東京の噺は大部分西から出たものですから、同じ会に出てもかぶります。
ただ「東の旅」は大阪から出てお伊勢参りして、北回りで戻るという地域性がありますので、それほど東京には来てませんね。宿屋仇…あ、宿屋の仇討ぐらいですか。
宿屋仇って東の旅だったの?
兵庫の若いもんが出てくるからシリーズ外と思ったけども、要はお伊勢参りする途中の噺はみんな東の旅らしい。
東の旅で珍しいところを、と軽業。
本来ハメモノが入りましてにぎやかな噺なんですが、今日はびっくりするぐらい静かになります。私が解説入れながら進めますので。
見世物小屋から。
二間のおおいたち(大板血)や、とったりみたり(シラミ)。
3軒目は、「エリマキトカゲ」。実は襟巻き巻いた、ハゲのおっさん。襟巻きとハゲ。
こんなもの古典落語にはもちろん出ないが、兄弟子の里光師がやっていたのを思い出した。時代的に師匠から来てるのだろうか。
「取ったらもぎ取り、替わろ替わろ!」
が各場面のジングルになっている、楽しい噺。
あと、「ずっと正面」がキラーワード。
東京では「一眼国」で聴ける場面。
そこからサーカスのような見世物、軽業へ。
扇子の上の指でもって曲芸を披露する。
ここんとこ、ずっと三味線が鳴ってますと解説入りの希光さん。
この噺、音源としては先代文枝のものをよく聴いたけども、ビジュアルで見たことはほとんどない。
実に興味深い。
高座を降りたあと、入場してきたナオユキ先生と、高座後ろで記念撮影をしている。
「あ、あとでやったほうがよかったんや」とつぶやくナオユキ。
改めていつものアコーディオン曲が鳴って、登場。
高座の前での立ち芸。「(前列のお客さんと)狭いな」。
よく考えたら、寄席以外で聴くのは初めてなのだった。
作法が結構違うので驚く。基本は一緒だが、演者の立ち位置がより複合的になる。
演者自身の一人称からスタート。キャラ自体は一緒だが、珍しいなと。
現在の芸が確立する前に上野広小路亭で聴いた際は、こんなやり方もあった気はするが。
大阪と東京行ったり来たりしてます。昨日繁昌亭出してもろたらね。
そんな声張る芸人やないからね、後ろのほうのおっちゃん、聞こえなかったんやろな。
こうですわ(ふざけた顔して、両耳に手を当てる)。
しゃあないから、ちょっと声張ったんですわ。そしたらこうしよったね(顔はそのまま、片耳に手を当てる)。
そない違うんやろか。
ここから、「子供の飛び出し注意の看板の横に妊婦さん」のネタから、しばらく子供時代のネタ。
そして街を自転車で流すネタ。
そして客席があったまったら、どうしようもないダメ酔っ払いへ。
人の一生が詰まっている。
その後も、ちょいちょいナオユキ本人が前面に出る。
途中で言い放つ。
「こんなんしてるけど、俺仕事やねん。好きなこと喋って帰るだけ。こんな仕事あったらええなと思ったら、あったわ」
「今日、結構新ネタ入っとったやろ? 結構頑張ってんねん」
「こないだこんなん喋ってたら、後でおっちゃんに言われてん。『あんたのネタの酔っ払いやけど、あれ、ほぼわしや。わしも若いころから飲んでは人に迷惑掛けとった。悪いなと思っててんけど、あんたのネタはおもろかった。わしも、人を楽しませとったんやな』。全力で否定したけどね」
「あ、(会場の人に)あと5分ぐらいええ? (前列の客に)なに勝手にOK出しとんねん。スタッフさんでも会場の人でもないくせに。後で俺と一緒に会場の人に謝ってもらおか」
「最近思うんやけど、終わりかたがわからん」
時計持ってかなかったのだが、40分近く喋っていたか。
既存のスタイルのネタも、本人が出てくることでやや変質するみたい。
例として、終盤間際に出した踏切のネタ。
踏切に「くぐってはいけません」の看板。隣のおっちゃんがそれ見て言うた。
「またぐのはええんやろか」
おまえは俺か!
いつも常識を裏返すことばかり考えている芸人が、日常でそんなおっちゃんに遭遇したという、変なリアルさ。
「野球知らん人が中継を聞いたら」ネタにこんなのよく表れてる。
「ランナー二塁を盗む勢いです」
アカン!
「ランナー殺されました」
アカンアカン!
「キャッチャーきょうけんですからね」
ええ?
だいたい野球なんて、キャッチャーの後ろがバックネットで、外野の後ろがバックスクリーンや。前はどっちやねん。
やはり作法が違うため、とっておきのネタがあった。
(酒場で)爺さんに話しかけられてん。
「俺、大リーガーやねん」
大リーガーやった、ならまだええねん。現役?
周りは俺がなんて返すか期待しとる。でもこれは大変や。とりあえず引き伸ばそ。
おっちゃん、どこ守ってんねん。
「ちきゅう」
まあ、これは寄席でもやりそう。
持ち時間が長いので、寄席のスタイルよりも、ネタが重層的。
同じネタを、角度を変えて語るのであるが、これがより顕著。
私は「ナオユキのフーガ」と呼んでいる。
「俺、明日からがんばろ」を、昨日バージョンと明日バージョンで突っ込み直すなど。
タイムマシンで行き来してる。
実に幸せな時間でありました。
高円寺はすごい。
ちなみに、ガード下に貼ってあった、改名前の噺家さんのメクリ。他にもまだまだありました。
