落語協会の2025年春の真打は、次の5人。
- 柳家緑太
- 柳家花飛
- 林家木久彦(けい木より改名)
- 松柳亭鶴枝(柳亭市童より襲名)
- 柳家吉緑
襲名するのが、柳亭市童さん。
松柳亭鶴枝(しょうりゅうていかくし)は、尾藤イサオの父君が名乗っていた由緒ある名前である。
この名前、かつて柳家花いち師が継ぐことを検討したという。ただ、真打昇進時にご本人からたっぷり語られた話の中では、襲名に関する内容は少なかったので、それほど深い検討はしてないのだろう。
市童さんは市馬師の4番弟子。
ここは2番弟子(燕三)以外、襲名をしている。
惣領弟子が玉屋柳勢、3番弟子が柳亭小燕枝。
一門でもって、襲名する流れができあがってきたということなのだろう。
さて5人の新真打のうち、3人が柳家花緑一門。
こちらは逆に、改名しないトレンドができたみたい。ちょっと驚いている。
花緑一門は、こう。カッコ内は旧名。
- 台所おさん (花ごめ ⇒ 台所鬼〆)
- 柳家勧之助 (緑太 ⇒ 花ん謝)
- 柳家緑也 (緑君)
- 柳家花いち (改名歴なし)
- 柳家花ごめ(豆緑)
- 柳家緑太(改名歴なし)
- 柳家花飛 (フラワー)
- 柳家吉緑 (花どん)
- 柳家圭花(改名歴なし)
- 柳家緑助(改名歴なし)
ちなみに破門された惣領弟子は、「初花」(しょっぱな)。
そして、それほど多いわけでもないのだが、キラキラネームが数人。
前座にキラキラネームを付けることは、珍しくはない。楽屋で覚えてもらいやすいというメリットがあるし、あまり噺家としてふさわしくない名前に見えても、二ツ目になる際に変えてしまえばいい。
「台所おさん」そして二ツ目時代の「台所鬼〆」は、五代目小さんが考えた名前。
おさんはおさんどんのこと。鬼〆は「お煮しめ」。
小さんはいつも、数多い弟子や孫弟子を捕まえて、誰か台所おさんにならねえかと声を掛けていたという。
そのため柳家では、しくじりの多い前座に「台所おさんにしちまうぞ」というネタがあったという。
本当におさんになりたい人が現れたため、このネタは封印されてしまった。
二ツ目時代鬼〆を名乗ったことで、すでに真打でおさんになることまで確定していた。
芸術協会の柳家蝠丸師も、蝠丸(師匠・先代文治の父の名)を名乗る前提で、二ツ目時代に小蝠を名乗ったようだ。
勧之助という立派な名前になった2番弟子は、二ツ目時代キラキラな「花ん謝」(かんしゃ)であった。立派な名前が付くだろうことは、だいたい予想がついていた。
3番弟子は、緑君(ろっくん)。これもキラキラだったので、もう少し立派な名前になることは予想がついた。その結果、緑也。
4番弟子の花いち師は、「花一」「花壱」になりたかったと今でもマクラで語る。師匠に、「小さんはどうだ(ひらがな混じり)」と言われ、反論できなかったという。
2024年秋昇進の花ごめ師は、名前が気に入っていたそうでそのまま。ちなみにおさん師の前座名である。
今回昇進の新真打、緑太さんは改名歴なし。これも、勧之助師の前座名。
ここまではいいのだが、同時昇進の「花飛」(かっとび)さんが改名しないのは、かなり驚いた。
もろにキラキラネームである。
もちろん、ご本人がこのインパクトある名を望んだのだろう。
ちなみに前座時代はフラワー。カタカナの珍しい名前。たまに、「仮の名前なのでカリフラワー」というネタを喋っている。
なんじゃそりゃ、という名前のまま、世間の想像を裏切って改名せず真打になった人というと、三遊亭天どん師だろうか。
ひどい師匠に、食べたいものの名前を付けられたと今でもネタにしているが、師匠のほうだってこのままの名で真打になるとは思わなかっただろう。本人が天どんがよかったのだから、それでいい。
ちなみに天どん師の弟子、ごはんつぶさんも、本人の希望でそのまま二ツ目になっている。下手するとそのまま真打になるかもな。
このあと、秋には花飛さんの次の弟子、吉緑さんも昇進。
この流れを見ると、改名はなさそうに思う。そもそもまともな名前だし。
その次の圭花、緑助も同様では。
ちなみに、弟子にはとりあえず花か緑を付けている。
緑派から花派に転向したのは勧之助、花ごめ。
きっと、「グリーン」という名も考えたことがあるに違いない。
ちなみに2025年秋も、改名をすでに発表している新真打がいる。
入船亭遊京さんは、扇白。
金原亭馬久さんは、襲名して馬好。
林家なな子、吉原馬雀の両名は改名しないと思うのだが、柳家やなぎさんは改名しないのだろうか?
このままの名前? そもそもさん喬一門は、最初からわりとちゃんとした名前をもらっている。やなぎさんは例外だから、例外なのかも。
芸術協会の春の新真打では、瀧川鯉津さんが「春風亭鯉づむ」(りづむ)となる。
この人も、真打らしくない名にするのだな。
亭号を変えるのはよくわからないが、鯉昇一門は真打で春風亭になることは確かに多い。
鯉昇一門は、最初のほうの弟子はわりとまともな名前を付けていたのに、あるときから遊びだした。
鯉毛(現・鯉白)やどっと鯉(現・鯉三郎)だもんな。
鯉津さんと同時昇進の鯉丸さんも、「鯉◯」だった。記号入りの名前。