丁稚の反省(下・さらばトランプ)

今日の反省は、落語からちょっと離れます。

日本人も大騒ぎの米大統領選であったが、ようやくバイデン勝利確定で落ち着いた。
私は大いに反省していることがある。トランプに勝って欲しいと一瞬でも考えたことだ。
ジャパン・パッシングの古傷が痛む日本人の民主党アレルギーは意外と強い。
だがすべてが終わってみて思った。トランプ支持の日本人は、私も含めストックホルム症候群にとらわれていたのだ。

ストックホルム症候群は、監禁された犯罪被害者が、加害者に対して心理的なつながりを持ってしまうことである。
監禁被害者は、「自由になりたい」という究極の目的に目をつぶり、無意識に加害者に協力的な行動をとることがある。
もちろん本当は、加害者のことなど、好きなはずはない。
トランプ支持は、米本国の狂信的な信者を除けば、だいたいこれから来ているように思った。
バイデンが逆転(見かけだけど)していくにつれ、本当はトランプなどとんでもないという、本来普通の感想を思い出していった私。
トランプ大統領が続く限り、世の中は悪いまま。そう考えるのが嫌なので、ひどい状況を先んじて積極的に受け入れていたのである。
結果として、米国人が4年前に抱いたトランプアレルギーは、ますます大きくなっていた。米国情報通の書く、トランプ優勢の記事を鵜呑みにしていたことを非常に反省している。
またこれらの見解は、「今度はバイデンで当たり前」といういかにもな見解の逆張りでもあり、当たるとでかいのだ。

日本人の間に、不正投票疑惑が持ち上がっていたのを見て、私のごく薄いトランプ支持は一気に冷めてしまった。
芸人・ほんこんなど、なんだありゃ。もともと芸人としては好きなほうの人だったのであるが、グレタにまで喧嘩を売っているのを見て、非常に幻滅させられた。
思考パターンが、陰謀論を唱える左翼文化人と変わらない。

日本では、大阪の都構想に伴う住民投票があった。
賛成多数の結果を予想し、期待もしていた。左翼政治家と文化人の様子を見ていてそう確信したのだが。
しかし結果を振り返ると、結局日本のトランプ・橋下徹の寿命と蓄えがついに切れたということなのだと思う。
都構想に反対した左の人たちが、それほど得意げでいないのは幸いだ。次を見据えたときに懸命な態度だとも。
自民党と創価学会、それから共闘しない山本太郎が全体を左右した事実に、目をつぶれない理由はあるにしても。

私は常に、世の多数派がどこに位置しているのかをまずウォッチし、把握することにしている。
さてそんな中、「多数派」の見解に驚愕しているニュースがある。
DHC会長のコリアン差別である。
こんなもの、普段の立ち位置が右でも左でも関係ない。社会通念、マナー上において「とんでもない」以外の感想なんてあり得るのか。
テレビ局は、当然にDHCにスポンサーを降りてもらわないとならない。

そう思っていたら、ヤフーのコメントは、DHCに賛同の嵐である。
ちょっとすごいショック。
私は世間の標準を知るために、よくヤフーコメントを読んでいる。
左の人が「ネットはネトウヨばかりだ」と吐き捨てることがあるが、公平な場所を、右だけが占拠しているなんて事実はない。

だが、このニュースに関しては、ヘイターが標準になってしまった。
日韓関係に絡めて、やられたらやり返せ的な意見が実に多い。ヘイト正当化の理由付けになり得ないのに。
まあ、確かに「ちょっと眉をひそめる」程度の人は書き込まず、過激な言動の人間が積極的に投稿して、それを世間のムーヴメントに見せかけていくのはちょくちょく見るところだが、それにしても。

だがヘイターたちの極端な行動から逆に、政治の枠組みに転換期が生じ掛けていることにも気づく。
さすがに日本において、ヘイトが真の多数派になったりはしないはず。つまり、ヘイターたちの乗った基盤が崩れ落ちるところなのだ。
世間標準がこれからゆっくり、リベラルに揺り戻されていく、その渦中に今はあるのかもしれない
菅内閣の支持率低下も、トランプ的なものへの嫌悪がある。携帯電話やNHKに対して強権を振るう姿に、即物的な利益は得ても感謝はしないという。
私のもともと持っている、左の感性も働かせていこうと思った次第。
だからって、談四楼や雲水を急に支持したりはしないけど。

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作成者: でっち定吉

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