駒治師の「愛のソフィーナ」。
ドラッグストアのソフィーナで満足していた主人公であるが、専務に焚きつけられついに伊勢丹の1階コスメに行ってみるのだった。
専務と仲良く。
緊張するので、つい身を寄せ合ってしまう。
その様子を覗き見している妻と娘。
ぼくが使うんじゃないんです、妻へのプレゼントでと言うものの、コスメコーナーのお姉さんがたは先刻承知なのであった。
それにしても駒治師、とにかく語りが楽しい。
古典落語と隔絶された、強いトーンでまくしたてる落語がますます板についている。
この語りが聴けるなら、演目はなんだっていいやと思うところも正直あったりして。
ベースにあるのは、鉄道戦国絵巻で作ったお武家言葉なんだと思うのだが、それがまったく世界観の違う噺にも飛び出している。
この語りを活かし、再度古典落語もやって欲しいと思うのは私だけだろうか。
目黒のさんまなんかどうでしょうか。殿さまと家来どもの言葉使いに、駒治師の語りは大変よく似合うと思う。
駒治師は退路を断って古典を捨てた人のはずだが、その覚悟で作り上げた新作から、新たな古典が生まれると思うのだ。
トリは初音家左橋師。
この師匠も5年振りだ。ただし、四の日寄席ではなくて、末広亭のトリで聴いて以来。
コロナで、その数日後に寄席が閉まるというときだった。
最近は若い人にも独身が増えましたと。
噺家にも増えました。まあ、噺家の場合は生活苦で結婚できないんですが。
「三千世界のカラスを殺し、ぬしと朝寝がしてみたい」
を振る。これはもう、三枚起請。
珍しい廓噺である。
珍しいと言っても、珍品のイメージはまるでない。特に上方落語において、ある種のスタンダード感を持った噺である。
噺家さんの頭にも、共通認識としてありそうな噺。
とはいえ、現に東京の高座でもって聴いたことがない。まったく初めてだ。
古典落語って、こういう噺たまにありますよね。この謎のスタンダード感は、なかなかいいものだ。
当ブログ内を検索すると、「タイガー&ドラゴン」が出たり、「いただき論」が出たり、桂しん吉師の鉄道落語が出てきたりと、なかなか二次利用が多い演目。
寄席芸人伝にも、3人次々登場して相手をとっちめるという話があった。
上方落語だと、毎度おなじみ喜六と清八に、源兵衛が登場する。
喜六ではなく、もうちょっといいところの若旦那。アホではないが、ちょっとポーっとしてる。
源兵衛ではなく、大工の棟梁。
この人が独身だというのが、マクラからつながっている。
そこにお喋り清さんが登場して、全員集合。
若旦那が夜遊び日遊びなので意見してくれとおっ母さんに言われた棟梁。
しかし若旦那が起請文を出してきたので目の色が変わる。
上方落語と違って、起請文に抜けてる文字などはなく、ここで笑いは取らない。
起請文の名を見ると、喜瀬川。なに、喜瀬川。品川から吉原に移ってきたあの喜瀬川。
東京落語に移した際に名前が喜瀬川になったのだろう。
ご存じ、「お見立て」「五人廻し」に出てくるテキトーな花魁の名。
棟梁は、品川時代からの馴染みで、ねんが明けたら一緒になろうと言われつつ、1年ごとに延ばされ延ばされ。
だから独身でいるのだ。
さらに、妹の奉公先から前借りまでして喜瀬川に貢いだ清さんはかなりの被害者。
騙され3人組は復讐を誓う。
雌犬を追っかける三匹の雄犬など、上方落語のクスグリはない。
それに、喜瀬川が棟梁以外の2人をボロクソに言うのも、もう少しマイルド。
そういうところではなくて、左橋師の飄々とした演技がずっと楽しい。
それにしても、詐欺被害に遭うかわいそうな人たちは、どうしてこんなに面白いのだろう。
茶屋に呼び出され、土壇場に来てものらりくらりの喜瀬川。
しかし、3人勢揃いしたあとは大逆襲。
あたしの体にはどれだけのお金が掛かってると思ってるんだ!
この修羅場、どう料理したってこれ以上はもう楽しくならない。
そこを朝寝がしたいとサゲてしまうのは、粋だよなあ。サゲの効能というのは、現実に向き合わないという点にもある。
というわけで、5年振りの四の日寄席、前座噺から大ネタまで、楽しく終えました。
古今亭金原亭もいいよなあ。
現在木戸銭は2,500円だが、5回分1万円という回数券(無期限)があって、ずっと気にはなっている。
ひとりごとをつぶやく人がいても、たまには来ようと思っています。