江戸川区中央図書館の春風亭昇羊

【納涼寄席・春風亭昇羊】
悋気の独楽
鰻の幇間
二人だけの秘密

無料落語大好きの丁稚定吉です。
神田連雀亭がはねて、秋葉原から総武線で新小岩へ。
そうそう降りる駅ではないけれど、城東方面は落語会が非常に多くて頼もしい。
快晴の炎天下の中、それでも途中まではアーケードの商店街を通り、駅から徒歩10分強の中央図書館へ。
立派な図書館の4階にある、3室つなげた広いホールである。若干空席あり。
昇羊さんのメクリが、明朝体で印刷されていた。せめてビラ文字フォントにして欲しいけどな。
入口付近には、図書館らしく、読書家である昇羊さんのピックアップした本。昇太師匠のCDも。

先日、丸の内のKITTEで昇羊さんの無料落語会があった。そちらは気が付かなくて行けなかったが、演目を教えて下さった方がいた。その際と今回、3席ともまったく同じ演目。
先日連雀亭で昇羊さんの「皿屋敷」を聴いた。納涼落語会なので、これが出るに違いないと思ったら予想が外れ、出なかった。もう一回聴きたかったのだけど。
その代わり、これも連雀亭で聴いて感動した「鰻の幇間」が入っていた。

J・COMの撮影も入っていた。放送するらしいがうちには関係ない。

さて昇羊さん、無料のお客を少々いじり、セレクトした図書に触れる。町田康の「くっすん大黒」についても。落語の「黄金の大黒」がベースになっている小説だとは知らなんだ。今度読む。
続いて、笑点の好きなお年寄りのために、昇太師匠のマクラを多めに。
地方にお供に行く際、師匠は早めに出かけて、趣味の城を見る。城といっても城址であり、天守閣など建物はない。
師匠に付き合うために城の勉強もしてみたが、勉強すればするほどつまらない。
福井に行った際、やはり城址を見にいく昇太師。師匠が昇羊さんに、自由にしていいと言ってくれ、一瞬喜んだが、続けて師匠、「まあ、一緒に来てもいいけどな」。
行かないわけにいかないだろう。
昇羊さんらしい、人間関係の悩みに関するマクラだが、でも昇太師への敬意はしっかり伝わってくる。
あとは、この落語会の翌日未明に亡くなった歌丸師の話。酸素を吸入しながら高座に上がる歌丸師、楽屋に酸素ボンベがあるので、ひっくり返さないよう神経を使ったと。
連雀亭でも聴いた、兄弟子昇吾さんのネタも少々。

昇羊さんの悋気の独楽は、ぜひ聴いてみたかった。
まず、女に色気がある人なのでぴったりということ。それから、聴いたことはないが定吉も楽しそう。
まさに、その期待通りの楽しさいっぱいの一席でありました。
噺の肝を発見して再構築するのが得意な昇羊さんだが、悋気の独楽に関していえば比較的スタンダード。だが、聴いているときはあまりスタンダードだなとは思わない。
いや、別の人の噺を聴いているときに「スタンダードだな」って思うんですよ結構。デキのよしあしとは別に。
なぜ昇羊さんで思わないかというと、とにかく人物描写がすばらしいから。人物の押し引きが綺麗で、しかもそれでウケる。
ひとつひとつの所作が明確に思い出せるわけではないが、動きと停止のメリハリで、目を奪われる。

拍手が済んでスッと次の演目へ。
鰻の幇間は、ちょっと時間が押していたのだろうか?
たいこ持ち一八(名前は出ないがそうだろう)の主体性のなさは変わらず爆発。顔面の不気味な婆さんは今回も活躍していたし、旦那に羽織も持っていかれてしまう。
そのユニークさは変わらないが、展開が非常に速い。なけなしの銭を支払う場面などがカット。鰻の批判も少なめ。
その点ちょっと残念ではあったがまあ仕方ない。

最後、10分程度で新作をひとつ。
「お客さんではなく、私が面白い噺だと思っている新作です」と断って。
これはどうやら本当で、昇羊さんの新作は、ちょっと人と違うツボを攻める。古典落語をいじって、客の要望に見事に応えているのに、なぜ新作のツボがズレ気味なのか謎。
でも、面白い。客が独自の世界観に入り込む努力は多少必要だろうが。
初めて聴く「二人だけの秘密」。これについては、軽い噺でそんなについていくには苦労はないと思う。
すげー、しょうもない噺。褒めてるんですが。
ネタバレするとつまらないので、中身には触れない。というか、バラす価値のないしょうもなさと言ったらいいか。
好きだなあ、こういうの。
寄席のしょっぱな、二ツ目枠で掛けたらぴったりの内容だが、自分の会をこういうので下りるというのも好きだ。

大満足の日曜日でした。

作成者: でっち定吉

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