水曜日は二ツ目の会が多い。
梶原いろは亭ではかけ橋、いっ休。
スタジオフォーではごはんつぶ、鳳月、空治。
どちらも行きたかったが(時間は被っている)、結局木曜日のらくごカフェの会を予約する。
「三三と若手」。初めて参加。
平日昼間から人気の噺家が聴けるのだから、いいではないか。
当日券も出ている。そんなもんですか。
喬太郎師の席のように後ろまでいっぱい詰めているので、人気はもちろん高い。
二ツ目の会は千円。三三と若手は3,000円。
3,000円で腰は抜かさないが、今月は4,500円の会行ったから、合わせ技でいささかダメージ。
ただ、「三三と若手」はドリンク付きなのが嬉しいではないですか。
今回の若手は、小八、きよ彦。
きよ彦さんは朝の神田連雀亭ワンコインにも出番があるが、ついて回るのは嫌らしいから掛け持ちはやめた。
追っかけ家族 | きよ彦 |
高田馬場 | 小八 |
(仲入り) | |
黄金餅 | 三三 |
若手はそれぞれ30分。
三三師はたっぷり40分強。
聴き応えアリ。
トップバッターは林家きよ彦さん。
「名前はきよ彦ですがご覧の通りかわいい女の子です」で手を開いてぐるんと回すが、この際一緒に客も手を回したらダメかしら。㐂三郎市のVサインみたいに。
若手だし新作なので、マクラをたっぷり語らないと30分は埋まらない。
ほとんど聴いてるマクラなのは仕方ない。
田嶋陽子に神戸喜楽館のガルコレに、リバ剣(柳家小團治師に剣道の稽古つけてもらう)に、そして本編のフリであるアイドル握手会に駆り出された話に。
語り手がいつも楽しそうだし、そしてマクラのすべてに所作がついているから、ちょっと聴いたぐらい全然いい。
幸い、聴いてないネタもあった。
神社で子供たちに怪談やってくれと呼ばれたが、神主は本当に怖い噺(死神とか牡丹燈籠)をやって欲しがっていた。
だが新作派のきよ彦さん、そんな噺できないから、師匠の「熱血怪談部」を持っていく。怒られた。
それから札幌大丸に呼んでもらって喜んでいたら、高座が廊下だった。館内アナウンスががんがん流れている。
客のおばちゃんに、「いつもぽかぽか観てます」と言われた。そりゃ二葉ねえさんだ。
アイドル握手会のフリで、これは連雀亭で聴いた「追っかけ家族」であるとわかる。
カブった。
だが、マクラからすでに発揮されている豊富な所作をこれでもかと詰め込んだ、この人にしかできない画期的な噺である。
なにしろ、アイドル「フルーツバスケット」のいちごちゃんが、絶えず何かしらポーズを取っている。
また完成度がアップしていた。
前回気になったのが、握手会に迷い込むハメになる主人公を、しばらく男と勘違いしていたこと。
今回は最初から明確に女の先生として描かれていた。
そして、いちごちゃんと話をするためアルバムを買わされるくだりが、わかりやすく整理されていた。
これでNHK新人落語大賞獲れると思う。ホントに。
続いて柳家小八師。
先日シブラクでは唐茄子屋のいいところで寝てしまい、誓願寺店のおかみさんが助かったのかどうか不明のままである。すみません。
妻が弁財亭和泉と言いまして、落語会に二組しかいない噺家夫婦です。私達が第1号です。
とは言え女性の噺家さんは以前からいるので、噺家どうし付き合った方はいらしたようです。
破局した例もありますが。
私は、つまり責任感が強いんです。
私は師匠・喜多八の家には通いませんでした。落語界初の通信教育の弟子です。
その点家内はちゃんと修業してます。
私が出かけるときは玄関まで出て三つ指突きます。そして、「行ってまいります」。
2年生になるお嬢さんの話もあった。ごまかして来たが、もう親が噺家だとバレてる。
がまの油の口上が始まる。たっぷり長いバージョン。
長くても全然ダレないから立派。
口上終わってここは当然中手が入るところと思ったが、スッとセリフを続けてしまう。
柳家には中手嫌いの人が多いのは事実だが、がまの油で中手を嫌うのは初めて見た気がする。むしろ、演者が口上終えて一息付いてるのに客がシーンとしてたらいたたまれなくなりそう。
そして、噺はがまの油ではなかった。
老侍ががまの油売りに、その油は20年前の古傷にも効くのかと話しかける。
どんな傷でござるか。見せなければわからんのであればやむを得ない。
男の背中に、えぐられた傷が。刀を投げつけられた傷である。
ついに見つけた。がまの油売りの敵を。母に懸想し、父を殺して出奔したにっくき敵め。
ああ、これは高田馬場だ。
どんな噺か忘れていたが、やらせ敵討ちの噺。
柳家花緑師がやるはず。それで、弟子の珍品派圭花さんも持っているらしい
マクラで、噺家どうし付き合って別れた人を揶揄していたのに、その人から教わる?
しかし、謎は溶けた。登場人物の町人が、「楽しみだな」とつぶやくその口調が、完全に三三師のもの。
出どころは間違いなくここでしょう。教えてくれた人の前でやって、後でアドバイスをもらうのでしょうか。
明日もこの高田馬場から。続きます。