ダーク広和先生は、切られたロープが投げるとつながる大ネタ披露のあと、「寄席ですからね。ちゃんとつながるよりバラバラのままのロープが飛んでくほうがウケましたね」。
寄席というのは、色物さんにとっても本当に楽しそうな舞台である。
演者の楽しみの方向性が、客の求めるものと一致しているととても嬉しい。
私もそこそこの歳(66歳)ですけど、楽屋で最年少のときがあります。落語界恐るべしですだって。
花飛さんの兄弟子、勧之助師。一門では最も出世してる人。
寡黙な花飛さんの話をするが、この後散々エピソードが出てきたので上書きされてしまった。
軽く味噌豆。わざとらしいところのない、見事な一席。
わざとらしい噺だけに軽くやる腕が光る。
続いては口上要員の理事の出番。彦いち菊之丞の交互だが、この日だけ五明楼玉の輔師。
久々に聴くが、中身はいつもの二世落語家漫談。
テンプレ漫談だが安定の面白さ。ただ、披露目の口上と内容混ざっちゃうのだけど。
夜席だから、食べてからやってきた。
吉池の8階でパッタイ食べたら予想を上回るボリューム。それにビール1杯付けたので満腹。どこかで寝るなとは思っていた。
玉の輔師、漫談で終わりかと思ったら本編に入ったが、記憶なし。
新作かな?
気付いたら風藤松原の漫才だった。
わりと楽しみにしてたが、半分聴いてない。
もっともこの人たちのゆるゆる漫才、起きててもなにも内容覚えられないのだけど。
次の春風亭一朝師が圧巻だった。
歌舞伎座をやめて鈴本に来た私に、歌舞伎座育ちの一朝師が芝居を見せてくださる。
蛙茶番に芝居のシーンがあるわけじゃないけど、芝居小屋の空気が漂う。
演者の脳裏と肌に焼き付けられた芝居の世界は、時空を超えて落語の客に響くのかもしれない。
一朝師、弟子を次々育て上げる偉い人だが、もう現役のプレーヤーとしてはピークをとうに過ぎた印象でいた。
失礼だが、でも同じ感想の方もいるでしょう?
実際、お体悪くされてそれが高座に現れてたときもあったはず。
だが圧巻。74歳の一朝師、まだまだ行ける。お見かけして非常に嬉しくなった。
声も張るし、所作も大きい(そう錯覚する)。色気も漂い。
半公の「なにを!」のセリフがビンビン来る。
冒頭、番頭と定吉の場面を切り詰めて、半公呼んでこいから。
定吉はすでに来ない役者(若旦那)の代わりに蛙の役をやることを命じられている。これを歩きながら手短に語る。
定吉は行ったり来たりこき使われているから可哀想にも思うが、本人が一言「面白くなってきたね」、これで解決。
小間物屋のみいちゃん(決して登場しない落語のキャラ)を使った定吉の策謀に見事引っかかる半ちゃん。
「半ちゃん来るの来ないの? ファイナルアンサー」なんて入ってた。
まだこんなの入れるんだと思ったが、なんだか可愛らしい一朝師。
お釜を質に入れるくだりはない。下ネタ落語なのに、そのあたりは師の矜持なのだろうか?
緋縮緬のふんどしを湯屋に忘れ、むき出しで歩く半公。
スースーするんじゃないのか。
半ちゃんのお道具に「あれが八丁荒らしか。馬とぶつかったら馬がゴメンと謝ったっていう」というセリフは初めて聴いた。
好き。放映のあるときは自粛しているのかも。
下ネタ落語でも品がいい。
続いて新真打の師匠、花緑師。
口上と記憶が混ざってしまうのだが、花飛さんが寡黙すぎて、「え、そうだったの。弟子入りしてもう何年も経っているのに」というエピソードが多いとのこと。
玉の輔師の二世落語家マクラを引き、私も坊っちゃんですが、弟子もみな坊っちゃんですねと。
一般家庭で育った子たちだが、食えるかどうかもわからないのに落語をやってるのが坊っちゃんぽいって。
二階ぞめきに入る。
これが前半をばっさりカットしたもので。
番頭と若旦那の会話で始まるが、若旦那が冷やかし専門であることを番頭はもう知っている。ただ、大旦那が家にいろという。
そして2階に吉原がすでにできている。
寄席で便利な型だねと思ったら、演者だか登場人物だかわからない人のセリフが入る。
「短いね。蛙茶番が長かったからね。これは楽屋話だけど」
こういう型があるというより、作って出したみたい。
これまた圧巻の一席。
若旦那はひとりで2階の吉原にいる。これは描写されている、
そこへいきなり若い衆のセリフが入り、客引きの所作も入る。
落語の客は、ここでアレと思う。
しばらくやり取りした上で、「忙しいな。全部やらなきゃなんねえ」。
これでドッとウケる。
今度は女郎とケンカになるが、すでに落語の客はこれがひとりでやってる若旦那の落語だということがわかっている。
なので今後は、ウケるためには別の要素がいる。
仲裁が入って、お互いつかみ合う所作でバカウケ。
中手も飛ぶ。
寄席は楽しい。
続きます。