鈴本演芸場14 その1(春風亭一呂久「道灌」)

日月と文京区デジタル商品券を使いに出かけ、金曜もまた。
湯島天神の南側にサミットがあり、鈴本の帰りに寄れる。
大義名分があると出かけやすい。

11月は落語協会の寄席だけで3席め。
このところ寄席づいている。
今度は柳家喬太郎師の鈴本。この席は3年連続で来てますね。その初日。鈴本も今年4席め。
喬太郎だけでなく、落語協会オールスターズ(古典派限定)みたいなすごい番組。
喬太郎師も、古典縛りでしょう。

例年、12月は当ブログの訪問者が2割減となる。
今年は、いっそひと月休んじゃおうかななんて思ってます。落語にも行かず、仕事に励もうかと。
あ、M-1グランプリだけは毎年お客さん来るし、なんか書こうかな。

鈴本は、東京かわら版で500円引きがありがたい。
定価3,500円の15%還元だといえる。

開演前には着いたが、すでにほぼ満席。
通路側の隣にもぐずり込ませてもらう。

道灌 一呂久
たけのこ 小はだ
仙志郎・仙成
ガーコン 小次郎
目黒のさんま 市馬
ロケット団
箱入り つる子
ふぐ鍋 菊之丞
小梅
狸賽 扇遊
(仲入り)
八楽
法事の茶 三三
町内の若い衆 雲助
橘之助
品川心中 喬太郎

 

前座は「一呂久」とある。
春風亭一蔵師の一番弟子だ。初めて遭遇。
うん、声がでかい!
素晴らしい!
前座はそれでいいじゃないか。
一蔵師は、一朝イズムを継いできっといい師匠になるね。

といって声がでかいだけ、という前座ではない。
自分でセリフを作っている感じ。
ちなみに道灌だが、元は文蔵師かなと。
イエヤスだけでなく、最後女形でお恥ずかしいをやるので。ただ、決して乱暴な八っつぁんではないけど。

「カレーレエス」は、いったん勝手な絵解きを終えて、油断してると出てくる。

有名な太田道灌公だ。
有名な、大きな土管ですかい。
土管は有名じゃないだろ。
このやりとりは喬太郎師っぽい。

鷹野だよ。
新宿の先の。
そりゃ中野だよ。野掛けだ。
新宿の先の。
そりゃ野方だ。

中野はそこそこ聴くが、野方は初めて。ここも中野区だ。
全般的に、隠居は軽いツッコミしかしない。これがとてもいい感じ。
前座で、「一生懸命ツッコむ」勘違いした人っているよね。
教える側のセンスかとも思うのだが、現代では軽いツッコミがウケる。
教えてくれた人の悪いセンスを引き継ぐ人は、残念だがセンスない。
落語もいいが、この日出てたロケット団のツッコミを学んだほうがいい。

「そばの割り前返せ」付近だけ、妙に詳しくやってるのはやや不思議。

「お前が考えた勝手道具の都々逸か」は普通に語り、その後「都々逸なんていうところを見るとお前も歌道に暗えな」から、口調が変わる。
客の方に向き直って、きちんとサゲる。
実に楽しみな人。
それにしても最近の前座、下手な人のほうが珍しいぐらい。

番組トップバッターの二ツ目は、4日前に絶賛したばかりの柳家小はださん。
二ツ目さんは、外で聴くと素晴らしいのに、寄席五場だと借りてきた猫みたいな人もいる。そりゃまあ、役割というものがあるから仕方ない。
だが小はださん、役割を果たしつつしっかり個性を打ち出す。

今日は喬太郎師匠ですから満員ですが、二ツ目の披露目もあります。
次の次に小きち改め小次郎さん出ますから、大きな拍手で出迎えてください。さん喬師匠の末のお弟子さんです。
それでも足りない人はフッ(祝儀袋)、こんなことしていただいて。
私にしていただいてもいいんですよ。

池袋と違い、二ツ目披露の前に色物が入るので、先に断っておく。

旬の食材について。
なかでも竹かんむりに旬と書くのが筍です。
筍の噺は、「たけのこ」だけか。鈴ヶ森は筍の噺じゃなかろう。

これ可内、夕餉の膳はなんじゃ。
筍にてございます。
買い求めたのか。
いえ、隣家の筍が塀を越えてこちらに出て参ったもので。
けしからん。渇しても盗泉の水を飲まずと言うではないか。お主も武士の端くれであろう。

このあたりで後方から、虫の声みたいな変な着信音。
小はださん地に返り、「コオロギ?携帯鳴らしたかたは出ていただいて私のあとでお戻りください」。

鈴本はしつこいくらいに電源オフを呼びかけている寄席。そんなとこでも鳴らす人は鳴らす。
それはそうと、地に返らずにお武家さまのセリフで処理して欲しかった。

「なんじゃこのふざけた着信音は!貴様!そこへ直れ」
「旦那さま、仮にもお客さまでございます!」

まあ、これはやり過ぎか。でも成立すると思う。

ちょっと水を差されたが、このあと実にいい感じ。
お武家と隣家の老人との、大真面目なシャレのぶつけ合い、意地の張り合いに、可内も楽しくなってくるのがたまらない。
この噺は、固くやれる人でないとダメだ。固ければ固いほど、面白さが強烈。

さすが小はだ、という見事な一席。
軽い噺で、役割もきちんと果たしている。

続きます。