落語界のトレード

朝からびっくりしました。ちんぴら野球選手・中田翔の巨人移籍。
巨人とは予想外で、ななめ上の結論。日本球界を追い出され、やむなくアメリカでテストを受けることになるものと思っていた。
しかしいざ決まってみれば、なるほど、巨人こそ球界の猛獣使いではある。
ところで、中田にそんなに出番があるとも思えない。十中八九、飼い殺し。
そもそも、野球選手として限界を迎えている気配だし。全盛期でもチャンスに弱かった男。
ごく薄い可能性として、生まれ変わってバリバリ働くことも考えられるが。巨人も、本気でこんなことを考えてはいるまい。運がよければこうなるというのが現実的な予測。
とにかく明日の「ナイツのちゃきちゃき大放送」の冒頭漫才が楽しみだ。
作家さん、このニュースを受けて今、漫才を全面的に書き直してるのだろう。尊敬する。

しかしチームの先輩にあんなややこしい、育ちの悪い男がいたのに、大谷翔平はつくづく偉いなと。
無視はしないが、絶妙に近寄らない。人間関係の達人すぎる。

さて、中田の移籍にびっくりしたと書きたかっただけなもので。
ここからかなり強引なネタに入ります。
落語界にも移籍があったなと。それもトラブル絡みの。

ご存じ、三遊亭遊雀師。
元は柳家三太楼。元の師匠(権太楼)を殴ったと言われているが、詳細はもちろん不明。
でも、トラブルメーカーを救済しようとした関係者の尽力だけは、今回の件にちょっと似ている。
トラブルそのものより、師匠に対し長年腹に据えかねているところがあったみたいで、謝罪を拒否し、破門。
処分としては破門だが、自主廃業の要素も強い。
しかし才人なので、芸協から手が差しのべられ、小遊三一門に移籍して復帰。今や芸協のエース的存在。

遊雀師、中田と違い、かねてからやらかしていたわけではないだろう。
ただ、酒グセは非常によくなかったようで。
遊雀師の場合は、落語界がその才能を失っては痛手だと思ったから、救済があったわけだ。
誰にでも救済があるわけではない。

それにしても、惣領弟子というものはトラブルが多い。
師匠のほうも弟子を持つのが初めてで、手探りで進める。どちらかというと、無意味に厳しくしてしまう師匠が多いようだ。
弟子を数人取ると、気の合う合わないが見ただけでわかるようになるようだ。惣領弟子については、気が合わないのに採ってしまった悲劇が多いようで。
その結果、どこかで破綻を迎えるのである。
惣領弟子を巡るネタは、これだけで1本書けるので、取っておくことにする。
今日は移籍の話。

芸協に移った春風亭かけ橋さんの記事を先日書いたが、その後もずっとアクセスが多い。
検索訪問が多いようだ。
クビになった人が復活するさまは、誰にでも共感できるものがあるらしい。
ただ、真打として移籍した遊雀師とは異なる。再入門である。
落語協会では二ツ目になっていたのに、一から前座をやり直している。

柳家小ごとさんも、同じ小三治一門だった。
芸協に移ればいいのにと思ったのだが、完全に噺家は断念したのであろうか。

移籍というものは、古くからトラブル絡みであった。
芸協が鈴本を撤退したので、鈴本に出たかった噺家3人が移籍したのは古い話。
1984年のことである。
桂文朝(故人)、桂南喬、桂文生の3人。
春風亭柳昇は、この3人を生涯許さなかったという。

これ以降は、落語協会と芸術協会との間に因縁は別にないようだ。
このたびクラウドファンディングで二協会が協力したので驚いたファンも多かったようだが、別に対立していたわけではないので、そんなに意外なことではない。
補助金絡みでもって、落語協会の事務がめちゃくちゃだった時代には、芸協に手を借りたそうだし。

団体ごと芸術協会への移籍を画策したが、理事会で歌丸師以外の全員に拒絶されて断念したのが円楽党。
この際の主役は当代円楽師であった。
その後客員として移籍した円楽師。2年の期間を経てトリも取るようになった。お盆の国立は、定番の芝居となったようである。
円楽師は、単に円楽党を芸協に吸収してもらう以上の野望を抱いている。東西の全団体の統一である。
ただ、昇太会長、市馬会長の考えとは、大変距離がある野望のようだ。
昇太師と市馬師は、このたびのクラファンで完全に歩調を揃えた行動をしたのだが、協会を統合しようという点には、利便性の一端すら感じていないようである。
それぞれ個性が違う点がいいのだという。
セ・パ両リーグが存続しているようなものかな。
団体が分かれているから、たまに移籍による救済があるともいえる。ただ、もうちょっと交流戦はあって欲しいのだが。

移籍といえば、立川談幸師の後は続かないですね。
行きたがっている人はいると思うのだけど。
ただ、寄席で修業していない人をどう扱うかという問題が解決していない。談幸師の弟子、吉幸師のように、1年ぐらいは前座をさせることになるだろう。

いつも書いてるようなネタの使いまわしで、なんとか1本できました。

アウトレット

作成者: でっち定吉

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