柳家小せん勉強会鐙の会(上・金明竹)

究極のエンターテインメント、総選挙が自民圧勝で終わりまして。
なにかネタを書こうかと思ったが、選挙そのものが面白すぎて、とてもかなわないなと。

選挙当日は黒門亭に行こうかと思ってやめ、月曜の阿佐ヶ谷に行こうかと思ってこれもやめ。
ようやく本日動き出します。
高円寺演芸まつりのひとつの扱いだが、とはいえ毎月やってる柳家小せん勉強会「鐙の会」へ。
小せん師匠は、昨年は聴かなかった。もっと聴きたいといつも思っている人だが、聴く量が足りない。
この日に出かけたので、祝日に予定していた横浜にぎわい座の上方落語の会はやめる。

鐙はあぶみ。かつて競馬好きだったからそれくらい知っている。
わか馬だった小せん師に掛けていることはわかる。

開場前に商店街をブラブラしていた。
純情商店街のとなり、庚申通りの居酒屋で、まったく同じ時間に柳家勧之助師の会があるのを発見した。
東京かわら版には出ていない。高円寺演芸まつりに含まれない会もやってるのか。

開場は高円寺スタジオ。初めてである。
予約はなぜか知らないが、ばばん場のサイトで取る。
寒いためか、まつりで分散したためか客は6人。
しかし少ない客の前で圧倒的な高座を聴かせていただいた。
特に2席目の八五郎出世(妾馬)ときたら。
いろんな人で聴く噺だが、最高傑作だと思った。ほんとに。

小粒 小じか
金明竹 小せん
八五郎出世 小せん

前座の上がりが流れて開口一番は弟子の小じかさん。チョンマゲ。

「開口一番で柳家小じけ…出囃子の調子が悪いということでしたが、私の口も調子悪いようです」

挨拶からやり直す。
私も前座あと1年くらいだと思います。
わか馬アニさんが昇進して、次は私というところです。
特に理由はないのですが、それまで髪を伸ばしています。
ある師匠が、私が一席終わったあと声を掛けてくださいました。
「伸びたねえ」
「ありがとうございます」
「いや、聴くたびに上手くなってるね」

落語のほうでした。

???
実際に交わされた話がどうであれ、小噺としては「ウデを褒められたと思ったら髪の毛だった」でないと成立しないのでは?

本編は珍しい、小粒。
昨年杏寿さんで聴いて以来だ。
背丈の小さい男が大家に教わって逆襲する噺。最後仁王様に願掛けして背を高くしてくれと。

悪くないけども、「加藤(清正)・福島(正則)」を「加藤・志村」とボケるくだりは嫌い。
そう教わっていたのだとしても。

小せん師登場。
茶の着物に黒紋付。

いや、寒いですね。私は寒いのが特に苦手です。
人間、生まれてから3か月程度の季節は得意なんですって。私は6月生まれですから夏は大丈夫なんですが。
今日も2席お付き合いいただきます。
1席目はおなじみの噺で。

愚かしいものを振る。まあ、金明竹だろうと。
小せん師の金明竹は大好きなので嬉しい。そもそも、私は金明竹の言い立てを覚えるにあたり、基準を小せん師(と馬石師)にしたのだ。
でも、現場で聴くのは初めてだと思う。
覚えた金明竹を目の前でやってもらうのは、稽古みたいで嬉しい。

小せん師の金明竹は、その優しい世界観がたまらない。
松公は失敗してもとにかくめげないし、自分の知性に自信を持っている。
おじさんは決してキレない。別に我慢しているのではなく、言いたいことは全部言っているのだけど。
おばさんも松ちゃんに呆れない。
猫を借りにくる相模屋さんなど近所の人も、足りない松っちゃんを温かく見守っているのかもしれない。ただ、そんな描写はなく、淡白なところがむしろいい。

松公はおじさんのことを、小言の国から小言を広めに来たと評する。
お前が言うなだけども、でもこのセリフで松公が共通の敵になるわけでもなく。
落語の客は、松公の立場でもなく、おじさんから松公を見るのでもなく、ふわふわしているところに立っている。これもたまらない。

時間があるのでフルバージョン。前半(骨皮)だけでも楽しい。
外で水をまいて、道行く人に水は掛けるが、二階で水をまくのは未遂に終わる。おじさんが止めたからだ。
松公がずっと笑顔なのもステキ。

松公が猫の断りをするのに、「紙は紙、猫に紙ないな、皮は皮」という流れも好き。
それにしても、松公が「おじさんの断り」をしてるのに、おじさんはやっぱり怒らない。
よく考えれば、すぐに讃岐屋さんに行けば全部取り返しがつくので、怒る必要なんかないのである。

声を立てて笑うようなところはないのだが、ずっと楽しい。たまらない。

そして言い立て。
もちろん、聴きながら一緒に脳内で唱えます。
全然違う言い立てもあるが、なにしろ覚えた元である。
どんな上手い噺家であっても、言い立ては毎回同じ。
小せん師だけじゃないか。毎回違うのは。

たとえば2回目は「加賀屋佐吉」を「知ってまっしゃろ」、さらに「タガヤサン」を強調してる。
3回目(おばさんには1回目)は恐ろしく早く、やや手抜き。
4回目は「風羅坊正筆」で、「風羅坊、芭蕉のことでっせ」と念を押している。
そして身振り手振りがすべてにつく。身振りで内容がわかるわけじゃないが。
そもそも、こんな金明竹をできる人は知らない。

続きます。

コメントする

失礼のないコメントでメールアドレスが本物なら承認しています。