神田連雀亭ワンコイン寄席71(下・桂蝶の治「伸治一門の秘密」※マクラです)

昨日「蝶の治」の蝶の字が一部「喋」になってました。昨日のうちに全部直したつもりでいたけれど。
ごめんなさい。まあ、お喋りではあるけれど。
ご本人も長いマクラの最後で語ってたが、もともと蝶花楼馬楽一門だったから蝶がつくのだ。
落語協会のはずだったのに、伸治に入門したのが運のツキだって。
師匠が亡くなっちゃったんだから仕方ない。

最初に、晴太アニさんの湯屋番をいじる。
今の「バンザーイ」という噺ですよと。
まあ、「バンダーイ」なんだけど。
晴太アニさんの芸風は落語協会です。芸協にはいません。
芸協で本格派の人は、みな移籍組です。
談幸師匠に、遊雀師匠です。

先日、姉弟子のしん華から、神田連雀亭の代演を頼まれました。体調不良だそうで。
電話が掛かってきたのが正午直前です。それで昼席に入れというんです。
仕方ありませんので行きました。私武蔵小金井ですけども、電車賃にはなるかなと。
お客さん3人でした。片道の電車代が出ませんでした。
その後しん華ねえさんに会いました。
こないだはごめんね。お客さん入った?
はいと答えておきました。
オチは特にありません。考えながら、オチを探してるんです。
師匠のやり方です。

うちの師匠伸治、宮治アニさんの披露目の口上、毎日話を変えるって宣言したんですね。
そして、つまらないんです。オチないので。
袖から見てて、宮治アニさんがわかりやすく引きつってました。

私のもったい付けた喋り方ははん治師匠に、声は馬石師匠に似ているといわれることがあります。
でもどうして落語協会っぽくないんでしょう。
芸風は寿輔師匠です。そしてやはり伸治一門ですから。

いいなあ伸治一門。
久々に伸治師匠が聴きたくなった。その緩さが、好楽一門によく似ている。
一門の中にひとりスターがいて、あといろいろ数が多い点もそっくり。
師匠の人柄と、高座の評価(いいほうも、悪いほうも)もよく似ている。

こんな話をするつもりじゃありませんでした。
もう残り13分ぐらいしかありません。うどん屋やるつもりで準備してきたのに。
そして、袖で録音してるんです。
台本見て中央線でぶつぶつつぶやいていたのに。
これが一門会だったら、平気で伸ばします。
でも彦三アニさんとはまだ接点がなくて、とてもそんなことできません。
正雀師匠のお弟子さんですし。
晴太アニさんが作った空気を、見事に壊してしまいました。
晴太アニさんの師匠、雷蔵師匠に知られたら、カミナリを落とされます。
今作ったんです。オチはしゃべりながら考えます。

昨日書いたとおり、私には爆笑。そしてつ離れしているお客さんの多数は笑っている。
でも、一定数ピクリともしない層がいて、少数派でも無視できない勢力である。
ま、嫌いな人の気持ちも全然わかる。

結局うどん屋に入る。
冒頭は、くず屋とはばかりの小噺。一瞬井戸の茶碗やるのかと思ってびっくりした。
10分強でできるはずないけど。

わりとちゃんとした酔っ払いが、ちょっとだけくだ巻くシーンまでやる。
婚礼の話には入れない。

「もう時間が来たのでできません。この先聴きたいかたは、チラシ入れましたけど自分の会でたぶん出しますのでぜひお越しください」

で、行きたくなったのである。
行くかも。

蝶の治さん、メクリを片手で返そうとして、うまくいかない。不器用な人だ。
何度も試すが、持ち上げた自分のメクリが、台の隙間をくぐらない。
ここで爆笑取るとは卑怯な人。
やっとこさめくって大きな拍手をもらう。そして。
袖に置いた自分のスマホを見せ、「ムダでしたよ!」

トリは、おそらく9年ぶりに遭遇する林家彦三さん。
前座(彦星)のデビュー時に続けて二度聴いて以来。落語協会で、これほどご無沙汰する人も珍しい。
蝶の治さんが破壊しつくした空間を、どうするかと。
ごく普通には、こんなことを語る。

「やりにくいですね!」

これで客と気持ちが一体になるのだ。
だが彦三さん、完全に無視する。何のワードもなく、自分の高座にする。
まあ、蝶の治さんは本当にいじりにくいんだと思う。

妾馬は通常、江戸時代の身分制度を振るところと思っていたが、別のなにかを振った。
聴いて1日経つと、蝶の治さんのインパクトが前面に出てきて、感想埋没気味になってしまった。
でも聴いてる最中、しっかりといい高座。
ごく普通で、いい高座。つまり本寸法。

実に上手い。
ヘタクソ前座であった時代を懐かしんだりして。
ただ、ただのヘタクソではなかったけど。
将来性のあるヘタクソ。もっともそれ以来、将来性のありそうなヘタクソ前座を見たことは一度もない。
先の蝶の治さんだって、前座のときはいい加減にしろと腹立てたので。

冒頭、ばくち場の与太郎はなし。
八っつあんも裸足でもない。
クスグリを刈り込みつつ、しっかり楽しい。編集達者だ。
大家の羽織のありかを知ってる八っつぁんも、深く追求しない。

「およとりを産んだよ」「親の因果が」
「井戸があるわ」「そこからなんか出るわ」
「ちょうろげと申すか」

とか、全部ない。全部ないのに、いい気持ち。
店賃高いだろうねぐらいはある。
笑いを放棄してるわけではなくて、しっかり楽しい。
三太夫さんも、四角四面ではあるが、それを強調しない。
かなり自分でこしらえたと思われる。

なかなか収穫のあった連雀亭でした。

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