(第一部・夏の特別企画「怪談スペシャル」)
貞鏡 / 牡丹灯籠
ぁみ / ボロ家怪談
水道橋博士/ ミザリー怪談
島田秀平 / ダム霊怪談
貞水 / 東海道四谷怪談
(第二部)
坂本冬休み / ものまね
完熟フレッシュ/ 漫才
芋洗坂係長 / 替え歌&ダンスパフォーマンス
桃太郎 / 裕次郎物語(木久扇師匠のダンス付き)
(第三部)
若手大喜利 (2回分収録)
神田連雀亭に行った際、昔昔亭喜太郎さんにいただいた招待券でもって、深川江戸資料館での笑点特大号収録に息子と行ってきました。
収録なので、ある程度間延びして感じる部分もあるだろうなと思っていた。長めに録るから。
実際には、特に大喜利が多少長めではあったけれど、ベースは演芸なのでそれほど無駄には撮らない。
実に楽しい収録でした。息子はTVの裏側が見られて嬉しかったということだが、私のほうは、タダで演芸が見られてとても嬉しい。
深川江戸資料館にははじめて来場。笑点の招待券で100円割引ということなので、先に見て廻る。
江戸時代の長屋や船宿、猪牙船が再現されていて、なかなか楽しかったです。
時そばでおなじみの、担ぐタイプのそばの屋台もあった。
今後、「船徳」「夢金」「時そば」「うどん屋」など聴くときは、一段階上の楽しみが得られそうだ。
深川が舞台の時代小説の特集展示もあった。池波正太郎の生原稿など見られてよかった。
落語を聴いている以上、もう少し時代小説も読まなきゃいけないな。以前は結構読んだのだが、最近は警察小説ばかり読んでましてね。落語との共通点は、特にない。
資料館の近辺も含めて実にいい感じ。
清澄庭園など散策するのも楽しいだろうが、屋外を歩く季節ではない。まあ、庭園には来たことがある。
2時半開場ということだったので、2時10分くらいに2階のホールに行って並ぶ。
受付付近で整列して待っていたのだが、入場券をくださった喜太郎さんと、林家扇兵衛さんをたびたび見かけた。喜太郎さんにお礼を言えるような距離ではない。
お二人とも出たり入ったり忙しそうだ。二ツ目でも香盤が下のほうだから、雑用が多いみたい。
あと、この日の出演者、手相芸人の島田秀平さんも見かけた。あと、どう見ても素人でないモヒカンの人も見たが、これも親子漫才コンビ、「完熟フレッシュ」のお父さんのほうだった。
その他、ギョーカイっぽい人が終始うろうろしていて面白かったです。
リハーサルが押し、結局3時開場になった。疲れました。
息子には、ギョーカイの人も、いいものを作ろうと必死なんだと伝えておく。
天井の高い立派なホール。デア・ゴスティーニから出ていた「落語百選」の冒頭は、この高い天井から下にパンするカメラワークで始まる。
落語もよくここで収録する。最近ではTBSチャンネルの、「春風亭一之輔毒炎会」とか。
予定より遅れて収録スタート。
意外なぐらい、客への注文はうるさくなかった。舞台からの前説もない。拍手についても、それほど綿密な指示があるわけではない。
携帯を切れという当たり前の注意も、意外とおざなり。
意外と客にゆだねている番組なのだな。万一着信音など入っても、本番ではかぶせる自信があるのではないか。
隣の席のお爺さん、収録しているというのに自由な人で、やたらバッグのファースナーを開け閉めする。そして、あろうことかペットボトルを握りつぶして音を立てる。
困ったものだ。収録のない寄席だって、こんなことされたら困るけど。
ちなみに、後ろに座っていたご婦人が、休憩時になんだか怒っている。全然見えないのよと。
席を移るので、なんだ、私に文句があるのかと不快になった。確かに座高は高いが。でもこの立派なシート、腰を落として観るには不向きなのだ。
だが、隣のこのペットボトル握り潰し爺さんのほうがさらに座高が高いので、どうやらそのせいだったみたい。
前の客の座高の高さについて、これ見よがしに文句言われてもな。
さらに、通路挟んだ斜め後ろの席の爺さん二人が、収録中なのによく喋る。収録の邪魔という前に、寄席であっても非難されるべき光景。
まあそんな、不快なことも多少はありました。
怪談スペシャル
今回は、夏の怪談スペシャルからスタート。若手の噺家は、席の最前列に座って一緒に鑑賞する(もちろん撮影付き)。
司会は、柳家わさびさん。幽霊みたいな風貌だというので抜擢されたようだ。
トップバッターは若手大喜利でもおなじみの、女流講談師、一龍斎貞鏡先生。
小気味よく、牡丹灯籠の一場面をダイジェストで。
釈台を出したり、引っ込めて椅子にしたり、舞台転換が大変だ。結構裏方さん、収録中でも平気で声を出す。
わさびさんの司会と声が被っていたりするのだが、まあ編集できるんでしょうな。
それから、初めて知った人だが、稲川淳二の後継者と目される「ぁみ」さん。男性である。
吉本の若手芸人が集まって住んでいた家での恐怖体験。
水道橋博士は、さすが怪談でも笑い多め。超自然現象ではなくて、人間の怖さについて語る。
タイトルは私が勝手につけてます。念のため。
オフィス北野の騒動に軽く触れる。今朝のニュースだが、稼ぎ頭の俳優・寺島進も出ていったと。
そして世間を震撼させた、菊池桃子が被害者の、元タクシー運転手のストーカーについて。そこから自身が受けたストーカー被害のネタに入る。
かつておっかけの女性が、猛烈に博士にアタックしてくるようになったという。
だが、この女性、スティーブン・キング原作の恐怖映画「ミザリー」の登場人物ミザリーに似ており、最初から対象外。
ミザリーで若干ウケる。私は幸い、小説も映画も見てますのでよくわかります。
本当は「ミザリー」は、劇中で監禁される作家が無理やり書かされる小説のタイトルであり、その主人公の名前なので、主役の怖いおばさんのことじゃないけどね。
ミザリー、博士に対して毎日愛の告白を郵便で送ってきていたが、あるときからその封書、切手も消印もなくなっていた。
そしてミザリー、博士の弟子にフィアンセだと偽って、勝手に部屋に上がり込み、料理を作る。
あまつさえ、博士の実家の両親と勝手に食事会までしている。
恐怖のオチについては、本放送に譲ります。
このストーカー事件をきっかけに、いっとき自宅に幽閉されたこの女、現在では落語会にも出入りしていると、博士は怖いことを言う。
落語ファンの中には、具体的な人物が思い浮かぶ方もいるのではないでしょうか。いえ、寄席通いがメインで、落語会にあまり行かない私は知りませんがね。
そして島田秀平さんの、霊がよく出るダムであえておこなった怪談企画で、霊が付いてきてしまったという怖い話。
私、特に怪談好きでもないけども、先のぁみさんといい、芸人さんの怪談は面白いですね。
このジャンル、噺家さんも手を出したらいいのにと思うのだが。
人間国宝・一龍斎貞水先生は、ちゃんと歩けるのだが板付きで登場。
本番開始前からサービスたっぷり。客の前で酸素吸入。高座の設えの途中に、最前列に並ぶ若手噺家に声を掛ける。
この先生もダイジェストだが、かなり怖い。
照明を変え、顔を照らす演出。TVのための収録なのに悪いが、この迫力は画面では伝わらなさそうに思った。
語りが怖いのだが、リズムが圧倒的に気持ちよくて、ちょっと眠くなりました。
まあ、落語と同じくこういうことはある。
眠くなり、休憩で缶コーヒーを補給して、第二部へ。
第二部は演芸コーナー。
よくわからないが、3人目の芋洗坂係長は時間も短く、これは最初から放映されない前提で呼ばれてるんじゃないか。
尺が足りないときの、念のための収録なのだろうか? いっとき世間で流行った芸は非常に面白かったけど。
坂本冬美のそっくりさん、坂本冬休みさんのものまねは、高めの年齢層にめちゃくちゃウケておりました。これはオンエア間違いなし。
親子漫才の完熟フレッシュは一度TVで視たことがある程度。相変わらず特大号は、芸人の人選が見事だと思う。
父娘コンビの娘は13歳だって。この、そこそこウケてた漫才も放映されるのだろう。
昔昔亭桃太郎「裕次郎物語」木久扇コラボ
第二部のトリは、昔昔亭桃太郎師。プログラムには、木久扇師匠とのコラボと書いてある。
大喜利メンバーと芸人さんのコラボというのは笑点特大号、よくやっているけど、噺家同士のコラボって何だろう。
と思ったが、普通に高座が設えられた。そして、桃ちゃんのマイ茶碗「せこい茶碗」も茶托なくむき出しで用意された。
桃太郎師登場して、普通に「裕次郎物語」を始める。
ははあ、コラボとは、最近桃ちゃん師匠がよくやっている、最後にみんなでツイスト踊るやつだな。浅草お茶の間寄席でも視た。
桃ちゃんの落語、かなりウケておりました。収録の場でも、まったくスタイルを崩さず客を自分のペースに引き込む。
桃太郎師は空気感がそもそも、笑点に向いている。終始余裕があり、高座に冗談が漂っているのですね。
爆笑派なのに風格が漂う愉快な師匠。何度もTVで聴いているこの漫談が、私にとってもやたらと楽しい。これぞ話術の極み。
うちの子などもちろん、石原裕次郎について知るところなどほとんどないのだが、それでも楽しいみたい。
絶妙のタイミングで挟む「せこい茶碗」もバカウケだが、意外と知ってる人が多かったように思える。
マナーの悪い客もいる一方で、若手芸人の芸も含めてまんべんなく楽しむ能力を持つ、演芸ファンも多数いるのが笑点の収録ということだ。まあ、噺家さんと仲のいい人なら当然でしょうな。
「嵐を呼ぶ男」を、3番まで熱唱する桃ちゃん。客に拍手をさせておいて、絶妙の間で次に進む。
そして、裕次郎は長嶋さんの曲も出していた。これを3番まで歌えるのは私だけだと言ってまた熱唱。面白いのだが、なんとなくこちらの歌はオンエアではカットされそうな気がする。
ロカビリーに移り、予想通り踊り手が登場。最初の3人は誰だかわからない。女性はお囃子さん? だとすると踊りのためにわざわざ呼ばれているのだ。
予想通りその後、若手大喜利メンバーも含めて舞台に上がり、踊り出す。馬るこ師匠はギターのアテ振り。
そして、盛り上がったところで黄色い着物の木久扇師が登場して、一緒に踊る。タイミングをずらして、歌を止めない桃ちゃん。そのたびにずっこける木久扇師。
コラボと言われると? だけど、やたら面白かった。
木久扇司会・若手大喜利
収録時間が押し気味で、この後の休憩は入れずに若手大喜利へ。
メンバーは、晴の輔、馬るこ、わさび、宮治、昇也、喜太郎、そして座布団運びに扇兵衛。全員男性。今回は円楽党は不在。
今回の司会、御年80、林家木久扇師のフリーダムっぷりが最高でした。
ときどき、本当にボケてるんじゃないかというところを見せるのだが、その仕切りっぷりの凄さ、ウケに対する貪欲さを見ていると、この師匠、さんまさんもびっくりのお笑いモンスターじゃないかと思った。
お題を間違えたシーンは、TVであえて流すかもしれない。だが放送よりもまず会場において、実に面白かった。間違えた後の自己フォローから、貪欲に笑いに持っていく流れがとにかくすばらしいのだ。
落語を懸命にやっている噺家さんはたくさんいるが、お笑い全般に対し、真摯に向かい切る木久扇師匠、実にステキです。
そして、お題を忘れ、回答者のネタ振りに必要な返しを忘れ、回答者の名前を忘れとボケっぱなしの木久扇師、そのいっぽうで回答者への目配りがすごい。収録だからこそ、そんなこともわかるのだ。
そして木久扇師、カンペの指示を見抜くのは非常に迅速かつ的確であり、ここでボケたりはしない。
木久扇一門は現在隆盛の極みであるが、その秘密の一端までちょっとわかった気がしますよ。
本人の弟子は、この日は座布団運びの扇兵衛さんひとりだが、彼に対してもどことなく優しさを感じる。
木久扇師、立川晴の輔師の名前が覚えられず、「はるのすけさん」と呼び、「はれのすけです」と返されていた。結局、覚えるのを止めて「はれちゃん」と呼ぶ。
それから、昔昔亭喜太郎さんも名前を覚えられず、「桃太郎さん」と師匠の名で呼ぶ。一度目はマジボケだと思うが、二度目はウケ狙いである。
手を挙げていない宮治さんをガンガン攻めるなど、メリハリの効いた司会振り。カットされたオンエアでは、その異様な面白さは一部しか伝わらないだろうと思う。
まあ、TVってそういうもんだろうが。
この日のメンバーの中で、私が一番落語を聴いているのは座布団運びの巨体、林家扇兵衛さん。その扇兵衛さん、冒頭あいさつ、まだ木久扇師に呼ばれてないのにステージに顔を出してしまう。
こういうところにうかがえる、ポンコツエピソード豊富な人みたい。たまたま、ひと様のブログを見ていたら、前座時代の黒門亭でのしくじりが書いてあった。
でも、私は好きですよ。私と似たタイプの人みたいで親近感も湧く。
扇兵衛さん、木久扇師匠に、「都電もなか」って紹介されていた。よくわからないが顔が似てるのだそうだ。
どんな顔だ。
笑点の大喜利については、あれは話芸を楽しむのが本筋であり、ネタ自体は台本であったとしても価値を損なうものでないということを、繰り返し当ブログで述べている。
当意即妙でお笑いをひねり出す大喜利の才能は、あるに越したことはないが落語の才能とは多少違うものである。笑点ファンが噺家さんに、勝手に超人的能力を期待するのは筋違い。
だが、若手大喜利の収録を見て思ったが、こちらに関しては恐らくガチだ。
お題は恐らく、噺家に先に、たぶん当日伝えているだろう。お題の公表時までガチにしても、さして意味はない。
作家が作ったネタは、少なくとも若手のほうにはないみたい。ウケなかったネタをカットすれば、十分に一本のコーナーの尺が取れるから、仕込んでおく必要が特にないのだろう。
冒頭から見ているこの番組の収録のシンプルさからすると、ネタの精度にはさほど注力していないようだ。
くどいのだが、ガチである分特筆すべき価値があると、そう言いたいのではない。ガチのほうが番組作りにおいてパフォーマンスがいいということだと思う。
「地上波のベテラン大喜利は仕込みだが、BSの若手大喜利はガチ」だと、なんらかの偏見とともに世間に伝えたいわけではないので、勝手に私から聴いたことにしないでください。
地上波のほうの大喜利も、一度収録を見たいですね。多分違いがわかると思う。
入場者へはアンケートが配布されている。怖いことにその日の出演者全員について、五段階評価を付けさせられる。
なるほどなあ、しくじったら二度と呼んでもらえないのだ。
若手大喜利メンバーもしかり。一度出たはずなのにその後呼ばれないメンバーがたまにいるなと思っていたが、客に決められていたのか。
正直、もう真打なんだから晴の輔、馬るこの二人はもういいんじゃないかと個人的には思っていたのだ。だがこの二人の師匠も含め、アンケートには芸人、噺家の全員について、最上の星「またぜひ見たい」に印付けておいた。
噺家さんたち、すごく頑張ってるのがわかるもんなあ。こんな人たちを辞めさせられますか、普通。
特に一番頑張ってたのが桂宮治さん。それから、キャラ的にテンション低めだが柳家わさびさん。
喜太郎さんも、香盤的に遠慮するところもあるのだろうけど、もっと前に出て欲しいものだ。得難いフラの持ち主である。
しばらく指名されないでおいて、木久扇師とのアイサインでもあったのだろうか、ついに指名されて披露した変態ネタは好きだ。
客はちょっと引いてたかもしれないけど。
8月下旬だと思うが、笑点特大号、オンエアされたらまた取り上げます。
収録予定時間を30分オーバーして終了。楽しい収録でした。