東京の落語団体の再編を夢想する

東京かわら版1月号の巻頭特集は、柳亭市馬・春風亭昇太という、両協会の会長対談。
実に面白かった。

コロナ禍の寄席休業を決断する際、両会長が綿密に話し合いを続けていたことが語られている。
落語協会と芸術協会とは、別に対立しているわけではない。だから緊急事態における寄席運営につき、横並びにするため話し合いの場があるのは、意外でもなんでもない。
だが落語好きの想像以上に、トップ同士のつながりがスムーズなのを確認した。
落語協会の市馬会長は、入門前は芸協ファンだっという。

ならばいっそ一緒になっちゃえばいいと思うのだが、両会長ともその気はないと対談の最後に語る。
違う文化があるからいいのだと両師。
先日、三遊亭円楽師の「東京落語協会」実現への野望を書いたところだ。東京にとどまらず、上方も含めた落語の団体一本化を願う人もいる。
だが、円楽師の思いと両会長の現実的な視点とでは、だいぶ温度差を感じるものだ。
まあ、新宿末広亭をはじめとする席亭にとっても、業界の再編の意味するところはせいぜい「円楽党と立川流を芸協に吸収させる」ぐらいのことではある。当然と言えば当然。
今後も別々にやるという意思が明確ということは、両協会のトップにおける合併の話し合いはされないということだ。
やや残念でもあり。協会員の利益を守らなければならない以上当然だとも思い。

落語協会と芸協とは、交互に寄席の興行を受けている。かつて芸協が喧嘩して出ていった鈴本は別だが。
交互に寄席を興行することのよさは、私ももちろん理解している。
一時期席亭から客が少ないと苦情を言われた芸協の寄席も、最近は安定してきたのではないか。
コロナ禍の昨今はもちろん別。ナイツによると池袋演芸場の初席も少なかったそうで。
寄席が安定しているなら、両協会の組織まで一緒にならなくてもいい。とはいえもうちょっと寄席の興行が、混合メンバーでできればなあと思うことも多い。
正月の国立演芸場初席は、新春国立名人会。完全に所属が入り混じって開かれる寄席の興行というと、これぐらいか。寄席の定席でなく、あくまでも国立名人会だという建前でやるようだけど。
上野広小路亭の「しのばず寄席」も各派混合なのだが、落語協会は顔付けされない。講談協会とか、東京演芸協会とかの人が出る。
円楽党の両国寄席も他の団体所属者が出るのだが、いきなり顔付けされるわけではなく、一門単位、または紹介でメンバーになってからだ。

集客力の強い噺家については現状でもいいのだが、その下のレベルで一緒の顔付けがもっとあったらいいのになと思うことが多い。
寄席というところは、下支えするメンバーがいて成り立つ。
そんなメンバーを集めたら楽しいですよという例を、初夢妄想で作ってみた。

前座
三遊亭らっ好 (円楽党・二ツ目)
できたくん (芸術協会・色物)
春風亭弁橋 (芸術協会・二ツ目)
立川談吉 (立川流・二ツ目)
ニックス (落語協会・色物)
春風亭一花 (落語協会・二ツ目)
立川志遊 (立川流・真打)
(仲入り)
小泉ポロン (芸術協会・色物)
三遊亭鳳志 (円楽党・真打)
蜃気楼龍玉 (落語協会・真打)
林家あずみ (落語協会・色物)
瀧川鯉橋 (芸術協会・真打)

なかなかいいデキだと思う。通常の寄席の定席よりも二ツ目を意図的に増やし、真打も若手に寄せてみた。
一流のレベルの下の人は、決してつまらない芸人ではない。本当にひどい芸人はカットして、その上のレベルで見事な番組になる。
落語会では、超一流のメンバーを選りすぐって番組を作る。だが、そこまで行かない人でも寄席なら格好が付くという証明にしたい。
必ずしも私の聴きたい人だけを集めたのではなく、世間の評価もちゃんと交えている。

こういう番組、夏の国立あたりで作れませんでしょうか。
まあ、実際に作ってみたら、「この人が出るなら行きたくない」になりそうな気もしたりするのだが。

作成者: でっち定吉

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