神田明神「若手噺家を楽しむ落語の会」の春風亭かけ橋(上・「たいこ腹」)

今日は撮って出し。夕方のブログ更新です。
先日始めて行った、毎週月曜の昼間にある神田明神の落語会。
まだ日が浅いので、落語を聴く環境が整っていない感じがした。だがまあ、再度出向いてみる。
吉野家の牛丼だって、すぐに味ができあがるわけじゃないのだ。牛肉を仕込んでいく日々の積み重ねで味ができ上がってくるのだから、私だってタマネギぐらいの役割は果たせるだろう。
松屋派だけど。

今日登場するのは春風亭かけ橋さん。
またしても、ヨネスケちゃんねるから私のブログに大量流入があったばかり。もう何度目のことか。
相変わらず検索でヒットする記事だけアクセスが多い。検索で引っかかるその記事に「検索でヒットする記事だけ多い」と書いているのだけど、それでもそうだ。
かけ橋さんの高座の模様とか知りたければ、タグやブログ内検索でいくらでも調べられるのだが。

実は、ヨネスケちゃんねるの該当番組、まだ観ていない。
観るつもりだが、さすがにもう拾うネタがあるかどうか。

前回は連雀亭からハシゴしたが、今日はここ単独。
前回と同様、Webで前売りチケット816円をクレジットカードで購入している。
このキャッシュレスへの取り組みは素晴らしいと思う。

客は14人。
期待のかけ橋さんにしては少ないが、今後会の浸透に連れ、着実に増えていくことだろう。
前回の南楽さんのときに感じた、演者と客がマッチしていない感覚はまるでなかった。
演者が環境を作り替えているのだ。

たいこ腹
黄金の大黒
親子酒

見事な三席。
前座をやり直しただけあって、噺の数がとても多いようで、まだ演目被りしたことがない。

前回8月に呼んでいただきまして、11月とは早いペースです。
平日昼間で、成田屋さんの襲名もある中、対抗できるのは私だけってことですかね。
「8月」の「がつ」が明確な鼻濁音。

この会、都民割まであって大盤振る舞いですね。
食事とお土産までついて、3,500円相当が千円とはすごいです。
私もここのカフェ、行ってみました。
と、甘酒とお団子のセットの話。
付いている塩昆布が多めで、なのに貧乏性で全部食べちゃうので、今喉が渇いて仕方ないんです。

近くに神田連雀亭という寄席がありますが、私にとって神田明神は、きらびやかな連雀亭ですねと。
連雀亭の名を出すということは、かけ橋さんもあちら出るつもりがあるのだろうか。
かけ橋さんぐらいの売れっ子になると、出なくてもどうということはなかろうが。

われわれ噺家は、行く先々の水に合わせないといけません。
先ほどからマクラ振りつつ、今日のお客さんのお好みを探ってるんですけども。今の話はしないほうがよかったかなだって。

確かにそんなに面白くもなかったが、でも語り口がいいので嫌な感じは一切しない。

たいこ持ちの噺へ。
たいこ持ちに付随するマクラを一切振らない。
一八が、お茶屋に呼ばれてから本編スタート。
最初の会話は、一八とおかみ。一八が、足袋のコハゼのいたずらを嘆いている。
実に珍しい型。
自分で作ったのだろうか。芸協で聴いたこともない。
この演目、落語協会にいた時分にすでに覚えていた可能性も高く、結局自分で作ったのだと思うのだが。

この独自のスタイルの結果、噺が全編通じて一八の視点から描かれることになる。これが最大の効果か。
たいこ腹という噺、若旦那の視点で始まり、途中から一八視点に変わる。
かけ橋さんのやりかたのほうがずっとスムーズ。

つくづく感心するのだが、見たことないスタイルを、「本寸法」として演じるかけ橋さん。
かなり自分で作っているのだろうに、「どうだ」というやり方でない。
先人に教わった通りにやってますとでもいうようなスタイル。
人間、工夫すればするだけ「どうだ」ってやりたくなるのがサガというものではないでしょうか。

大胆な演出のわりに、ギャグは少ない。
だが、若旦那に困らされつつも金欲はある一八、その逡巡が非常に楽しい。
こういう部分が、ベテランの本寸法とされる人たちっぽいのである。イコールではなくて。

若旦那は、主人公一八の影の存在となるので、トーンを落としてぼそぼそ喋る。
面白い台詞は全部一八が発する。

若旦那、おととい思い付いて、昨日鍼を買い、今日壁なんだそうだ。
いきなり次があたしですかと一八。

若旦那が飼い猫を死なせてしまうシーンは作り替える。愛猫家は引くもんな。
若旦那の口からタマが死んじゃったと言わせるが、本当は気絶しただけだそうだ。
気絶でも、一八にはダメージ強いので、実に効果的。

皮つまみの横打ちなどは省略し、「人の腹に鍼を刺したい」という噺の核心部分にとっとと進む。
従来のサゲをしっかり振ってフィニッシュ。

これは絶品でした。
続きます。

 
 

作成者: でっち定吉

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