ロケット団は最高だった。
いつも寄席漫才の最高峰を見せてくれるが、とりわけこの日。
私がロケット団の唯一の弱点だと思っている、急なネタの切り替えがなかった。ここさえなければ本当に素晴らしい。
珍しく、時事ネタでない知らないネタもあった。
最近強化している自己紹介ネタから。
メガネを掛けているのが三浦で、一杯引っ掛けてるのが倉本。仕事中だよ。
大学を卒業しているのが三浦で、大学を中退してるのが倉本。それだけほんとじゃねえか。
面白いことに、ここで1回だけ否定をする。
そのためさらに冒頭の、「パキスタン」での否定を入れなくなっている。漫才はこうして舞台で進化していく。
ぼくはちゃんと大学出てるんですよ。信用してもらえないかもしれないですけど。
なので今日は卒業証書をちゃんと持ってきました。皆さんにご覧いただきます。
そしてジャケットの裾をまくって高速チラ見せ。
伊東、とか田久保、といったワードを一切使わないのが上手い。ついこないだまで使ってたわけで、今だと使わないほうが面白いのだ。
知らないネタは、二人のお子さんの話。
ツッコミ倉本の子供はもう高校生。
対してボケ三浦の子はまだ保育園。語らないけど再婚だから。
保育園で何してんの。
お歌を歌ったり、あとグチ聞いてもらったり。そりゃスナックだよ。
このあと次々保育園にスナックを被せていくのがたまらない。
麻生太郎のモノマネ(どこから出たんだっけ?)はバカウケ。
前座さんが、メクリをいったん「わん丈」にする。
幸いすぐ思い出したようで、その次にある「つる子」を。
抜擢コンビの交互である。
満面の笑顔で登場。
林家一門は、師匠以外に司令塔がいます。海老名香葉子という。
御年91です。
しつけの話から本編へ(だったかな)。
最近よく掛けているらしい、「箱入り」。
検索1位の記事があるのでご参照ください。
そういえば、「林家つる子 評判」でも謎の検索1位。
古典の芝居(ガーコンはさておき)なので、新作落語だが古典として出しているのではないか。
となると、交互のわん丈師の出しそうな演目も想像がつく。
演芸図鑑で聴いたものより、時間が長いので細部が充実していた。
お嬢さんは男三人の下の子なので、それは大事に大事に育てられた。
婚姻が決まったが、家事は何にもできないので行儀見習いに。
お嬢さん、たすき掛けに姉さんかぶりで気合十分。
だがたすきじゃなくてそれじゃ腰縄です。それに振袖というのは。
頭巾も結ぶ部分が鼻の下では、違う職業の人です。
お嬢さんにもしものことがあっちゃ一大事。だからあまり仕事をさせる気はない。
だがわずかな仕事でもって大混乱。
箱入り娘というか、コミュニケーション不全の噺。
自閉症スペクトラムの症状だ。
女版・猫と金魚。
噺の中の状況が最後自然に伏線として回収され、見事なサゲもついている。
人はいいのだがすっ飛んだお嬢さんに、ハイテンションのつる子師はぴったり。
素晴らしい噺を見つけたものだ。
ウケてました。
そして、噺にとっても、誰かが見つけて広めてくれるのは幸せなことだ。
よくできた新作落語がいつブレイクするか、それは誰にもわからない。
矢野誠一先生の「蕎麦の隠居」なんて見事な噺なのに最近まで埋もれてたのだ。
私も、いつか誰かがやってくれることを信じて新作書いてこうと思った。
古今亭菊之丞師は、またふぐ鍋。
さすがにちょっとがっかりしかけたのだが、今日は飽和点を突き抜けて、なんだかもうやたら楽しかった。
前回の浅草では、音楽として楽しんだ。今回は同じ噺でもアプローチが異なる。
お客さんがじわじわと、しかし確実に反応するのがいいのか。
今回は、旦那も幇間(そのものではなく、ヨイショ男。昔は職業幇間じゃなかったっけ)からも、強い食欲を感じた。
ふぐが美味いことは聞いて知っている。物珍しいだけではなく、本当にウマいらしいから、なんとか食べてみたい。
この強い気持ちがある。
食欲といのちの危険(多分大丈夫だろうとは思うものの)とを天秤に掛けて逡巡するなか、タイミングよくおこもさんがお余りもらいにくる。
この「しめた」の心理が伝わってきたではないか。
一旦安心したのちも、やはり口の中まで箸を持ってきて、飲み込めないふたり。
そのあと覚悟を決めて食したふぐの美味いこと! いや、ウマいよね間違いなく。
この日は筍、さんま、ふぐと食欲の噺が多かったですね。いいねえ、食欲の秋。
個人的には「二番煎じ」が食欲増進落語の最高峰です。
菊之丞師、マクラは噺家になってから食べた、焼肉ともんじゃ。
師匠のモノマネが入るのは同じだが、浅草よりもさらに細かくなっていた。
もんじゃなど食べたことのない中、焼いてくれたのはたい平アニさん。あの頃からパフォーマンスに長けたひとでした。
師匠圓菊もご機嫌で、「アンちゃん売れるね」。
そして大阪では鉄砲、長崎ではガンバ(棺桶)。これは以前も聴いた。
さらに「高知では名古屋城と言うそうです」。これは初めて。
なんでも、「美濃・尾張」。身の終わりなんですってと。
調べると、高知では「北枕」というそうで。これ、菊之丞師から聴いた気がするが。