柳家喬太郎独演会@秋川 その3(「花筏」)

花筏付属の漫談は実に長い。長くて楽しい。
喬太郎師は会場の客をよく見ているので、客の気持ちが逸れ気味なら瞬時に切り替える。
客が満足しきっていれば、「はい」などと締めてしまう。この日は使わなかったが「以上です」もある。
たまには怪獣談義のように、客を取り残して進める場合もあるが、それもまた伏線である。
そして今回新たに感じたことがある。

柳家喬太郎は、自分の語る話に退屈しない。常になにかしら挑んでいるからだ。そして、語りながら自分自身の精神のケアをしている。

あくまでも想像であるが、師は高座でこんなことを試みている。

  • 突然思いついた話を振り、最終的な目的につなげられるかというアドリブチャレンジ
  • 客にギリギリの線で悪態をつく試み(客が悪態を快に感じられるという縛りつき)
  • 「なんでも飽きずに楽しく語れる自分」を目指す。秘訣は、話を本当に楽しく語る方法論を多数用意すること

なので、師は高座で語る内容にまったく飽きないのだと思う。うっかりすると飽きてしまいかねないのだけど。
演者が飽き出すと、予定調和になって客も退屈してくるのだ。
演者自身が退屈しないというのは、実に大事な要素と思う。だから客も退屈しない。

スポーツ漫談は相撲に進む。本編が花筏なんだから、当たり前だけど。

落語界、相撲出身なんて人も数人いまして。床山ですとか。
私と一緒に落語教育委員会をやっている三遊亭歌武蔵というアニさんがいます。あと、目の奥が笑ってない三遊亭兼好という人と。
歌武蔵アニさんは元力士ですからね。
落語教育委員会では、毎年ツアーに行きます。
ここのホールみたいに大きなところじゃなくて、100人ぐらいでもお声が掛かれば行きますね。
8月だったら鹿児島と久留米とか。あと年によっていろいろ追加で入りますね。
一之輔とか宮治とかの超売れっ子ですと、全国ツアーで地方に行くなんていうのもカッコいいんですよ。アーティストっぽくていいじゃないですか。
でも落語教育委員会は、歌武蔵アニさんがかたくなに「巡業」って言いますね(場内爆笑)。
歌武蔵アニさんは痩せたそうですけど、今でも108kgだったか、そのぐらいあるそうで。
私も93kgあるんですけど。

今は大阪場所ですけど、東京の国技館で相撲があるとき、かなりの確率でテレビに同業者が映ってますね。
本当に土俵に近い、いい場所です。
林家ぺー先生なんて目立ちますよ。いつもピンクですからね。
よく映る人に、前の落語協会会長の柳亭市馬という人がいます。
いつも難しい、こんな顔をして映ってます。落語のときはそんな顔しないんですが。
今度市馬さんをテレビでみつけたら、変な動作をするかもしれません。
こんなふうにしてメールを確認してたら、それは私です。
LINEと言わないところがいいでしょ。

やはり相撲音痴なので、「砂被り」などの用語は出てこない。
以前は市馬師の話は通話だったのだが、メールに進化した喬太郎師。
でもガラケーだから、LINEはできないのだった。
ずいぶんとマクラを振って、ようやく花筏へ。

花筏は現場でも聴いたことがある(寄席のトリ)が、ずいぶんとまた軽さが進行していた気がする。
喬太郎師の古典落語、もちろん相当ハードなネタもあるのだけども、それ以外はどんどん軽くなっている気がする。
この例として思い出したのが、「紙入れ」や「錦の袈裟」など。これらの話は、非常に新作っぽくなってきているように感じる。
喬太郎師、古典と新作とがバリアフリーになってきている。歓迎です。

提灯屋さんは、極めて軽い。
そして、背景も描かれない。ただ毎日提灯を張っている人であり、家族のことも序盤では語られない。
病気療養中の花筏に代わる偽物として銚子の巡業に向かってからも、あまり描写されない。
ただ毎日、好きな相撲を観て大騒ぎ。飲んで食って寝るだけ。女遊びしたりはしない。
そしてあっという間に千秋楽。親方と提灯屋が会話をしていて、提灯屋が食欲もないことで、なにかがあったことが客にわかる。

軽い軽い花筏だが、今後も寄席のトリネタではあり続けるだろう。
というのは、楽しい脱線があるからだ。ベースがどんどん軽くなっているので、脱線の比重が増している。

偽花筏の提灯屋さんと、親方の会話もまた軽い。
転ぶ稽古などしない。
ただ同じ関係がパラレルで、地元のアマチュア力士千鳥ヶ浜と、その父親になる。
親方も、千鳥ヶ浜の父親も、顔芸を使って「(組み合ったら)死ぬ」。
あいにく私、上手に座ってたので顔芸はわからなかった。まあ、いいけど。
そして楽しい脱線。千鳥ヶ浜の父親が、喬太郎師になってしまう。

「地方に行くとさ、地元のアマチュア落語家をさ、前座に使ってくれなんて頼まれることがあるのさ。これが結構、上手いんだよな。間もよくってさ、結構ウケててさ。へえって感心してさ。あとで打ち上げのときに、その人が言うのさ。喬太郎さんのやってたあの話、ぼくもやるんですよ。ぼくのとは演出が違うなあ。(客、爆笑)。ほんとに言われたんだよ」

なんですか、それ。
心の叫びだ。

何度聴いても楽しい噺。
続きます。

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