鈴本演芸場11 その5(新真打・柳家花飛と林家木久彦)

ヒザ前は新真打の林家木久彦師。
落語協会の披露目で、口上に出る人以外の新真打が登場するスタイルは新鮮だ。
今後はこれで行くのだろう(3人真打だったらわからないが)。
浅草だけは、サブ真打は仲入りのひとつ前に出る。

あかね噺の監修で知られる木久彦師だが、神田連雀亭にも出ていなかったし私は初めて。
高座はZabu-1グランプリぐらいしか知らない。
下に二人いたのだが、結果的には最後の弟子である。
木久扇一門、結果的には真打になった弟子のほうが少ないのであった。これは単にwikipediaの記載が充実しただけのことかもしれないが。

この日の「つる」は軽快で達者なものだった。古典落語の上手い人なのだなと。
ただ本編よりも、花飛アニさんについてのマクラがそれはそれは面白くて。
人のポンコツぶりを茶化したり罵ったりして笑わせるのはごく普通。そうではなく、花飛師がいかに才気あふれる人か、そのエピソードで笑わせるというのは珍しい手法だし、笑いの質としても最上級のものではないか。
結果、花飛師だけではなく木久彦師への評価も爆上がり。幸せなことである。

花飛アニさんは楽屋入りが2週間違いで。一緒に修業してきました。
前座時代、この鈴本の昼席がハネてみんなで「温野菜」へ行きました。
着いたらまだ開いてなかったんですね。
そしたらアニさんがボソッと僕にだけに聞こえる声で「オフ野菜だね」。

これ自体面白いが、それよりも木久彦師は、この一言が自分にとっていかに面白かったかを語るのが上手い。
たまに伝え方が下手で、原典を勝手にスベらせてしまってる人いるよね。

それから立前座が、ミスド100円のときにお茶に連れてってくれました。そしたら前日で100円セール終わってまして。
そんなに値段変わらないから、別にいいじゃないですか。でもこの立前座のアニさん、「今日はやめよう」。
ケチですよね。誰とは言いませんが平和アニさんです。
その時花飛アニさんがまたボソッと、「元々ダメなんだよね。穴が空いてるからね」。

そしてなんとスマホを取り出し、花飛アニさんのおもしろポスト紹介。
紹介された全部は覚えてないが、面白かったのを。

  • 恋ぐらいでは溶けないゲレンデを作りたい
  • 大豆は畑の肉だと言うが、むしろ牛こそ牧場の大豆ではないか

こういう事物を裏返すセンス大好き。
花飛師の高座、今でもこの面白さの片鱗は現れているが、さらに一段階面白くなるに違いない。

ヒザの橘之助師匠は、男は寡黙なのがいいわよねえと新真打を持ち上げる。
楽屋はまあうるさいのよ。

アタシの師匠は三代目の圓歌っていうのよ。
これはいつもしてる話ではあるけど、エンカというワードだけで変な感じになるのは否めない。だから頭に三代目付けてるのだと思うけど、いろいろ大変。

たぬきをやってお目当てと交代。

柳家花飛師のトリ。今回は2日目である。
口上でもって、初日でなく2日目に髪を切ってきたというエピソードが話されていた。ちょっとズレてる男なんですと。
表情の固さについても。

その話を回収して、いろんなことを同時にできないんですとご本人。
以前も聴いた、大事な本をブックオフに売った話。
1万円する専門書が、300円。
その後気になって、店頭販売価格を確かめたら8,000円だった。
専門書って数学の本かな。

なんだか、花飛師の一言で後ろの楽屋からどっと笑い声が上がったのは面白かった。

さて、本編は鹿政談。また披露目にしては地味な噺だ。
地味だ地味だと言われつつ、ホントに地味な噺を出すのがこの人らしい。

で、この一席、残念ながらよかったとはとても言えない。
めでたい披露目なのに、すみませんが。
再度断っておくが、私はもともと花飛師のファンであり、日を選んで来ている。
この日に関しては他の高座が皆すばらしく、いい気分で帰れたのは幸いだった。

花飛師、高座の最中むせてしまい、しばらく咳が続く。これはまあ、生理現象だからいたし方ない。
だがそれと関係なく、ずいぶんつっかえていたもので。

ただ、どんな鹿政談をやりたいのかはわかった気がする。
お奉行さまが啖呵を切る噺である。斬新だ。
啖呵と言っても、遠山の金さんになってしまうわけではない。
お奉行がスラスラと、鹿の守役を追い詰めるセリフを語り切るだけで、高揚する。そういう、過去になかなかない鹿政談を。
私の脳内では、これは見事な完成品だった。そもそも、鹿政談という噺をそうアレンジするなんてひらめきはすごい。
次聴いたらきっと当たり。
とはいえ今日のところはなんとも。

豆腐のことを「おかべ」と言うとは、柳枝師から聴いて以来だ。
最後に踊りを見せる。袴姿での踊りは珍しい。

花飛師は昇進後も、らくごカフェの一門会で聴いていけると思う。

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作成者: でっち定吉

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