。
5円札に化けた狸(手ぬぐい)を、扇子の枕に乗せてやる。
このビジュアルが、まるで悪ふざけに感じない。
師はどうやら、大真面目に手ぬぐいの狸と会話をしているのだ。

狸は、落ち着いて化ければ化けそこなったりしないのだ。

借金取りは無事帰ってもらった。
面白いことに、一人になった親方、さ、飯にするかと。
狸が作ってくれた朝ごはん、まだ食べるチャンスがなかったらしいのだ。妙なリアリズム。

「狸の恩返しでした」と馬石師。
演芸図鑑で流して欲しい、素晴らしい前座噺でありました。

二番手は桂やまと師。
いいことがありましたよ! 私落語と俳優の二刀流でやってるんですが。
フジテレビの月曜9時のドラマ。いわゆる月9ですね。
現在、ブラックトリックという、GACKTさん主演のドラマをやっています。それに9月7日、私が出るんです。
公務員の役で。
前回のエンディングにも映ったんですよ。そうしたらさっそく仲間から反響がありました。
7日はセリフもありますからね。
私、着物着てるから噺家として見てもらえますけど、私服でメガネかけてますと本当に気付かれません。
知っているお客さんがすれ違っていくぐらいです。
そんな私も公務員ならそれらしいかなと思います。ぜひご覧ください。

GACKTの役が、弁護士と一級建築士の二刀流らしい。「二刀流」っていささか陳腐な言葉は使ってなかったと思うけど。

亭主関白の家なんて見たことない、どこもかかあ天下だと。
うちもそうです。
仕事があって外に出ていると、かみさんの機嫌がいいです。
我々の仕事は、頼まれていくものですからね。頼まれないとずっと家にいるわけで。
昔はかみさんもかわいかったですよ。
「わっ」なんて脅かしてみると、「いやだー、心臓止まるかと思ったじゃない」。
久しぶりにやってみました。「わっ」。
「この野郎、死んだらどうすんだ!」

最近、マクラのつまらない噺家さんがどうやったら出世できるかを考えている。
そのうちのひとつが「ウソ」。
やまと師みたいに、さりげないウソから始めたらいいんじゃないかと思うのです。

かかあ天下の噺、熊の皮。
最近は熊の皮と加賀の千代、やたら聴くようになった。
よく聴く噺だが、やまと師のものはどこも引っかからずに聴けるので、実にいい気持。

この少々乱暴なおかみさんは、結構いい女だと思う。そんな描写はないし、甚兵衛さんの立場からも描かれてないけれど。
決してガラッパチではない。割と品がいいが、甚兵衛さんを使いこなす能力は高い。
甚兵衛さんは、尻に敷かれた自分の境遇を100%受け入れてるっぽい。
「おい」「はい」の嘆きは入ってるけど、「尻に敷かれてるって誉め言葉だと思ってた」のはない。

先生の所に行ってからも、余計な説明はほぼない。
与太郎ほどではないけれど、やっぱりどこか芯の外れた甚兵衛さんが楽しく描かれ、先生も楽しんでいる。

続きます。

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