東京では、そもそも(売れっ子でも)事務所に所属していない噺家が多い。一昨日結婚報告をした春風亭昇太師だってそう。
おかみさんがマネジメントをしていたりする。
春風亭一之輔師も、プロフェッショナル仕事の流儀で、マネージャーに払うぐらいなら自分でもらうと言っていた。
だから、いわば全部直営業。仮にそこに反社がいたらどうするどうなる?
昔はまあ、芸事らしく、落語界も裏社会との付き合いは普通だったのでしょう。
ある有名な噺家は、かつて盃をもらったそうだから。
先代正蔵も、浅草の山春との付き合いが有名。タブーでも何でもなく、自伝にも書いてある。
後輩の小三治が5代目小さんになってしまい、ヤクザの山春が異を唱えに、先代桂文楽のところにやって来たという。
その代わりに、海老名家から半ば強引に林家正蔵を借り受けたのだと。
昭和元禄落語心中にもヤクザが出てくるが、こうした古い時代を念頭に置いてのこと。
反社の問題はさておき、東京の噺家は自分で仕事を獲ってくるのが普通。
条件が合わなければ、低いランクの後輩に回す。
協会を問わないこうした互助によって、現在の落語界、二ツ目でも落語だけで食えるようになっている。
東京の落語会だけ見ていると、どこに事務所の必要性があるのかと思ってしまう。
先の鶴光門下の6人など、劇場があるわけでなし、松竹芸能に所属するメリットを感じているのだろうか?
「新宿角座」という松竹の小屋はあるが、別にそちらで絶えず落語があるわけでなし。
確かに、直営業によるひどい仕事はあるようだ。だが、ひどい仕事はみんなでブロックすればいい。団結すれば、ひどい客は落語会を開くことはできない。
落語以外の芸人だと、抜け駆けてやれという発想が抜けないだろう。
東京にも吉本興業所属の芸人はたくさんいる。
だから吉本に所属する噺家もいていいのだが、必要性すらないようだ。
落語の寄席に出る色物さんまで広げても、唯一吉本所属であることを私が知っているのは、夫婦でやってる「おしどり」だけ。
原発反対で売り出した奥さん(マコ)のほうは参院選出るらしいが。
東京ではそもそも事務所に所属すらしない噺家が多い中、わずかながら大手芸能事務所に入っている人もいる。
林家彦いち師は、「オフィス・トゥー・ワン」。このおかげで、久米宏のラジオに出られるわけだ。
ナイツのちゃきちゃき大放送のあとチャンネル変えてしまうので、大ファンの彦いち師、ラジオで聴いたことがない。
ご存じ大人気の小メンテーター、立川志らく師はワタナベエンターテインメント。
ここには春風亭昇吉さんも所属している。
春風亭昇々さんはホリプロ。TV、ラジオの需要が多いから成功なのだろう。
落語系の事務所というものもあるにはある。
「オフィスまめかな」は落語ファンならたまに名前を聴くだろう。三遊亭円楽師などが所属する事務所である。
私の好きな竜楽師など円楽党の人が多いが、落語協会の古今亭菊志んさんもいる。
林家木久扇門下の噺家さんは、師匠の会社、トヨタアートに所属している。
だが前述の彦いち師など例外も普通にあって、緩いようである。
小規模な事務所は、仕事はくれるだろうが、マネジメントはやってくれなさそうだ。
先代三平一門は、事務所機能も持っているっぽいのだが、事務所ではないようだ。
株式会社ねぎし事務所に所属しているのは、正蔵・三平兄弟と海老名香葉子だけ。かつて泰葉も所属していた。
上方の噺家さんも東京に来ると、事務所なしでもやっていけるように思う。
桂雀々師は、米朝事務所を辞めて東京に来ている。前述のまめかなと協力体制にあるようだ。
というわけで、東京では事務所に所属しなくても噺家さんはやっていける。
だが、反社との付き合いをブロックできるかは未知数。コソコソ営業に行く人はいないので、たぶん発覚すればシャットアウト。さして問題にはなるまい。
いずれにしても、吉本興業の構造的な問題が気になる。