神田連雀亭昼席11(下・桂蝶の治「うどん屋」)

しん華さんの元犬は、なんだかわからないが面白い。
というか、この人の噺はすべてなんだかわからないけど。

奉納手ぬぐいは罰当たりだからこの羽織を貸してあげる。着なさい。
羽織を脱いで、自分の体の周りをぐるぐる回す。これはシロが羽織かぶってぐるぐる回っている見立て。

「羽織の着方がわからない!」
「もう二ツ目だろ!」

なんのこっちゃ。
羽織を脱ぐと、女着物。
基本的にスピーディで、クスグリで笑わせる方法論ではない。意外だけど。

ちんちんとほいろだけでなく、「茶碗」に引っ掛けた「ワン!」も入っていた。
今朝がた人間になりました、のあと、まねき猫のごとく右手を曲げてサゲ。

最初の2席、ちょっとまとめて気になったことが。
幸朝さんは、留さんが「わかった。俺が行ってあげる」。
しん華さんは、上総屋さんが「わかった。世話してあげる」。
どっちも、「あげる」でなくて「やる」もんだと思うんだけども。
ずいぶん前からペットに餌を「あげる」どころか、植木に水を「あげる」になっている。世間はそれでいいとして、これは古典落語の世界だからねえ。

よく考えたらこの日のメンバーのうち3人は笑点特大号の若手大喜利に出演経験あり。
唯一ないのが桂小右治さん。たぶんなかったよね。
寄席で聴いた際はマクラ一切振らず本編に入ったりしていたが、実はマクラだって上手い。
昨日、落語界における「面白さの上達」について触れたが、小右治さんも、業界で揉まれて面白くなっていった人なのではないか。
雰囲気が柳家甚語楼師に似ている。フォルムも。

軽いハプニング。
マクラの最中、「座布団座りにくいですね。アッ」。
縫い目が客のほう向いてたのだ。
そういえばしん華さんが変な返し方してたような?

袖から「ごめんなさ〜い」というしん華さんの声。
気軽にこういうチョンボしてる人は、前の厳しい師匠とはそりゃやっていけなかろうななんて、しみじみ思った。

「どうして気づいたかと言いますと、座布団は人が座ってると跡がつくんですね。この跡が横になってますと拷問みたいで」

小右治さんのマクラは、つまらないネタを立て続けに披露するもの。
これはセンスが分かれるが、結構楽しい。
スベリウケを狙って本当にスベってる人、よくいるね。
小右治さんが失敗しないのは、変な欲がないからであろうか。
もっとも内容、聴いて一晩経ったらみな忘れた。

マクラの最後に言う。怪談は、意外と冬がいいんです。
寒い冬に怖い話を聞くと、体があったまるんですね。
中でも、2月18日は怪談の日で、一番いいそうで。

なにを勘違いしてるのか知らないが、21日だけどね。
日本一長い落語をやりますと。

民谷伊右衛門、といいますと四谷怪談と思われますでしょうが、その隣の隣の隣、4件隣の噺です。

のっぺらぼうという噺、初めてちゃんとしたものを聴いた気がする。
落語というジャンルだからといって無理に笑いを入れない、いわゆるのっぺらぼう怪談そのもの。
お武家に出向いて夜な夜な碁を打つ小間物屋さん。
赤坂見附の弁慶橋で娘さんの身投げを救うが、顔がのっぺらぼう。
屋台のそば屋に駆けこんだら、そば屋ものっぺらぼう。
うちに帰ると女房がのっぺらぼう。夢から醒めたらまたのっぺらぼう。

本当にこれだけなのだが、実に楽しい一席。
ちゃんと語り口にスリルがあり、そして無理に楽しませようなんていうのではないからだろう。

トリは桂蝶の治さん。
客席を隅々まで見回す。これはできない人もいる。
誰かに似てるなあと思ったら、表情含めてオリラジ藤森に似てるかも。

のっぺらぼうで盛り上がりましたね。元犬は盛り上がったのか、しん華ねえさんのキャラかよくわかりませんけど。
個性豊かな一門でして。しん華ねえさんと、伸べえアニさんが筆頭です。

今日は私は、こちらで一席やって千葉に向かいます。
おおぜいお越しいただきまして。12人です。
土日はお目当ての落語会に出かけるついでに、ワンコインに寄っていこうという方が多いですね。
なので昼席のお客さんは少ないです。今日は珍しいですね。
こないだ岡山に呼んでいただきましたけど、お客さん1人でした。

物売りの小噺(いわし屋と古着屋)から、道具屋のはばかり小噺、そして先日時間がなくて(好き勝手を喋っていた本人の問題である)中途半端になったうどん屋を掛ける。

うどん屋という噺に漂う人情はかけらもないな! キャラがキャラだし、決して文句じゃないけれど。
たびたび、こういう顔をするのがツボ。

そして、今日出た噺をいろいろ入れ込む離れ技。特にのっぺらぼう。
これは遊雀イズム。
酔っ払いは、それほどタチ悪くはない。偏屈でもない。
蜘蛛駕籠の酔っ払い程度で、ご機嫌。
そして、うどんは食わないが酒はちゃんと注文して金払ってるので、丸ごと災難というわけではない。
演出の目的はよくわからないけど、替り目の酔っ払いが後半でそんなに暴れないのと同じ、時代の要請かな。
でもうどん屋の場合、少々タチ悪いからこそ人情味がある気もするけれど。

集団で食べにくる奉公人はなくて、いきなり風邪ひいたおかみさんでサゲ。
楽しい土曜日。

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