2024年の暮から25年正月に掛けては、例年に比べ落語の話題が少なめだった。廃業宣言の人はひとりいたけど。
ラジオや新聞で特集されることもなかった。なぜでしょう。
新年早々お休みしてしまい、もう2日。
ネタがないので、続き物を終わらせます。落語百科事典「と」の巻。
富久
幇間の、酒でのしくじりと、火事のおかげで出入りが適うまで。
そして焼けたはずの当たり富くじと、その復活。
古典落語には珍しく、暮れの劇的すぎるドラマである。
主人公を現代の売れない噺家Q蔵に替えたのが、三遊亭白鳥の「冨Q」。
池袋演芸場も出入り止めになったQ蔵が、宝くじで大逆転を図る。
昨年亡くなった金原亭馬遊師も、売れない噺家仲間として劇中に登場していた。
都民寄席
東京じゅうあちこちで開催される無料の寄席。
事前申込みが必要だが、気がつくと終わっていて行ったことがない。2025年も1月から3月まで8公演あるが、すべて申込み終了。
似たものに、東京都弘済会主催の寄席というものがある。
毎年2回、立川と西新井で開催していて500円。西新井は喬太郎師が出るので出かけた。
とむ
ピン芸人末高斗夢(本名)は好楽門下で噺家になり、前座で三遊亭こうもり。
二ツ目で三遊亭とむとなり、本名を高座名とした。
真打になった現在は、小朝師が付けた、完全オリジナル芸名の錦笑亭満堂。
五代目圓楽一門会で、三遊亭以外の亭号がついたのは初めてである。
弟子を獲ったら小満堂になるかもしれない。
留っこ
「粗忽の使者」に出てくる愛すべきキャラ。出入りの大工。
粗忽のさむらい、地武太治部右衛門が使者の口上を忘れてしまい、腹を切るという。それは気の毒なのでそっくり立ち聞きしていた留っこが、エンマ(釘抜き)を使って思い出すのを手伝ってやる。
留っこを急遽若侍に仕立てるが、本名が自分でもわからない。ただ留っことして生きてきた。
なので田中三太夫に、便宜上中田留太夫と付けてもらう。
林家やま彦さんは、前座(やまびこ)時代立前座としてネタ帳に「粗骨の死者」と記し、当時の市馬会長にいたく褒められたという。
止め名
噺家は名前を替えることがよくある。
止め名は、最高峰の名跡であるが、二つの意味で使われている。
- 一門における最高の名で、総帥の名。つまり、名乗ったらもう名を替えることはない
- トラブルが生じて、封印された名前
後者の名前の例が、三遊亭圓生。
二つの意味で止め名が使われるのはおかしいが、一門の最高峰の名であったからこそ封印されてしまったわけで、まるで違う意味というわけでもないのだった。
圓生は、五代目圓楽や未亡人が一度封印してしまったのであるが、現在その事実は顧みられなくなってきた。少なくとも、埋められたままの名前だとは認識されていない。
圓生の名も、復活を目指し好楽師が動いているようである。
かつて名を争った圓窓、円丈も鬼籍に入り、それほど大きな問題はない。
前者の意味の止め名も絶対ではない。三遊亭金馬(四代目)が名前を現五代目に生前贈与し、隠居名の金翁を名乗った例もある。
豊竹屋
古今亭文菊師が二ツ目時代(菊六)、豊竹屋でNHK新人演芸大賞を受賞している。
これは抜擢のきっかけのひとつだったろうから、ありがたい演目である。
ただ、本来こんな賞レースで出すような演目でもない。寄席の軽い出番で軽くやるような逃げ噺の一種ではある。
趣味が行き過ぎて日常全部が浄瑠璃になってしまう人のオタクな噺だ。そこに口三味線の人が登場して、くだらないセッションはとどまるところを知らない。
ドラえもん
故藤子・F・不二雄は落語が大好きで、ドラえもんにも落語のエッセンスが多数盛り込まれている。
前回取り上げたばかりの「胴斬り」もそう。
もっとも有名なのが、ジャイアンリサイタル。歌の大好きなジャイアンが、空き地に仲間を集めてコンサートをする。
「ホゲー」という声で有名なヤツだが、元ネタは寝床である。
21エモンにはロボットのゴンスケが登場していた。
「時うどん」を取り上げ損ねました。まあ、いいでしょう。
次回、いつになるかわかりませんが「ち」をお楽しみに。
千早ふる、ちりとてちんが出ることは間違いない。