神田連雀亭ワンコイン寄席70(上・柳家小はだ「徳ちゃん」)

文京区デジタル商品券を使いに、2日連続で出かける。
この月曜もいい顔付け。来春の新真打、桂竹千代さんなど。
客は7人。

徳ちゃん 小はだ
令和が島にやってきた きよ彦
ぬ組 竹千代

 

林家きよ彦さんが前説。なぜか立って話す。
携帯電話はお切りください。先日そこ(前列)に座っていらした方が二度鳴らしまして。
二度目に鳴った際に私に向かって「ごめんね」とおっしゃいまして。噺忘れてしまいました。
あと録音はお断りなんですが、正直いいですよ録音しても。
ただし、目の前で露骨にアプリを操作するようなことはおやめください。

きよ彦さんはいつもこう言ってる。
スマホ鳴らしと録音の二重基準が面白いな。
スマホ鳴らしは万人の迷惑であり、録音はこっそりするなら個人の問題ということだろう。
もっとも録音というもの、やろうとすると現在、大体スマホアプリ。
スマホの電源切っていると、録音もできないという関係にはある。

トップバッターは柳家小はださん。
とぼけた顔の人で、亡くなった桂雀々師によく似ている。
アベレージの極めて高い大好きな二ツ目さんだが、聴く機会はそんなに多くはなくて、1年ぶり。
この日出した「徳ちゃん」には圧倒された。
こんなすごいのは、録音して再度聴き返したいななんて若干思わないでもない。しないけどね。
ただ口ごもる場面も二三あり。まだ覚えて間もないのではないだろうか。
こんな珍しめの演目をやろうというのがそもそも高センス。

昨日は駒沢大学(大学ではなく、地名のほう)でもって、お世話になっている会がありまして。前座の市遼さんを連れていきました。
小さな会は、会場への直接予約と、私のところにもそれぞれありますので、1週間前に付き合わせます。そこで、あんまり予約埋まってないなと思ったらお客さんに声掛けたりします。
今回会場に行ったら、オーナーが「なんで来たの?」。
今回は予約少ないから、やめようってメールしたじゃない…ごめん、下書きのまま送ってなかった。
会がないつもりで今から予定入れちゃって。悪いんだけど、鍵渡すから勝手にやってくれる?
この会はいろいろ料理が出るのが売り物なんですが、料理なしです。
私はビールつぐのもできません。
お客さんに謝り通しで。
前座の市遼さんにも立場ないですよ。いい顔したかったのに。
二ツ目で軌道に乗ってきて、前座さんも呼べるようになったところなのに。

地元に帰ってきて、いつものお店でグチをこぼしてましたら、カラオケ歌いなさいと。
カラオケ歌ってたら、よ、って知ってる顔が登場しまして。扇辰師匠でした。

困った会がある、というマクラは、きよ彦さんもトリの竹千代さんも引き継いでた。

御難に遭う、というのが廓噺の徳ちゃんにつながる。
これは我々の先輩、噺家の出てくる噺でして。吉原が明治に入ってすっかり寂れていた頃の噺です。

徳ちゃんとは珍しい。
さん喬師からは聴いたことがある。あと、白酒師もやるか。
廓というものは、落語ではだいたいにおいてパラダイス。だが、悪夢のような花魁が出てくる、実に貴重な噺。
小はださん柳家だからさん喬師からなのかと思うと、雰囲気が白酒師っぽい気がする。

売れない噺家二人が冷やかしに来ると、若い衆に呼び止められる。
若い衆は羽織姿を見て、すぐに噺家と見抜く。
そしてやたら口が悪く、売れない噺家さんたち、安くするから遊んでいらっしゃいと。
口の悪さに辟易しつつ、本当に安くしてくれたので登楼する二人。
徳ちゃんとは、口を利かないほうの噺家の名前。もっとも、サゲで喋らせてたけど。
サゲはオリジナルではないかと思う。

噺家の一人、徳ちゃんじゃないほうは2階の部屋に案内される。この部屋、なんと落書きだらけ。
耳なし芳一の間でございます。
落書きの一つが、五人廻しと同じ。「この部屋は牛と狐の化かしあい もうコンコン」。
このクスグリ大好き。

徳ちゃんは離れ。離れとは豪気だね。遠いのかい。
隣の建物との間に丸太を2本渡しまして。ここに畳を載せた部屋でございます。
こないだこの部屋でかっぽれ踊った方がいらっしゃいましてね。立ち上がったのがよくなかった。
畳が抜けて下に落ちまして。
みんなで上から吊り上げて助けようとしたんですが、なかなか思うように引っ掛からなくて。
あれがこの夏最大の思い出です。

花魁とは名ばかりの怪物が登場し、食われそうになる(比喩ですがね)。
もういいから帰ると言ってるのに、花魁は離してくれない。なので離れの徳ちゃんの部屋に逃げる。
よせばいいのに徳ちゃんたち上がっちゃって、二人して転落。
噺家だけに落ちるのが仕事でございます。

前半の若い衆の憎まれ口がやたら楽しかったが、綺麗に忘れてしまった。
またぜひどこかで聴きたい、ハイレベルな一席。

あとの2席は新作でした。

続きます。

 
 

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