豆やは、とにかく乱暴な噺。
オムニバス形式の噺でもって、一人だけ乱暴というのはある。小言幸兵衛やお化け長屋。
豆やは二人とも乱暴なので、救いがない。そして、逆襲もできない。
「バイオレンスにおびえる豆屋」まで楽しめるならば、実に楽しい噺。
私は久々に聴いて楽しめた。でも、楽しめなくても仕方ない噺だな、これは。
普段私は落語やコントに見られる「暴力」についてよく書いてる。だから、楽しめない客がいたとして、気持ちは全然わかる。
いきなり行商の豆やになれとおじさんに言われた男。
初めて売って出るのに、乱暴な長屋に迷い込む。
50銭で豆売るのに、乱暴な男は5銭にまけろとめちゃくちゃ。なにせ心張りかまして豆屋が逃げられないようにするのだからどうしようもない。
5銭しか出さないくせに、盛りが悪いとケチを付けられる。これはもう、ほぼ強盗であります。
ふたりめのおアニイさんは、たぶん最初の男の兄貴分か、親分。もっと怖い。
だが、値切りもしないし、豆の盛りにも文句は言わない。むしろ、削れと。
決して流行ることはなかろうが、こんな噺も落語世界の片隅にあっていいなと。
鯉橋師、途中で「鼻の高い、低い」を間違えてしまう。
「変な入れ事(枝太郎アニさん)すると間違えるな」
なにも失敗が一番面白かったというのではなく、リカバリーまで含めたうえで、非常に面白かった。
トリは桂枝太郎師。
なんだかもう、大入道みたいなビジュアル。
弟子の枝ぴょんさんは、師匠のビジュアル怖くないのでしょうか?
今日は楽生さんは不在でして、私がトリです。
1週間前に電話してきまして、「明日お願いします」。日にち間違えてまして。
いい加減な男ですよ。
この勉強会も、本当にいい加減でして。
本来は、日頃掛けてない噺とかやるべきなんでしょうが。
私もね、青菜やろうと思って、さらってきたんです。
寄席では取り合いになりますからね。昨年もやろうとして、結局できなかったんですよ。
でもね、豆腐の噺が出て、豆が出て、もう食べ物の噺いいかなと思いまして。
「青菜」の「ア」にアクセントがあってちょっと驚いた。
そういえば、「青菜」という単語は噺の中には出てこない。だから聴く機会もない。
東京の噺家さんがみな「ア」にアクセントを置いてるのかどうかまでは知らない。
私もね、若いころは体重30キロ少なくて。毛もフサフサで。
結構、出待ちなんかされたもんですよ。高いTシャツとかいただきました。
当時ね、まあ若い噺家が少なかったですから。今なら鯉斗くんとかいますけど、当時可龍さんと私ぐらいでした。
私ね、今日が誕生日なんです(拍手)。昔はいろいろもらえました。
母親から、3日前におめでとうってメールがありました。なんで3日前なんだろうと思ったら、間違えて覚えてるんですね。
あんた生んだんだろと思いましたが。電話して礼を言いました。
高校時代ね、髪の毛オキシドールで脱色してまして。
喧嘩に明け暮れた、なんてわけではないですけど高校もちゃんと行かなくて。親には心配かけました。
髪の毛脱色すると、後で髪が生えてこなくなったりして後悔するよと言われたもんです。今、してます。
親孝行したいですね。
笑点に出たらいいんですけど。難しいです。
反省から始まる親の愛情についての噺は、ラーメン屋だった。
私は、浅草の灯かなと。
ちなみに高座で芸人が喋ったことをよく書き残している私だが、枝太郎師の高座が一番覚えられない。
前回もそうだった。
だが今回は、ほぼ覚えております。
3日前に聴いた鶴光師のネタと、基本一緒だったから。その分、枝太郎師の演出の、ちょっとした違いもよく響いた。
続けて聴いて思ったのは、「ラーメン屋」は決して古くなっていないということ。古くしない工夫をも感じる。
これが芸協新作でも「ぜんざい公社」になると、テーマは普遍的でも古くなる。これは仕方ないのだ。公社がもうないもん。
無銭飲食の男が来る前に、外国人が来る。
ハマチとかイクラとか言われるので、「うちは寿司屋じゃない」。
おじいさん、違いますよ。値段訊いてるんですよ。
変なシーンだなと思ったら、これが後で活きる。枝太郎師、結構仕込みに命懸ける人。
あとから来る無銭飲食のアンちゃんは、ネジ工場をクビになったのだ。
外国人に、ハマチとかイクラとか言われたので違いますと言ったからなのだ。
枝太郎師、アンちゃんを、フラフラしてるその日暮らしの男にしたくなかったのだろう。なのでクビになる(かわいそうな)理由を探し、入れ込んだのだ。
いよいよクライマックス、アンちゃんから「お父さん」「お母さん」と言わせるくだりでも、なおギャグを緩めない。
泣かせる方向には持っていかない。それがかえって効果的なのは鶴光師と同じ。
泣かせようとしないからこそ、人の涙腺を緩める。
笑わせる人情噺というのは、枝太郎師には最適みたい。といっても笑わせるのもまた手段であり、目的ではない。
1人少なくても、2時間をたっぷり超えて満足の会でした。
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