スタジオフォー巣ごもり寄席11(中・三遊亭鳳月「転宅」)

続いて三遊亭鳳月さん。1年振り。
普通は演者が楽屋口まで向かってから次が出てくるのだが、この人はフライング気味に出てきて屏風のそばで交代する。

今日はひどく蒸しますねと振って、学校寄席の話。
この時季の体育館は大変ですよ。冷房ついてるところはほぼないです。
業務用のオレンジ色の羽根の扇風機、あれを4台高座に向けてくれます。風がすごくて、喋ってると頬がぷるぷるします。
そして喉が渇くでしょうからと、高座にお茶を出してくださいます。
高座にお茶を出すなんて、ベテラン師匠への扱いですよ。こうやって飲むからいいんですね。
やあ八っつぁん、よく来てくれたね。まあまあおあがり。(お茶をすする)みたいな。
私に出してくれるのは、ペットボトルです。伊右衛門とか綾鷹みたいな、ちょっといいやつを。
これと湯のみです。これじゃ、こうしなきゃいけないですからね。コポコポコポ。
なので結局飲まないです。
あとで先生がたにお茶要りませんでしたかと訊かれますけど、私には余計なことは、いえもん。

誰も拍手はしない。
うっすらスベッたのだが、ここからが鳳月さんの真骨頂。

私ね、こんな少ない巣ごもり寄席初めてですよ。
元々は女流の田辺凌天さんで、私に替わったんで少ないんでしょうけど。
あのね、落語好きの皆さんはおわかりでしょ。
女流の追っかけなんて人はね、真の落語好きじゃないですよ。

柳亭信楽さんみたいにムダに怒ってるわけではない。
自分でスベっておいて、来ないお客への責任転嫁に持っていくやり口が実に面白かった。
鳳月さんは、元漫才師なのに一切ギャグに走らない人。そんなスタイルなので、爆笑マクラというのは初めて聴いたかもしれない。
もともと噺が上手いので、これでもう無敵の人。
二ツ目さんが一皮むける瞬間に立ち会えるのは嬉しい。
仕掛けとしてスベりに行ったのなら、本当にすごい。

先ほど出た歌近さん、23だそうですけど。私46ですよ。なんとダブルスコアですよ。
それでも二ツ目という同じ身分です。
私あと、4年ぐらいやって真打ですよ。34で入門しましたからね。
歌近さんは真打になっても、40ぐらいでしょう(ママ)。私は真打になったらもう50ですよ。
ところが不思議なことに、圓楽一門会では別に格別目立つわけでもないんです。普通です。
うちはやたら高齢者が多いもので。
こないだ入った前座の心一なんて、43ですよ。真打になるときには還暦ですよ。
うちの団体は老人ホームみたいです。

学校寄席の話はどこかに消えてしまう。

我々のほうは話す、ですけど浪曲のほうではうなるといいますね。
それから浄瑠璃だと語るといいます。
そして泥棒には「小僧」が多いを振って転宅へ。
季節ものではないが、秋向きだろうか。

これが、落語協会で昨今聴くスタイルとはまるで異なる、オールドスタイルなので驚いた。
といって、古臭くなんかない。
いろいろ違う点。

  • 泥棒はいきなり飲み食いしたりしておらず、じっとしている
  • 「なんだとはなんだとはなんだ」はない
  • 泥棒、やたらと見栄を切る(あとでタバコ屋に散々いじられる)
  • 女は、見栄を切る泥棒に「音羽屋」
  • 女の名前はお菊ではなく、お梅
  • 泥棒は、旦那がカネを渡したことを知っているわけではないが、カネがあることを確信している
  • 泥棒の名は葵小僧、と一端言って、白状して訂正している(なんだったか)
  • 本名はデコ助(昔の音源でたまに聴く名前だ)
  • 旦那の後釜に、泥棒と結婚したいと言ってるのはお梅
  • 泥棒が立候補して即決。わかりやすく鼻の下を伸ばしている(これもタバコ屋にいじられる)
  • 飲み食いはしてなかった泥棒だが、お梅に勧められて初めて酒、そしてまぐろの刺身に口を付ける。ご機嫌
  • 明日三味線が鳴ってたらのくだりはない
  • 泥棒、町内一回りしてもまだ様子が変わらないので、タバコ屋に訊いてみる
  • タバコ屋は朝から6たび昨日の泥棒の話をしている
  • タバコ屋は、笑い転げない泥棒の正体に気づいたようである

飲み食いのシーンで、お梅が酒を注いでやる。なんと学校寄席のお茶のシーンが再現されてびっくり。
仕込んでいたのか? たまたまなのか。
女に有り金巻き上げられたり、平屋の2階に柔術とやっとうの先生がいるというのは入っていた。
少ない客は、「平屋ですから」ではまるで笑わないが(面白いけど)、泥棒が騙されつつあるシーンで先に笑っている。

鳳月さん、泥棒の心情を丁寧に描く。
クスグリに頼らず、しっかり語るこういう噺が得意な人。

いいデキでした。

続きます。

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