「御法度落語おなじはなし寄席!」スペシャル その1(番組へツッコミ)

おなじはなし寄席のファンの方、ご無沙汰しております。
「あたま山」の回以外はすべて取り上げていたのだが、最終回(将棋の殿様)はまたスルーした。
今回改めてちょっと聴いてみたけど、やはりネタにはならなんだ。

私としては、全国の落語好きが、これをきっかけにもっと上方落語に触れていただきたいと、そう願ってやみません。
相変わらず、上方落語を取り上げるとアクセスが落ちるんですよ。
幸い、この番組のときだけはそうでない。むしろ、なかなかの人気記事である。

さて特番、2時間スペシャルの録画が取れました。昨日の今日ですが、早速出していきましょう。

猫の茶碗 吉坊
猫の皿 わさび
お菊の皿 扇遊
皿屋敷 吉弥

猫の皿という噺、前座噺にならないかなといつも思っている。前座から聴いても楽しい噺だと思うのだ。
短くできるし。
登場人物ふたりだからというのが主たる理由だが、ストーリーがしっかりしているというのもある。
ただ、サゲまでやらないといけない点は前座噺にはマイナスかも。
上方では「猫の茶碗」。こちらのほうが、実情に即したタイトルだ。米朝が付けたのだろうか。
猫の茶碗というタイトルだと「ねこちゃ」と呼べるのもいいな。
お菊の皿という演題は、芸術協会では上方と同様、「皿屋敷」ということが多い気がする。

登録有形文化財「代々木能舞台」というすごいところでの収録。
私はたぶん、一生足を踏み入れまい。

テレ朝の女子アナたちに替わって、南沢奈央が登場。落語を知っている人のアシスタントは心強い。
彼女はNHK新人落語大賞で有名だが、日ごろから上方落語の番組もやってるんですよね。あいにく関西ローカルだから視られないが。
あと、たまにBSイレブンでやる喬太郎師の特番にも出ている。立派な落語関係者。

以下、冒頭から番組に対する、細かい部分へのツッコミ。今日はこれがほぼメインです。
決して、真に不快に思っていちゃもんをつけたいわけではありません。広い心でお付き合いを。

「新進気鋭」の若手ふたりと、「東西の重鎮」ふたりという触れ込み。

同門の吉弥師と吉坊師、入門は4年しか違わないのだけど? 重鎮と新進気鋭とは、分け方が極端。
トシは十離れているけども、ごく普通には同世代の扱いじゃない?
これ、ほとんど吉坊師の童顔によるところでしょ?
そして、同世代にくくられた吉坊師とわさび師だって、入門次はまた4年離れている。
早くから世に出ていた吉坊師と、本当の若手真打であるわさび師とを一からげにすることのほうが私には違和感。
先輩風を吹かせていた(もちろんギャグだが)吉坊師のほうが、大卒のわさび師よりトシはひとつ下。
くじ引きの扇子を先に引き、先輩風を吹かせられていたほうのわさび師が、マジ反省していたのが爆笑。

あと、わさび師を「柳家一門」と紹介するのにも少々ずっこける。
柳家一門って、また大雑把なくくりだな。
落語協会での主流を占める数の多い一門ではあるが、全員先代小さんから出ている。冷静に考えると「米朝一門」と同じくくりで取り上げても、別に間違いではないわけだけど。
単に「柳家一門」という言い方になじみがないだけみたい。「小さん一門」とも言わない。
「柳家」でいいわけだ。

「東西の重鎮」はさらにずっこける。
吉弥師に風格が出てきているのはまったく否定しない。だが、大ベテランの入船亭扇遊師とひとくくりにされるとなんだかな。
上の層が厚い落語界においては、芸歴26年の吉弥師では、まだまだペーペーだと思う。実力の話じゃないですよ。
文部科学大臣賞に続き紫綬褒章まで受賞した扇遊師は、真の重鎮。落語協会では常任理事。

「江戸から柳家わさびさん、そして上方から桂吉坊さん」と南沢さんが紹介する。
「江戸」と言われてププっと笑うふたり。「江戸」というワードは、上方と対比したときにだけ無理やり出てくるもので、それでつい吹いてしまうのである。
「東京」でいいんですけどね。
ちなみに、先輩から先に紹介したほうがいいよね。それがあって、吉坊師の先輩ギャグが出てきたんじゃないのかなんて。
まあ、ここは番組都合でしょうから。

能舞台なので、お囃子さんが画面の端にいるのは斬新。浪曲の曲師みたいな。
そして太鼓もいる。
太鼓を叩いていたのは、扇遊師の三番弟子、前座の扇ぽうさん。師匠の前座時代の名をもらっている人。
そして後半には、笛で三遊亭わん丈さんがいた。若手大喜利、Zabu-1グランプリなどでもおなじみ、人気の二ツ目。
笛吹きは貴重なのである。真打や襲名の披露目のときに、一門でもない二ツ目が顔付されていたら、だいたい笛吹き。
だから笛吹きは仕事に困らない。春風亭一朝師なんて、笛で歌舞伎座に出ていたぐらい。
笛吹きが楽屋にいると、出囃子や紙切りに、急遽参加したりなんかすることもある。
吉弥師のハメモノのためにわん丈さんは呼ばれたらしい。
吉弥師、袖を紹介していたが、お囃子は岡田まい師匠だそうで。

明日はちゃんと噺に、そしてトークに迫っていきます。

続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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