昨日、三遊亭遊かりさんについて、「師匠よりずっと聴いてる」と書いたが、数え直してみたら師匠とほぼ一緒でした。
いかに高座におけるこの熟女噺家のインパクトが強いかということ。
それから前座のき太さんに関係し。昨年聴いた兄弟子わ太さんについて、ずっと字を間違えていたことに気づいた。
「わ大」と書いていた。
申しわけありませんでした。直しました。
続いて初めて聴く、東北弁落語の六華亭遊花さん。芸協客員。
修業しないでプロの噺家になった唯一の人だ。
先日「60歳で落語家に転身した東大卒エリート」がいかにインチキなのか書きまくったところ。
遊三師と関わりがある点について、遊花さんはこの天狗連と最も属性が近い。
だが、先の天狗連が協会の客員になることはあり得ないし、いわんや芸術祭優秀賞を獲ることもない。芸術祭、もうないのはさておき。
六華亭という亭号は遊三師匠が付けてくれた。震災に遭った東北6県に花が咲くように。
ホッカイドウのお菓子屋さんとはかんげーねーからね。
岩手県遠野の出身。
爺さん婆さんと同居してたので訛りが強烈になったと。
ちょっどわがりにくいかもしれねが、おんなじ日本語、少々わがんなぐでも気にしないで聴いてけれ(イメージです)。
そして、聴いたことのある噺に。
母親が田舎から様子を見にくる。学校辞めて働いていて、妻と子供がいるのに全部ないしょ。工作を手伝ってくれと頼んでくる隣人。
芸協新作の「表札」だ。
日本の話芸でヨネスケ師が出してたのと、当代古今亭今輔師からも聴いた。その噺をとーほぐ弁で。
あいにく寝てしまった。
つまんなかったからではない。とーほぐ弁の語りが気持ちよかったためである。
今度いつ聴けるかわからないのにもったいないが、仕方ない。
女性の5人目は紙切りの花さん。
この人だけメクリが「林家花」で亭号が付いている。
立ち高座になっていたとは知らなかった。
紙切りのウデがなあ。
3枚目はリクエストがなかったが、慣れてるみたい。
三遊亭遊馬師はなんと4年振りでびっくり。
寄席ではずっとバリバリにしても、外の中規模の会(特に自主興行)が最近少ないのではないだろうか?
私がたまたま遭遇してないのではなくて、ハコ減少のアオリで会が減ったのではないでしょうか?
泥棒を振って転宅へ。
仲入りのひとつ前の出番でジミハデな、らしい一席。
泥棒忍び込んで、朝から何も食っていないので腹ごしらえに取り掛かる。
マグロ(食べつけないからなんだかわからない)の刺身より、イカ納豆のほうが口に合うのは笑ってしまった。
酒も旨い。
女に呼びかけられて、むせて死にかける。背中叩いてもらってようやく生き返り「静かにしろ」。だらしない。
落語協会はみな「食い続ける」型になってしまった。女に背中を叩かれるのは、これはこれで新鮮だ。
自称元同業者の女から身の振り方の相談され、最初はぼんやり聞いてる泥棒、お嫁さんにもらってと言われ、たちまち相好を崩す。
リアリティのかけらもない設定の噺に、すごいリアリティが湧く。
遊馬師の転宅は、騙すほうの立場から、騙す方法を描く噺かもしれない。
悪いことしてるんだから気が引けたりしないし。
泥棒からあり金巻き上げるシーンがないのは珍しい。
想像だが、いくらなんでもやり過ぎと思うのかな。
あるいは、時間次第で簡単に抜けるよう作ってあるのか。
翌日タバコ屋でのやり取り。
「お菊なんて言うところをみるとお身寄りの方?」
「お身寄り?」
「親戚の方?」
「ええ、ごく近い親戚で」
お身寄り、という若干わかりにくいことばを見事に言い換えて、抜けた泥棒にわからせる。
雰囲気を損ねないし、客にもわかりやすい。
さらにその流れを、サゲに活かす。
「転宅となりました」
「てんたくって?」
「引っ越しました」
「引っ越しイ!?」
いったんあえて流れを止めているおかげで、本当に言い換えが必要なサゲがスムーズになる。こんな手法があったのだ。
ちなみに町内は、間抜けドロがいつ来るか固唾をのんで待ち構えている。
それだけではなくて、警官も待機してるのでこれから捕物になるんだって。
可哀想に、泥棒捕まる予定らしい。もしかするとそれで巻き上げシーンがないのかも。
久々の遊馬師、見事な一席でした。
落語会でも聴きたいものです。梶原いろは亭とか墨亭とか合いそうなのだが、あのあたりは呼ばれないとダメなのかな。
続きます。
仲入りの鯉昇師は絶品でした。
(追記)
「六花亭」でなく「六華亭」だとコメントいただきました。
ありがとうございます。修正しました。
コメント欄に載せなくていいとのことなので、そうしました。
とはいえきちんとハンドルネームとメールアドレス入れてのご連絡、そのご丁寧な作法に非常に感服いたしました。