トリの菊之丞師のためには45分ぐらい残されていたのではないか。ちょうどいいところ。
菊之丞師は袴姿。
毎年この3日に墨亭呼んでいただきまして。ありがたいことですが、その後1年間ぜんぜん呼ばれないんですよ。
もっと呼んでいただきたいものですが。
文治師匠と下で話し込んじゃいまして、なんの噺しようか一切決めてません。
紅白は知らない歌手ばっかりでした。
かみさんが一番盛り上がったのが、B’zでしたね。
イルカと南こうせつで私は盛り上がりましたけども。あの二人がトリでいいんじゃないですか。
このところ、私のうちで古今亭の新年会をやってます。
今年は三遊亭兼好と、タブレット純が盛り上げてくれました。
タブレット純は菊之丞一門らしい。今年は寄席に出るのかな。
さて私は全面的に菊之丞師の志ん生襲名を応援する。
それはともかく、師としても一門をまとめ襲名の支持を受けるためいろいろ苦労してるみたいですな。志ん輔みたいなイチャモン爺さんもいるし。
いろいろ必死な様子を若手にマクラで揶揄されたりもしてた。
それでもたぶん、最終的には人間国宝の雲助師が後ろ盾になってくれるのではないかな。
もちろん丞サマは非常に上手い。それでよかろうて。
とはいえ私ももっと現場で聴かないといけない。
今回はだからやってきたのもある。理事だから黒門亭にはもう出ないし。
三ぼうから、けちのお噂。
うちの出して使えから、孫子の代まで持たせる扇子の使い方。
昨年聴いた最後の高座が小せん師の「味噌蔵」で、年またいでマクラが被った。いいけど。
ケチの噺、なにやるのかなと思ったら夢金だった。年始一発目から大ネタ。
この暮れも、録画コレクションから雲助師の夢金を聴いていた。一度座間でも聴けたこちらは、本当に素晴らしいもの。
だが、教わったのではないかと思われる菊之丞師のもの、雲助師を凌駕している部分も多々ある。
例えば雪景色の文学的描写。今日一気に木に花が咲いたと、意外と詩人な熊さん。
菊之丞師の船頭、熊さんは実に軽い。
雲助師の熊さんも別種の軽さだが、菊之丞師のものは、さらにケーハクでテキトーな熊さんだ。しかしマンガのような描写ではなく、軽いなりに芯が通っている。
親方も熊さんの雇い主だけあって、非常に軽い。
酒手を弾むぞと語るご浪人の言葉を取り次いで、親方は独り言をつぶやいている。「そうですか。お酒手を。もう間もなく船頭ひとり帰ってきますので、そうしたら」。
策略見事にハマり、疝気の痛いはずの熊さん、飛び起きて下までさっそく下りてくる、というか飛び降りてくる。
船への乗り込み方を娘さんにレクチャーするのもまた軽い。
ご浪人に一服せいと言われた熊さん、客間にやってくる。この際、雲助師もそうだが、ここで初めて羽織を脱ぎ、雪を払う見事なシーン。
菊之丞師は袴姿なので、脱ぐ羽織がないなと思ったのだが、正月だから1枚着てた。これを脱いで雪を払う。
コロシの相談されてからの熊さんは、肝が据わってカッコいい。
なにせ船ひっくり返しちまえばこっちの勝ちだ。
しっかり半金の受け取りを約束させ、中洲へ浪人を案内する。
この中洲は、今の明治座の手前あたりですと説明が入る。満潮になると大人の背がつかなかったといいます。
優男の菊之丞師、なんの噺でも、啖呵のカッコいい人ですね。
娘を助けて以降は最速の展開。
熊さん、ちゃんともらったお酒手、確認してから開けている。
さすがに今、てめえの金玉握ってたなんてサゲはそうそうないところ。
雲助式の「静かにシロい」だが、それだけではわかりにくいということか、「あっ、夢だ」と一言、丁寧に入ってサゲ。
鳴り止まない拍手をムリには止めず、再度口を開く。
鈴本でトリ取ってますので、そちらへもぜひ起こしください。6日以降がいいですよ、入れ替えありませんから。
今は結構です。
噺家3人、残ってお見送りしてくださった。
表では、振る舞い酒も出ていてありがたい。
バス停のそばに秋葉神社があるので、そちらにお参り。立派な神社だが、人がいなくて快適だった。
秋葉さまはご存じ牛ほめで有名な火伏の神さまだ。
バスで浅草に出たら大盛況だったが、幸い神谷バーに入れました。