渋谷らくご7 その2(林家きく麿「きく麿と圓太郎、新作と古典」※マクラです)

立川笑二さんの「つる」は、古典落語のパロディっぽく、そして擬古典落語っぽくもある。自分で作った一席。
持ち時間30分ある中で、20分のマクラと軽い一席の構成は、トップバッターとして最適であろう。
前座噺なのに覚えたのは新しいそうで、かつてネタ下ろしの機会に遭遇した。
そして、古典落語において名前だけ取り上げられる「小間物屋のみいちゃん」が実際に登場する画期的な話。たばこ屋のみいちゃんとしてだけど。
さらに画期的なのが、主人公八っつぁん。彼は、「面白い話をしたいのにまるでヘタ」という人物であること。なのでみいちゃんに振られた。
寄席に行って聴いた、ねずみの「チュウ」という小噺みたいに、面白い話がしたい。
なので隠居に相談しに来る。
隠居は、「面白い話」のサンプルとして、首長鳥がつるになったいわれを教えてくれる。

「面白い話をしたいのにできない人」として、大石晃子を連想した。
今回大惨敗を喫した理由としていろいろ言われているが、私が最重要だと考えている点は違う。
「おもろい話まるでできひんくせに、大阪のおばちゃんのおもろい空気感だけ出そうとしている」のが、お笑い教信者の大阪の有権者に蹴られたからだと思っている。
話がそれた。

みいちゃんの気を引きたい八っつぁん、つるのいわれを教えてもらってタバコ屋にまっしぐら。
みいちゃんを捕まえて、「オスの爆発した老人がつーとやってきて、メスの爆発した老人がやってきて、ると止まり、浜辺で見ていた老人も爆発してさ」。
みいちゃん大困惑。

白髪を爆発と間違えてしまうのはよくあるけど、このワード一発でここまで深掘りするとは。
再度隠居に教わりに行くが、稽古しないで駆け出していく。
隠居が去っていく八っつぁんに「この話、そんなに面白くないぞ」と言うメタ感が最高。

サゲは普通なのがかえって面白い。

続いて林家きく麿師。
小さなあいびきが出てくる。

笑二さん面白いですよね。
トライアルで6日間ですか、すごいですね。そこで合格すれば晴れて真打ですね。
ぼくらは落語協会で、数が多いんですよ。なので真打は待っていればなれます。
会長時代の鈴々舎馬風師匠と話したことがあります。

「俺は、抜擢真打は作らねえんだ」

なぜですかって聞いたんです。
努力するやつは売れるし、しないやつは売れないし。だからスタートで差をつけても。
みんな仲良くやってるのに、抜擢で関係悪くするようなことはないだろうと。
この人偉いなと思いました。まあ、もうすぐ死にますけど。
そのあと小三治会長になって、すぐ一之輔アニさんの抜擢が出ました。まあ、また今度一花さんも抜擢されますけど。

馬風師だけでなく、芸協の歌丸師も抜擢不要の考え方だったなあと。
抜擢真打も盛り上がっていいけれど、抜かされた人の心の傷が計り知れないのが。
そんなことで、抜擢を作らないという考え方も納得いく。

ぼくは新作作ってますけども、作った話はもっと広めたいですね。
なので新宿の社長に企画出しまして。古典の落語家さんたちにぼくの話をやってもらおうと。
上席でやってきました。小里ん師匠が歯ンデレラやってくださったり。
圓太郎師匠には、「あるあるデイホーム」を頼みました。
結構ウケてて、昨日も(黒門亭でネタ出し。土曜のシブラクでも出したみたい)ウケたそうですけど。
DVDを渡して、やってくださいとお願いしました。
圓太郎アニさんから電話がありまして。

「俺らはヘタだからさ、落語のときは演技を過剰に入れるんだよ。お前の落語、本当に演技が入ってないのな。だから覚えにくいよ! でもこれが本物の落語だな」

なんだか褒められたみたいです。
皆さんに覚えてやっていただいたので、お礼に福砂屋のカステラ差し上げました。いいほうのですよ。
また圓太郎師匠から電話がありまして。

「あのさ、中カステラだったじゃないか」

なんだろう、怒られるのかな。

「この季節さ、ザラメが下のほうに固まってるんだよ」

そんなのぼくに文句言わないで欲しいです。

「旨いんだよ! だから夜中にまるごと食っちゃったよ」

知らねーよ!

圓太郎師匠ちょっと面倒なので、サンキュータツオさんに言ったんです。

「できれば、圓太郎師匠と同じ日にしないでください」
「ああ、共演NGですね。わかりました」

いえ、そこまで強く嫌なわけじゃないんですけど。
でも、シブラクでは共演NG扱いらしいです。
こんなの内緒ですよ。

だけど思ったのは、古典落語の人はみなさん本当によく稽古しますね。実際の高座観たらよくわかりましたよ。
円丈師匠と話したことがあります。「白鳥・彦いち」の交互主任のときに代バネで新宿に入りまして。誰も残ってなかったんですけど圓丈師匠とふたりで飲みました。

「君は稽古するのかい?」
「ええ、しますよ」

本当は、古典の噺家さんほど熱心にはしません。でも、ある程度は喋ります。

「俺はしないんだよ。自分で作った話は稽古する必要ないだろ」

だから忘れるんじゃないかと思いましたけど。
円丈師匠、言うんです。

「新作は金にならないだろ。俺はもう、若い奴には新作やるなって言おうと思うんだ」
「そんなこと言わないでください。師匠は新作のパイオニアです。みんな師匠に憧れて新作やってるんですから!」

そうしたらすごく嬉しそうな顔してました。

圓太郎師は、今月少なくとも3回「あるあるデイホーム」をやったようだ。
相当気に入ったのかな。オリジナルも聴いてなくて、内容は知らない。
本来は土曜のシブラクを予定していて、来れば聴けたみたい。
でもまあ、圓太郎師の会へはよく行くので、いずれどこかで聴けると思う。

きく麿師の抑揚をつけない喋りこそ本当の落語という感覚は、わかる気がする。
花いち師もそう。
私は日頃、棒読み落語をよしとしている。この感覚にも近い。

上中下で終わりそうにないので、タイトルを「その2」にしました。

本編、「暴そば族」に続きます。

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