文京区千石図書館の玉川太福(上)

《千石亭浪曲会(玉川太福/曲師:玉川みね子)》

  • 浪花節爺さん(稲田和浩作)
  • 浪曲教室
    (仲入り)
  • 石松金毘羅代参~三十石船

無料落語大好きの丁稚定吉です。
土曜日は落語ではなく、無料の浪曲を聴きに文京区・千石に行ってきました。無料でも1時間半やる贅沢な会。
今をときめく浪曲師、玉川太福さんが無料で聴ける。東京かわら版を熟読しておくといいことがあるものだ。
この人は私は二度目。満員の神田連雀亭で聴いて以来。
システムがよくわからないので木曜日に図書館に電話したら、予約を受け付けてくれた。
都営三田線、千石駅の裏手にある小さな図書館。初めて訪れたが、落語・講談の会をよくやっているみたい。
太福さんの浪曲も、昨年に続いて2回目らしい。

落語と一緒の席ではないから、ちゃんとした立ち高座である。
芸協に入った太福さん、寄席に出た際には、講談と同じスタイルでやっているのだろうか。
開園時にはお客がいっぱい。予約しておいてよかった。
曲師は、亡くなった師匠の夫人であるみね子師匠。
呼び方が、「だいふくさんとみねこ師匠」なのであった。落語でいう真打相当時に、だいふく師匠になるのだろうか。
落語の寄席に出たときは、講談に合わせると先生になりそうな気がするが。
敬称を落語や講談に無理に合わせる必要はないのだろうけど、真打制度のある東京の落語界がある種の基準になるのは、上方落語も同じ。

図書館とか、公立の席の場合どうしても運営に事務的なムードが漂うことがある。だが、こちらの図書館のスタッフはなんだかアットホームでいい感じ。
事前の注意を喋るにも、温かみがある。
そのおかげなのか、携帯が鳴るようなこともない。
そもそも、文京区の年寄りは品があってひと味違うね。

太福さん、世間話から入ってバカウケ。客との間の呼吸がとてもいいので、なんのネタでもウケてしまう。
噺家さんにもこの話術は参考になるだろう。
4月から、ラジオのパーソナリティを3時間やっている話。JFN系列の「ON THE PLANET」火曜日。
時間は25時から28時。もちろん皆さん起きてますよねだって。眠れない夜にぜひとPR。
ラジコで昼間でも聴けますので、わからない方はお孫さんに設定してもらってくださいと。
最近浪曲ブームなのか、1年に1~2人しか入ってこなかった新人が一挙に8人入ったとのこと。ただし1か月後には7人になった。
この日のプログラムを説明。最初に、亡き師匠・福太郎のために稲田和浩先生が作った新作、「浪花節爺さん」をやり、それから浪曲教室をちょっと。
これは、お客も強制参加ですとのこと。
仲入り後、ネタ出ししている次郎長伝をやりますとのこと。

「浪花節爺さん」は、稲田先生の作った落語「一ツ家ラブストーリー」によく似た雰囲気のある新作浪曲だった。一ツ家ラブストーリーは、三遊亭円丈師が掛けている。
息子の嫁にいびられている、少々ボケの入った浪曲大好き爺さんが、たまたま知り合った三味線の弾ける婆さんとともに、町内のお祭りに参加してたちまち人気者になるというストーリー。
祭りに参加するきっかけが、ラップを始めた孫にあるというのが面白い。孫が爺さんに浪曲を披露するよう勧めてくれるのだ。
ラップのことはよくわからない爺さんだが、韻を踏むことの重要性は浪曲の経験からわかるので、孫のラップが明らかに下手だとわかるところが愉快。

落語の場合はストーリーが大事だが、浪曲は筋道より世界観がずっと大事なようだ。
この話の場合、爺さんが素人浪曲師なので、現代のストーリーの中に本物の浪曲が入ってくるのがミソ。爺さんの語る浪曲を、客も一緒になって味わう二重構造の話。
面白くて笑えて楽しい。話芸の見本。
年寄り客も快哉を覚える作品。

続きます。

(※ 太福さんがパーソナリティを務める「ON THE PLANET」、FM東京ではオンエアしていないと書きましたが、嘘です。放送してます。お詫びして訂正します)

作成者: でっち定吉

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