市遼さんの楽しいマクラ(怖い話)ひとつ思い出した。
アパートの下の部屋の住民との攻防。ネタ自体もまあまあ面白いのだが、ある種ひとごとな語り口がなにしろいい。
書いても伝わらないと思うので今日は書きません。書かないとすぐ忘れるけど。
いつも元気でパワフルな柳亭こみち師登場。将来は金魚先生みたいになりそう。
この日はこれから浅草演芸ホールだそうで。
まずは先に出て見事な高座を務めた市遼さんについて。
市遼さん、前座のときは本当に接点なかったんですよ。
優秀な前座さんは、余計なことを言わないんですね。昔から、無駄口叩く前座にろくな奴はいないって言われてまして。
いい前座さんは、「ありがとうございます」「申しわけございません」と、師匠方が上がる際の「ご苦労さまです」が言えればいいんです(※前座に必要なセリフはもう少しあった)。
だから市遼さんの顔は見てても話したことなくて。
先ほど楽屋で話したら、あ、人間だったんだなって。
二ツ目さんを褒めておいて、ここから怒涛の悪口ワールドへ。
お囃子さん、あの御簾の内にいますけど、今日は一番若い「うた」さんです。
楽屋で話してたんですよ。志う歌という顔がウンコみたいな男と。
うたさんってけがれを知らない感じよねってそうウンコ野郎に振ったら。
「知ってますよ」とか言うんですよ。そもそも、産休明けでしょ? ということは、けがれを知ってるじゃないですか。
そういうことじゃないよ。たとえばね、うたさんは万引きとかしなそうでしょ。
「しますよ」って、ウンコ野郎が。
ウンコを連呼するこみち師匠。
そういえば今年の拝鈍亭でも、一龍齋貞鏡先生のことを、「ウンコひり出すみたいに子供産む」って評していた。
いつもキザな志う歌師なら、やっつけて全然OKそうだけど。
饅頭怖いやちりとてちんの、嫌な男の評判の話し方。
しかし、こういう女性の先輩がいるから、一花さんも汚れていくんだななんて思う。面白いからいいけど。
先ほどね、お客さまが間違えて袖のほうに入ってこられたんですって。
そのお客さまがどなたか存じ上げませんが、イケメンでしたってうたさんが。
うたさんはイケメンセンサーをお持ちなんです。一瞬でイケメンがわかるんだなって。
私はイケメンセンサー全然ありません。
私の思うイケメンって言ったら、まず柳家小三治ですね。それから宮田昇です(客大ウケ)。
こみち師、歌と踊りと落語の会がまだ余ってるのでお願いしますと宣伝。
こう見えても、文京シビックセンター満席にしましたよ。移ったらこれです。
それから、秋に欧州公演に出かける。三三師と。
これは赤字なんだって。渡航費用と滞在費は、壮行公演で捻出するのだが、そのチケットがやたら余っているのでよろしくお願いしますとのこと。
帰国後、凱旋公演もあるが、それも余っている。しかも昼夜公演にされてしまった。1回でいいのに。
散々盛り上げて本編に。
未聴の擬古典落語。
演題は仲入り休憩時に調べたらすぐわかった。「蝉むすめ」とあったが、こみち師ご本人のXで「せみ娘」と書いて欲しいという要望も見つかったので、それにしました。
古典落語の演目だが「さじ加減」と「匙かげん」、両方の表記があるななんて思った。
これが「匙加減」「蝉娘」ではいささか情緒に欠けるわけだ。
江戸時代に実在した、インチキ妾奉公斡旋の噺。
妾を送り込むが、初日に寝小便をする。主人のほうも寝小便女をもらったなどと人に話せないから泣き寝入り。
女はすぐ戻ってくるので、次の妾奉公に送り出す。これで荒稼ぎ。
「小便くさい娘」という表現はこの史実から生まれたとこみち師。
小説では確か、白石一郎の包丁ざむらいにこのエピソードが出てきていたな。
池波正太郎にもなかったっけ。
しかし、マクラでうんこうんこ連呼していたのは、この小便の噺にスムーズにつなげるためだったのだろうか。
違う気もするけど。
兄妹と偽り、長屋で生活しているカップル。
男のほうが女を妾に出し、儲けるのだと。女はもちろん嫌なのだが、計略を聞いてその通り実行する。
しかし、ほとんどボケてしまったような隠居のところに奉公に出てから、すべてが変わりだす。寝小便作戦が通用しなくなったのだ。
そして、妾として来ているのにみな優しくて親切。
演題の蝉は、小便に引っ掛けてある。
男との関係性を終わらせ、このまま奉公先に居続けることを決意した女が男に語り出す、その際に鳴り物が入り、女の言い立てが始まる。
なるほど、お囃子さんに触れておく意味もあったのだ。
すべて計算ずく。
最後、ちょっとだけ不思議な世界と隣り合わせになるファンタジーさの加減もいい。
仲入り後、出てきた志う歌師は長めの坊主頭。
「出てきました私が、三遊亭うんこと申します」
ツカミ爆発。
先輩なんです。いろいろ小言をくださったこともありますし、アドバイスももらいました。
それにしてもね。
尊敬しています。
ちなみに、新たに弟弟子ができた話は聞けなかった。
まあ、こんなこと話さないだろうなとは思っていたが。
続きます。