神田連雀亭ワンコイン寄席34(上・林家はな平「一分茶番」)

満員の亀戸に出向いたばかりだが、月末に神田連雀亭ワンコイン寄席に出向くことは早々決めていた。台風の来る前日。
ところで、兼好師の集客力で満員だったというのに、ブログにアップしたら「花筏」の記事のアクセスが少ない。どういうこと?
まあもともと私のブログ、寄席の模様を始めるとアクセス落ちるんだけど。その前の蝶花楼桃花の記事が多かったこともある。
しかも最新記事アップにより「三遊亭兼好 花筏」検索でのカニバリズム(食い合い)を起こしたようで、現在どちらの記事も出なくなっちゃった。
SEO対策は油断もスキもない。

2か月続けて連雀亭に春風亭一花さんを聴きにいく。
他のメンバーは、いつもYou Tubeを楽しみにしている林家はな平さんと、久々の春風亭橋蔵さん。期待大である。
ちなみに連雀亭の後、千秋楽の池袋下席(主任・小せん)にハシゴするつもりでいた。
扇辰、文蔵、彦いちという落語協会オールスターズ出演だが、連雀亭で果てしなく高い満足を味わったので、これで切り上げ、帰ることにした。

一花さんが人気なので、早めに行く。開場直後なのに、もういっぱいだ。
札止めにこそならなかったが、ほぼ満員。
受付にはその一花さん。何でなのかわからないのだが、千社札をいただきました。
この日の演者は、亀戸と違って誰も満員の客に触れなかったし、日ごろの閑散振りも語らなかった。

一分茶番 はな平
真田小僧 橋蔵
愛宕山 一花

 

はな平さんが当初トリだったようだが、順序入れ替え。
You Tubeでおなじみの顔だが、高座自体は1年ぶり2度目。
来春の新真打のひとりだが、それに関しては一切語らないのだった。
明日から世の中は平常通りだそうで。緊急事態宣言の千秋楽へようこそだって。
落語界の3割ぐらいはオチケン出身者だと思いますが、私も目白にある皇室御用達大学のオチケン出身ですと。
名門なんです。自分で言わなきゃ伝わりませんが。
そういえば、故人の柳家喜多八師が先輩だ。

落語協会は披露目もやってますので、ぜひそちらにもお越しくださいと。
趣味としての落語から、趣味としての芝居へ。
素人芝居が始まるが、役者が揃わない。なので飯炊きの権助を急造役者に仕立てようと、番頭さんが呼びにいく。
一分茶番(権助芝居)だ。わりとメジャー感漂う演目のわりに、めったに聴かない。
七段目、蛙茶番ならまあまあ出るし、武助馬だって、一分茶番よりはまだ頻度が高い気がする。
さてこれが、すばらしいデキだった。トップバッターから大満足。
とはいえ、どこが明確にどうだというのではない。突出しない、実にほどのいい古典落語である。つまづく部分がなにもなくて、どんどん貯金が積みあがるのだ。

一分茶番という噺、舞台の上の役者がリアルな飯炊き権助でもあるという、ちょっとしたメタ構造を有している。
この素人芝居では、「第四の壁」がたまに開くどころか、権助だけはここをシームレスに突き抜けてしまう。
芝居の約束事を理解できない権助が、非日常と日常を混沌に持ち込んでしまう。そして芝居の客のさらに後ろから、我々客が落語の高座を観ている。
権助はうっかり芝居を間違えるのではなく、彼にとってはすべてが等しく現実なのだった。
こんな噺だからこそ、やり過ぎないのが大事。はな平さんを聴きながら、しみじみそう思う。

権助にとってはすべてが現実。殴られたり、首をはねられたりする芝居が出てくると、本気でブルって番頭さんに一分を返そうとする。
そういうヤツなんだという描写がしっかりされているので、権助の気持ちがわかってとてもおかしい。

番頭さんが、ファンキーな言動ばかりしている権助に、本気でツッコまないのが古典落語らしい。
本当は芝居の穴埋めのために急いでいるはずなのに、わりとのんびり。権助のひとり舞台の邪魔をしない。
現代視点からは、アホの権助をたしなめるところであるが、最初から番頭さんにそんな気はない。
権助と立ち回る役者のほうは、素人だが本式。目を剥いて見栄を切る。ここで中手が入る。
権助のセリフで「拍手もらいやがって」と、ボカスカ殴る展開にうまく持っていく。

続きます。

 

作成者: でっち定吉

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