神田連雀亭ワンコイン寄席70(下・桂竹千代「ぬ組」落語会の痛い客についても)

林家きよ彦さんはいつもの挨拶。
最近は、田嶋陽子より大木凡人に似てると言われる。
師匠の影響で、バイク乗ったりキャンプしたり、あるいは格闘技を観戦したりと趣味が広がった。
兄弟子のやま彦は師匠が連れ出すことはないので、きよ彦さんが連れていかれるんだそうだ。
やま彦さんはいろいろ危険みたい。わかるけど。
身長148センチの、プロレス界の鈴々舎美馬みたいな人がいるんですが試合を先日見に行きました。
この人と知り合いなんですが、会場で会ったら、「あ、落語家さん」。
よく「林家さん」と呼ばれることがあるんですが、落語家さんです。

きよ彦さんも、地元札幌でのちょっと困った会のことなど話していた。
年寄り向きの会だと、日頃やらない古典落語を慌ててさらう。

最近この人からは「追っかけ家族」ばかり聴いていた。自信作だろうけど。
久々に違う作品。
離島に、本土から遅れてついに「令和」がやってくる。この島だけは特例で平成を認めてもらっていたのだ。
島にはいまだにアムラーがいたり、文化においては平成が保たれている。
令和を導入するにあたり、行政からの視察もやってくる。
スマートスピーカーやキャッシュレス決済など、令和にふさわしい文化が根付いているかどうか監視するのだ。
島民たち、一致団結してなんとか令和導入を乗り切る。

将来有望そうな噺。今度もウケた部分を伸ばして改良されていくのだろう。
ただ今のところはなんだかごちゃごちゃしてた印象。
平成らしさ、令和らしさとはなんなのか、結局人によりけりで。
でも落語としては「平成はこう」を打ち出して、あるあるの笑いにしなければならない。これが難しい。

トリは桂竹千代さん。
来春の真打が決まりましたと言って拍手をもらう。
つきましては、披露目のチケットを持っています。
寄席で買うと3,500円から4,000円ですが、私から買うとなんと3,000円です。
帰りに関所を設けます。買わないと帰れませんのでよろしくお願いします。

買ってもよかったな。ただ財布に千円札一枚しか入っていない。
チケット売ってるのは予想できたのだから、現金持ってくるんだったか。
PayPayの送金で売ってくれたら、買っちゃう。
披露目はいつも、誰のに行こうかと考えてるのだが、芸人さんから直接買ったことはまだない。
ちなみに本当に安いのは、新宿浅草池袋のあとの、国立演芸場寄席。これだと2,300円から東京かわら版で200円割引。

芸協の場合、「チケット買って、寄席に行かない」と、その分が噺家さん個人へのご祝儀になる。
そのつもりで買う人もいるだろう。

来春の芸協の真打は、他に音助(襲名で五郎)、喜太郎と気になる人がいる。
その前に落語協会の披露目もあるし、大変。
竹千代さんは、名前は変わらないみたい。

竹千代さんも、ひどい会の話。三重県にて。
地元でもないのに呼んでくれたからありがたい。でも、客は6人しかいない。
飲み屋の会。
しかも一人の女性は、後ろを向いている。要は、落語よりお酒が飲みたいのだ。
さすがに始まりますよと声を掛けるが、「気にしないで」。いや、気になるよ。
「私落語好きだから」。いや、絶対好きじゃないだろ。

この女性がお孫さんを連れていた。小学生の女の子。もう、この子をターゲットにするしかない。
桃太郎で楽しんでもらおう。
しかし他の客、歯のないジジイがヤジ将軍。つまんねえぞとかずっとヤジを入れる。
さすがに話を止めて釈明する。ぼくは今、こちらの子に楽しんでもらおうと思ってやってるんですよ。
でも、子供扱いされた女の子も不機嫌そう。
そして後ろを向いた女性の携帯が鳴る。もしもしと言って外に出て行った。
戻ってくると、孫娘を連れて退室。
あとで聞いたらスナックのママさんで、常連さんが来たので出勤したんだそうだ。

残されたのは、ヤジ将軍たち。
最悪だ。
しかし終わったあと、歯抜けジジイが5,000円祝儀くれた。祝儀より歯を入れるほうが大事そうだが。
祝儀くれれば神様だ。
つい先日、またこの会があった。また同じジジイが5,000円くれた。

というわけで、ひどい会ではなかった話。
歯抜け爺さんとはすっかり仲良くなりましたと。
ちなみに島根に呼ばれて行ったら客がゼロだったという話もチラっと。

竹千代さんが子供をターゲットにしたという桃太郎だが、これは子供騙しなんかではなく大変な傑作です。

珍しく新作落語で、「ぬ組」。
め組じゃなくてぬ組。まあ、ぬ組も実在したわけだけど。
江戸時代の噺なので流行りの擬古典落語かというと、そんな空気はゼロ。
古典の珍品かな、と思うことは一瞬もない。
江戸は火事が多く、焼け出されてもすぐ家を再建したという史実に基づいている。さすが日本史の専門家。
そして火消しの消化活動は、火元の隣家をぶっ壊すこと。延焼をとにかく防ぐため。

隣家の火事でぬ組に家をぶっ壊された人に、大工が見舞いに来る。
お安くしときます。また建てますよ。
しかし再建したら、また隣家から火が出て、ぶち壊される。

バカ落語ですな。
江戸時代、火付けは大罪で、磔であるなと思いながら聴いていた。
ちゃんとその疑問に対する解決が施してある。

竹千代さんは、古典・新作・古代史落語と柱を3本持っている。
今のところ、古典が一番面白い。
でも古典メインの人が多少新作を持っていると、非常にいい武器になると思う。

昇進までにもう1回ぐらい聴きに来るかもしれない。そのときはチケット買いましょう。

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