昇進しなかった三遊亭歌実が一門内移籍して三遊亭歌ちどきに

数日前のニュース。
落語協会の二ツ目、三遊亭歌実さんが歌武蔵門下に移籍し、三遊亭歌ちどきになった。
歌ちどきさんの元の師匠は、パワハラ裁判の被告として有名な当代三遊亭圓歌。歌武蔵はその弟弟子である。

叔父筋への移籍。
これは師匠が亡くなって移籍を余儀なくされる場合だと、「兄弟子」に入門するのと並び非常に多いパターンの移籍。
もちろん亡くなってない場合は、異例中の異例だ。
そもそも落語協会の場合、一門内であろうがなかろうが、移籍自体レアなこと。
気軽によその弟子を採らないという申し合わせがあったからだ。
先日、「金原亭杏寿」さんが伯父筋の吉原朝馬門下となり、「吉原あさひ」となった。
これと同じパターンになる。

もっとも、杏寿さんの元師匠と比べたとき、大きな違いがある。
圓歌師は、一門の総帥なのである。
金原亭だと当代馬生師、あるいは五街道雲助師に匹敵するわけである。

どうも、会長が替わった落語協会に、なにか大きなうねりが生じている気がする。
悪い変化ではないと思う。
「師匠は弟子を煮るなり焼くなり好き放題していい」という価値観が許される時代ではないのだ。
そんな師匠の好き放題を放置していると、一門が破滅する。
ちなみに正蔵新会長は、圓歌師と同時期の真打昇進(年功序列ではなく真打昇進試験の結果)。

歌実さんは師匠のパワハラを理由に兄弟子天歌(現・吉原馬雀)と一緒に一門を移ろうと画策した。
だが、最終的に師匠の元に戻った。
兄弟子は師匠を訴えたが、この弟弟子は答弁書(裁判の勝ち負けには、まるで無意味)でもって、師匠の味方をしていた。
そりゃまあ、師弟関係にものをいわせた師匠に名前を使われた、それは明らかであるにせよ。
ともかくそんなわけで、歌実さんに向けられる世間の目は決して温かいものではなかったであろう。

歌ちどき、は力士であった師匠の元の名前。
新たな弟子は別に力士ではない。元警官。

ともかく、先日書いた記事の答え合わせをしないと。

落語協会2027年春の真打は「早すぎる」「3人だけ」そして「ひとりいない」

二ツ目の三遊亭歌実さんが、ひとりだけ昇進しない。
Yahoo!知恵袋におけるこの内容の質問への回答は、「まだ、真打にという評価ではないからですね。」だって。
いや、知恵袋なんて昔から適当なもんだけども。こんなデタラメ回答で「カテゴリマスター」だとは恐れ入る。
年功序列で昇進できる真打制度の中で、『この人だけ実力が足りないから真打にしない』なんてされた二ツ目が、一体いついたのさ。
芸協だが、春雨や風子さん(現・雲龍亭雨花)だって、こだわりの強すぎる師匠ひとりの差し金だし。

やかんの先生みたいな知恵袋のことはいいや。
歌実さんについては、間違いなく「なにか」はあったのだ。
最初に想像したのは、廃業予定かな、と。
小遊三師の弟子だった三遊亭遊里さんも、真打を目前に廃業している。
その後林家扇さんも。
これらの人と比べても、廃業する理由など、歌実さんにはずっといくらでもあるのではと。

次に想像したのが、師匠の踏み絵かなと。
今後一切裏切らないことを誓わせるため、昇進を1年遅らせるという。
そんなこと、実際にあるかと問われても困るけど。
裁判で明らかとなったあの師匠の言動からは、あっても驚きはしないが。

歌実さんは、真打になれないことが明らかとなっても、引き続き活動していた。
あ、廃業はないみたいだなと思っていた。
今月23日の新横浜コットン亭に名前を見つけ、行ってみようかと思っていた。
相方が私の好きな柳亭市若さんだったので。
歌実さんも、実力評価がしばらくできていないから。
ところが23日、コットン亭の公式によると、こう。

<7月コットン亭に出演を予定しておりました三遊亭歌実さんは、先方の諸事情により出演ができなくなりました。>

「先方の諸事情」が、このたびの移籍改名と関連しているのは明らかだ。
二ツ目の仕事は、自分の名前で取っているのである。
破門でもされない限り、通常は仕事がなくなったりはしない。
柳家小八師は二ツ目時代、師匠喜多八遺族との関係で会の出演がなくなっていたが、それと同じくらい異例。

コットン亭は結局、世話人の真打桂やまと師が出た。

林家扇兵衛さんの廃業の際は、スケジューリングされていた仕事が一気に消滅したので、「ああ破門されたのだな」と推測ができた。
いずれも、公式発表など一切ないので念のため。
さてこのたびの移籍だが、

「歌実さんが師匠に破門され、破門されたのち歌武蔵師が拾ってくれた」

事情はわからないし、時系列も明確にはならない。
だがこの流れが、最もスムーズに腑に落ちる。
天歌さんには口頭で破門を伝えていながら、いつまで経っても破門届を協会に出さなかった師匠の姿を思い起こすと、整合性は取りづらいが。
もちろん理論上は、「元の弟子が弟弟子に相談し、円満に移籍した」である可能性もある。
多くの落語好きが、そうであってほしいと思うのも、これ。
まあ、そもそも円満移籍だったら、真打昇進を差し止める必要なんかないのであるが。

しかし、火中の栗であるな。
歌武蔵師の立場からすると、元の師匠である兄弟子と決別する覚悟でもないと、拾うことなんてできないのでは。
現に、馬雀師はよその一門に移ったわけで。
まあこの構図だって、私が歌武蔵師が好きなのでそう思いたい、それだけだけど。

たぶん、歌実改メ歌ちどきさんは、再来年昇進するのでしょう。
ただ、来年昇進組がキャリア13年とずいぶん活動期間が短くなっているため、今後間が空く可能性はある。
それになにかしら襲名披露も入るだろう。その場合、真打の披露目はない。
昇進が2年遅れた場合、それがなんらかのペナルティなのか、ごく自然にそうなったのかは判別しづらくなる。
ペナルティというのは、なんら罪がなくても与えられることはある。
元兄弟子の馬雀師だって、半年昇進が遅れたのだから。

圓歌師はこれで弟子がひとりもいなくなった。
一門の総帥といっても、どこまで力が残っているのだろう。
とはいえ、(池袋だけは非常に少ないが)これからも寄席に出続けるのだろう。トリも取る。
協会を辞めでもしない限り。
私はこの人が顔付けされた寄席には行かない。

圓歌師、毎月寄席に出ているが、この7月は寄席で、さらに東京で出番がない。
なにかあった?
しかし東京かわら版を参照したら昨年もそうだった。
恒例のスケジュールらしい。

歌ちどきさんは、今後どこで聴けるだろう。
新横浜は、しくじってなくても何度も呼ばれることはない会だ。
神田連雀亭に参加していないこの人、どこかで一度聴かなくてはならない。
特に新作の腕がどんなものか、私はまるで知らないのだ。

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