墨亭初席(上・桂文治「源平盛衰記」)

1月3日、落語はじめはちょっと珍しいところへ。
墨亭である。
私はわずかに二度目。でもメルマガが来てるので正月の席も早くから情報得ていた。
第2部が時間帯もメンバーもいい感じなので予約した。
本所吾妻橋から金町行きのバスで3つ目。年季の入った商店街「鳩の街」を抜けていく。
会場に着くと、文治師が大きな声で会話していた。
瀧口雅仁氏とおぼしき人が受付してくれる。
「場内大変混雑してますが、まだ空席ありますので」とのこと。
狭い会場、超満員。といっても20人も入れない。
黒門亭のディープバージョンという趣だ。
アットホームで楽しい。

長屋の算術 白浪
源平盛衰記 文治
(仲入り)
ダーク広和
夢金 菊之丞

開口一番は二ツ目の桃月庵白浪さん。
携帯の諸注意から。
もし公演中に携帯が鳴りますと、いえ、私のときならいいんです。
師匠がたのときに鳴りますと、その場ではにこやかに処理してくれるでしょう。ただ、高座の後で叱られるのは私なんで。
私ももう噺家10年やってますので、そんなことで叱られたくないんですね。
どうぞご協力願います。
おかげで鳴らなかった。
この新年会もすっかりおなじみになりましたとのこと。

店子一同が大家に呼ばれる。
全員揃って、「家賃なら払いません」。今日は家賃じゃないよ。
めでたい正月に黄金の大黒かと思ったら違う噺。黄金の大黒だとしても、普通のパターンではないのだけど。
ただ、思い出した。これは師匠・白酒が落語研究会で出してた「長屋の算術」である。
最近では無学長屋と呼ばれているのが歯がゆい大家。ひとつ算術の勉強でもしてみようじゃないか。

10から3を引いたらと出題されて、手も足も出ない長屋の連中。
しかし、指を使って正解した野郎がひとり。長屋の期待を一身に背負うが、7足す5になると指が足らなくて悔しい想い。

大家は次々出題するが、長屋の連中にとってはやや難易度高め。
いろいろ工夫してわかりやすく伝えようと試みるが、たとえ話自体がなかなか難しい。
あくまで問題のため便宜上、大家が店子たちにお金を渡すことにする。
本当にもらえるわけないことはわかっているのに、ちゃんとお礼を言う長屋の衆。なんでも、もらえると思っただけで嬉しいんだそうだ。
そして、なにに使うかと問われると、「家賃払います」。みんながそう言うので、妙に感激してしまう大家。

白浪さん二度目なのだが、今回はまた、ずいぶんストレートに笑えたものだ。
不思議な味だ。珍しい噺でも、ギャグのパターンなんてものは大差ない。でも、笑いの種類をずいぶんひねっている。

15分まっすぐ駆け抜けた。

続いて下の広間でやたら賑やかだった文治師は、黒紋付。
駅に着いたらちょっと雨だったから、駅前のコンビニで大きな傘買ったの。そしたら、ここに付くまでに止んじゃったの。
誰か持って帰る?
白浪さん、新年会って言ってましたけど初席ですからね。新年会というのは飲むほうですから。

うちの師匠、先代文治が亡くなってもう20年経つんですけども。
いまだに落語芸術協会に呪いが掛かってまして。
落語協会では、トリの師匠が幕が下がる途中に「ありがとうございました」って普通に言います。
うちの協会は、絶対に言わないんですよ。「ありがとうございます」なんです。ございましたって言うと、お客様との縁が切れちゃうっていうんですね。
あとは、ネタ帳に演目つけるときに、出あきんどの場合は必ずひらがなで「や」って付けるんです。
「豆や」「うどんや」ですね。漢字で屋とは絶対書かないんですね。
そんな師匠のやっていた噺を今日はやります。

今日はあたし一人だけ芸術協会で。他の人は落語協会です。肩身が狭いの。
いじめられますしね。白浪さんに、こそっと履物隠されましたし。
私は鈴本演芸場だけは高座に上がったことがありません。落語協会の人たちは、鈴本出てるんですね。
われわれは、通りの向こう側のやっつけ工事で作ったような広小路亭に出てます。
御徒町あたりにはよく出没してるんですよ。床屋に行くんです。
床屋で教えてもらいました。みんな受験生は湯島天神に行きますけど、あそこの宮司の息子は大学落ちたらしいですからね。
床屋の旦那に、言わないでねって教えてもらったんです。あたし口固いですからと断って。
これSNSに書かないでくださいね。
寄席では言えないから、こないだ九州でやったんです。そしたら、太宰府天満宮の宮司の娘も受験落ちたらしいです。

地噺の、源平盛衰記。
時間がたっぷり30分あるので、平家物語のほうがたっぷり木曽義仲から。
そして、脱線ギャグをたくさん。
出てきた人は、桂米丸であり、春風亭柳昇であり、三代目江戸家猫八である。

続きます。

 
 

 

作成者: でっち定吉

落語好きのライターです。 ご連絡の際は、ツイッターからメッセージをお願いいたします。 https://twitter.com/detchi_sada 落語関係の仕事もお受けします。

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