志う歌師、こみち師について。
言うだけ言ってもう帰っちゃったんですよ。聴いてくならまだいいですけどね。
今日は見習いのお弟子さん連れてて、帰っちゃいました。
そしたら廊下から、「聴いてるよ!」。
たぶん、下の事務局に寄ってから、袖に挨拶に再び現れたのだと思う。
せっかくですからウンコのエピソードをします。
小学生の頃の友達が、トイレに行く際、「自然が呼んでる」って言ってました。
大のときはなんなのと聞いたら、「大自然が呼んでる」。
あ、イマイチでしたね。もうひとつ。
前座のときに師匠のうちに行きます。行って、お礼状を300枚ほど書かされます。
私続けて遅刻したことがありまして。
10時まで行けばいいのに遅刻して、9時になりまして。また遅刻して8時、ついに7時に行くことになりました。
もうこうなると、寝ていられません。
私、トイレでこっそり寝ることにしました。
そしたらいきなりドアが開いて。そんなことする師匠じゃないんですけど。
私、ズボン履いたまま便器に腰かけて寝てたんです。
「何してるんだ!」
「ウンコです」
そんな話です。
キザで嫌味な志う歌師、正直あまり好きじゃない。もちろんキャラなのはわかってる。
ただウンコのエピソードでもって、そのキャラがほぼ払拭できた。
酢豆腐の半公が、糠味噌かきまぜされられるのを見てたようなもんか。半公実際には手を入れないから、たとえとしては正確じゃないけど。
これもこみち師の深慮遠謀かしら。
せっかくキャラが払拭できたのに本編「猿後家」が。
これはいい悪いではなくて、あくまでも好き嫌いなのだけども。
志う歌師、演技がリアルで、過剰に見えるのである。
喬太郎師みたいなコメディ演技は別にして、私は噺家に対し、芝居の演技は求めていないようだ。
猿後家のサゲ「ほんの猿知恵」は中間のエピソードに回し、そのぶん新たなサゲがついていた。
そして啖呵はない。
トリは久々にお見掛けする柳家一九師。
ネタ出しは猫定。
私この日の途中で勘違いに気づいた。「猫忠」(猫の忠信)を聴くつもりになっていた。
猫定ってなんだっけ。
どうせなら予備知識のないほうがむしろいいと思い、仲入り休憩時にあえて調べなかった。
もっとも、冒頭、魚屋とは名ばかりのばくち打ちが、家に猫を連れてきたあたりでもう仇討の噺と思い出した。
猫定、本編を聴いたかどうか記憶はない。だが少なくとも圓生の速記本では読んで知っている。
圓朝ものだ。
猫定の主人公、ばくち打ちは定吉というのだ。普通の落語に出てくる定吉とはずいぶん違うキャラだ。
一九師は自分のマクラは振らず、世間話のように、両国回向院の鼠小僧の墓について語る。
義賊鼠小僧を振り、みんなが墓のかけらを持っていってしまうことに触れる。
拝むのは泥棒だけではない。縁起物として合格祈願などに使う。
そしてその隣にある猫塚。
ばくち打ちの定吉が連れてきたのは、食べ残しには目もくれず、客に出そうとする魚ばかり狙う黒猫。
始末される前に連れてきた。
かみさんが猫を嫌がるので、定吉が自ら世話をする。
とはいえお前、かみさんにもハマってくれなきゃ。噺家の修業と一緒だぞ。
かみさんにハマらないと、しくじったときかばってもらえないぞ。
サイコロを出し、猫に説明する。この本物は、サイという動物の牙でできてるらしい。
天一地六東五西二南三北四、こんなことを猫に説明する。もちろん落語の客に説明してくれているのだ。
茶碗にサイコロ2個伏せて、俺の見たところ丁だ。
黒猫はにゃあと1回鳴く。開けてみると半だ。
もう1回やるとにゃあにゃあと鳴く。開けてみると丁。
「にゃご半の、にゃごにゃご丁か」というセリフは、いかにも落語らしくてかなり好き。
猫を連れていったらもう、連戦連勝。すっかり暮らし向きがよくなりまして。猫定の親分と呼ばれるように。
こんなのをゆったり語る一九師。たまらないです。
しかし定吉、稼業が稼業だけにしばらく江戸を離れないとならず。
その間に、かみさんは男を連れ込んでいる。
ここから一気にサスペンスホラーになるのだ。
最近亡くなった殺しの龍玉こと蜃気楼龍玉師も、やってたようだ。
博打に出かけるが、かみさんは遅くなられると嫌だから泊まってきなさいと。猫定親分、じゃ、そうするか。
しかし猫が鳴かないので、負けっぱなし。
采女が原でもって、ずっとツケてきたかみさんの間男に竹槍でぶすりとやられる。
それから、油を塗った包丁でざくっと。
ちなみに一九師、殺しのシーンはあっさり。
首尾よく始末したと思いきや、猫定親分の懐から出てきた猫が活躍。
私の記憶とこの先が違っていて、ずいぶんと長い。
葬儀の緊迫のシーンがまだまだ続くのである。
陰惨な場面だが、意外と笑いどころも多い。逃げる長屋の連中とか。
一九師の穏やかな語りは、ずっと楽しんで聴ける。
いや、いい噺を聴けました。
たまには黒門亭もいいものです。小さな腰掛けが導入されて、座るのも楽になってるし。