スタジオフォー巣ごもり寄席10(下・春風亭一花「船徳」)

残り時間40分程度余して、本日の主役一花さん登場。秋に抜擢ひとり真打である。
以前からたまに見る花色の羽織。
先日、柳家花緑、桂吉弥両師が出たスクエア荏原の会では、自分の昇進の話もせず、そして本編は軽い軽い味噌豆だった。
その際の献身的な姿とは、まるで違う。
献身的な少女と、厚かましいおばさんぐらい違って見える。
で、厚かましいおばさんもいいなと、そう思ったのでした。しかも、これは自覚的な変化に思える。

客から声もいっぱい飛ぶが、とどめに後ろからかしめさんが声を掛けていった。
声の主、一花さんがそう言わなきゃわからなったところだが。

楽屋のスピーカーで聴いてましたけど…あ、あたし嫌な女ですね。
反省しました。
私ね、NHKのトップバッターのかしめさんに期待してたんですよ。めちゃくちゃにかき回して欲しいなって。
かしめさんは江戸落語家で初めて松竹所属になって。すごいですね。

今日はこのあとおまけがあります。披露目のチケット売らせていただきます。
ひとりですごい枚数売らないといけません。
理事の三三師匠に、「お前わかってんだろうな」って言われました。

このスタジオフォーはずっと出させていただいてまして。
「巣ごもり寄席」ですね。ちゃんと言えました。
席亭の西島さんはご存じですよね。ご夫婦でやられてまして。
西島さんご夫妻は非常に控えめな方なんですが、落語会を主催するような方の中ではこれは珍しいほうで。
押しの強い方も多いんです。
今日はいらしてませんが、先日出していただいた会の主催者さんなんですけど、強烈な方で。
私の独演会なんですけども、主催者さん、私の前に上がりたいっておっしゃるんです。
たまにこういうことはあります。素人落語もやってらっしゃるようで。
日頃の信頼関係がものを言います。私も、いきなり今回初めてて、唐突に頼まれたというのなら、OKしなかったと思います。
たとえば、西島ご夫妻が漫才やるとかおっしゃるなら、喜んで上がっていただくんです。
15分欲しいということだったんですけど、20分話していかれました。
お客さんはびっくりです。私の会にいらした皆さんなのに、知らない人が上がりまして。
そしてこの人の話したのは古典落語ではなくて、自分の自叙伝です。
ただ、日頃から喋っているかたは違いますね。ちゃんと聴けました。それで驚きました。
この方、自分の載った雑誌を楽屋に置いてくださって、そのページを開いてあるんです。
読めということかなと。読みました。
だいたい、高座で話したのと同じ内容でした。
でも、「好きな噺家」を訊かれて、「桂宮治」って答えてました。なんで私を呼んだんでしょう。

正直マクラの目的・効果はよくわかりませんでした。
最近では、素人落語家が主催の会に呼ばれた桂南楽さんが、告発のように喋っていて、これは面白かった。
あと、喬太郎師の「花筏」の脱線エピソードに出てくる痛い素人落語家とか。

でもまあ、正面切って、堂々と語るおばさん世間話風一花。悪くはない。
披露目で45席もやるとなると、マクラも仕入れなきゃいけないだろうから、大変だ。

本編は船徳。
冒頭オヤと思った。船宿の二階に居候の若旦那だから船徳と思ったけど、湯屋番が始まりそうな雰囲気。
つまり、船宿の主人が若旦那にどうするんですと声を掛けたところ、若旦那が奉公先を決めたと。
どこです。ここだよ。
ここから噺が広がる。

劇中脱線して話していたところによると、この噺覚えるために船こぎに行ったそうな。

熊ん八さんも「ちっとも知らなかった」もなく、若旦那の「徳と呼んでくれ」のくだりもない。
それでも十分長い噺である。
若旦那はテキトーな修業を済ませるが、船宿のほうもハナからちゃんと育てる気もないので、暇を持て余している。

私は船徳を、「災難を楽しむ」噺だと思っている。
小遊三師の、最後陸に上がるくだりの「水が冷てえ」こそ、まさにこの楽しみの発露だと思っている。
一花さんのはこういう作りではない。客にとっては、まったくの災難として描かれる(かわいそうではない)。
この噺は、甘ちゃんの楽しい若旦那を、落語の客が等身大の人間として楽しむ噺なのだ。
一花さんは若旦那をまったく突き放さない。とても目線が優しいのであった。
「がんばれ若旦那」という感想すら浮かびかけたりして。

ちなみについ最近配信(三三・一之輔二人会)で、兄弟子の船徳聴いたけど、正直うんざりした。
ギャグ多すぎでうんざりした、という事実でもって、一日書こうかと思ったぐらいだ。
でも、5年前までぐらいは私もあの芸風を楽しんでいたわけで、それを思うと今さら感はある。

一花さんのは出どころ違うかな。同じだったとしてもわからないだろうが。
唯一の女性登場人物である船宿のおかみさんは、やはり非常にいい。
若旦那がようやっと漕ぎ出した船を、手を合わせて拝んでいる。

陸に上がるお客に、若旦那がおぶさるのは、最近あまり聴かないかも。

終演後、今からチケット売りますのでと。
私も現金あったから買ってもいいなと。
ただ、落語協会のチケットは基本日付指定なのだった。そうだった。
なので残念ながらパス。
4場のあと、5日間ある国立演芸場寄席(すみだトリフォニーホール)に行きますよ。東京かわら版割引になぞ頼らず、ちゃんとネットで買う。

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